- C 349話 侵略者たち 24 -
四領正規軍と対峙している侵略軍3000人は、半日の衝突で極度の消耗戦に付き合わされた。
もっとも甚大な被害は、もとより兵の数で劣る侵略軍だ。
アンプルの致死率は、観測者の見積もりよりも高く、8割死ぬ。
その恐怖から心胆を守るため“鼓舞”が必要だった。
狂戦士化した獣人モードは、驚異的な回復力と耐性、強靭な肉体に戦闘センスを与えてくれる。
これの獲得にはただ一つ。
死に打ち克つ、強い精神力だけである。
故に絞り出される力の根源は、死に瀕する魂の叫びなわけだ。
効果が切れれば――命も尽きる。
普通に死ぬか、
戦って死ぬか、
或いは...
アホの境地。
◇
なんでそこまでするのか。
彼らにしても生き残る為なのだ。
すでに100名くらいは移住した。
王都を目指す将軍も、内心――
“もう、眠ってもいい頃だろう”って、考えないことはない。
「閣下...」
アンプルへの耐性が高い、選抜戦士で構成された軍でも。
死への恐怖は拭い難い。
次は自分だと思うと...
精神力がもたない個体が出た。
「ドクター、彼らは」
「拒絶反応じゃな。アンプルの毒性から身体を守るため、ワクチンは事前に投与されてある。その不活化された狂化菌が息を吹き返したのかもしれぬな...」
研究所でも見なかった症例ではない。
ただ、極稀な症例で十分な検証が行えなかった。
というよりも、彼らの世界が、その時間を捻出できなかった。
「治せ、るかってのは...愚問か?」
「...っ、はい。現段階では、耐性を得るために...微量の接取であるのが、幸いとみるべきでしょう。毒性が強い為、彼らを動かすことも叶いません」
見捨てるという選択肢はある。
ただし、見捨てたとしても将軍と3000人たちには行く当てはない。
「敵だと思ってた、四領王の厚意により...夜討ち、空爆などがされないことが」
深く息を吐きながら、
「こんなにも有難いと思うとは、な...」
◆
同じ頃、四領でも上がってた“カイザー・ヴィルト”を空中で給油させたり、着陸させて整備させたりしてた。彼らの飛行士たちも母艦があろうと、なかろうと紛争という点で心労が酷く溜まってた。
少年・少女が多いのが魔法飛行士の特徴だからだ。
四領王は『兵士が何人死のうとも構わぬから、余に恥をかかせた愚か者どもに!! 正しき神の鉄槌を降ろすがよい!!!!』とか非人道的なことを喚いてた。
これは流石に全軍の士気が落ちると判断した、将軍たちによる“プチ・クーデター”によって王は幽閉。
女神正教会と執政官による代行支配で、国が回ってた。
いや、回さる得なかったとも言い替えられる。
「これ、やっぱ反乱ですよね」
やや気弱な枢機卿。
五領のところとは覇気がない。
天領から派遣されて10年くらい経つ。
「もう、腹は括ってくださいよ。...いやいや、腹を召すんじゃなく、んんんん...」
執政官は咳払いしつつ、
生ちっろい腹を出そうとする枢機卿を止める。
「腹、かっ捌かないでくださいよ、こっちが怖い!!」
「あ、いや、あ...でも」
「括る! く・く・る・ですよ、括る」
ああ、もう。
色んな人いるなあ。
「天領軍ってこの近くに未だ、居たりしますかねえ」
執政官は、将軍たちからの陳情にも目を通している。
王によって撥ね付けた助力を、自分たちの都合で取り返せるかの相談。
臆病な枢機卿の顔も急に暗くなる。
いや、なんか嫌そうって見えて...
「居ても...やっぱ、いや、どうしよう」
クネクネしてる。
キモイ。




