- C 348話 侵略者たち 23 -
“巨乳姫”提督が座乗する、大型重巡洋艦の周囲にある軍艦たちも――対艦戦になったら、ちょっと脆そうっていうイメージは拭えないけど。逆に発見さえされなかったら、戦いは彼女が言うように魔法士同士のものと成る。
これはあれだ、航空機が時代を変えたのと同じ発想だな。
「で、軽空みたいなのが多いと?」
ポリポリって音が聞こえる。
生のニンジンらしい。
今、シーモンキー族の“巨乳姫”は、ウサギちゃんの姿を想像している。
《あ、鼻血出そう...》
――で、彼女は胸元で温めてたのを、そっと眼下へ差し出す。
「やるよ、私がもってて喰わんし」
「温かいじゃん?」
でも、受け取るのは同期の優しさか、あるいは習性か。
◆
現在の飛行魔法士育成プログラムの進捗には、各国で大きな差はない。
これは、大砲の着弾観測から、高空からの威力偵察程度までしか活躍の場ないからだ。
いや、そもそも統一王朝となっている魔界では、これ以上の進展も見れそうにない。
そう、どこかが誰かを攻撃でもしない限りは――で、聖櫃の行動が気にかかる――「天領の軍事力はずば抜けているが、皇帝領だけで、世界を見張り続けることなどは...不可能!! ただ、騎士団も思い違いをしてた。北極のポータルから天領軍が来ているのだ、と...」
四領の空に6機目の“カイザー・ヴィルト”が上がってた。
滞空しているのは他の5機よりも長く、そして、最高高度にまで達している。
これが四領のと違うのは、光学迷彩が施されてる点だろうか。
「宗主!」
ヴィルトのブリッジには、半透明の球体とそれらを見上げる観測兵に、操縦そのものを行う技師が缶詰になっている。
ブリッジは、二階建ての吹き抜けのよう構造になってた。
一階側が忙しく、
二階側は、航空管制の任にあるような。
手摺り越しに下階を、見下ろすことが出来た。
「アンプルの記録は満足いかなかった、か...」
苦笑してるけど。
本気で悔しがってる感じじゃない。
どこかで...
或いは、そうじゃないかって感覚はあった。
「――監視者たちは、驚いてくれたかな? 彼らの跳躍先に...さ。...っ、まあ、跳躍して貰った彼らも、あまりいい歓迎は受けないだろうけど。彼らも分かってたと思うんだ、聖櫃の仕事にはリスクがつきものだという事が!!」
見上げられてる男の甲高い笑い。
「艦長、高度はそのままで南極海へ...」
聖櫃らを呼ぶ世界は未だ、いくつもあるんだ。
っぽい棄て台詞を吐いて、彼らは飛ぶ。
残念なことに、第5艦隊の持つ索敵能力でも、超高高度にある怪鳥ゴーレムの捕捉は難しかった。いや、認識阻害の魔術式に加え、光学迷彩が施されてた。
これを捕捉できる者はない。
その上、上がり過ぎなのだ...巨大な鳥が。
四領の空を埋め尽くしてたのだから。
◆
不審なノイズを追ってたオペレーターが台パン。
静寂を求めてて、
だから、耳を澄ませてた者らが、ちびりそうになった。
「な、なになに?!」
ヘッドセットを机上に投げ、
「逃げられました」
目が駄目なら、匂いか或いは耳かってくらい五感を使って探ってた。
ひとつ聞きなれないノイズがあった。
見つけたのは偶然で、上がってる5機の稼働音が邪魔だったけど...
それは確かに居た。
「ど、ドンマイ」
ウサギちゃんがニンジンを差し出す。
項垂れてる観測兵へのフォローみたいな。
不謹慎かなとか、
ニンジンを引っ込めかけて...
「くれないんですか?」
「ああ、えっと...はい、あげます」
ウサギちゃんは代将なんだけど。
シーモンキーの姫さんよりかは、まあ、偉い人オーラが薄い。
指揮官のロールから外れると、彼女は艦隊のマスコットへとおさまってた。
「ナマも、イケますね!」




