- C 347話 侵略者たち 22 -
「あれは人狼というよりも、魔獣そのものでは...ないか?」
と、呟く。
でもう一度、偽薬であるアンプルへと視線を向けた。
導師の中で一つの疑問が浮かんでだ。
《この薬は、魔狼族の力を本当に引き出している...のだろうか?!》
獣化したオオカミたちは、
何かの儀式のように、吠え叫び、背に負う仲間たちへ遠吠えを残す。
「あれは...鼓舞か?」
独り言だ。
ぽつりと呟いたに過ぎないけど、
ふと、臓腑の真ん中で合点がいくように、落ち着くのを感じた。
鼓舞だと考えると。
遠吠えは、次にアンプルを打つ者への手向けなのではないだろうか。
「あれの、致死率を上げるのは“恐怖”だ!!!」
「いえ、恐怖ってストレスでは?」
「いや、元より致死率は高いのだ。恐らくは6~7割の無謀というような、賭けなのだ」
と言ってから、アンプルを手に入れた自分たちにも呆れた。
その手の技術は既にあり、そして棄てたものだ。
剪定される先の無い未来から得た技術...
「騙されたのか、或いはそういう事か」
導師を見る目がある。
白服の研究員らだ。
記録は未だ必要かとか、撤収は?などの問いもあるのだろう。
有象無象の目が今、彼に注がれてた。
「導師?」
「撤収だ!! 宗主には私から説明する」
と、残し――彼らは忽然と、望楼から消えた。
掻き消えたと言ってもいい。
いや、元から居なかったとも...痕跡そのものが無くなったのである。
◆
天領の第5艦隊がキャッチしたのは、跳躍魔法の痕跡だ。
「同一座標の別エリア...だと?!」
追跡できたものを見て驚愕してた。
ボク的には、驚きはしないけど。
この魔界が似た形で、同時並列に存在しますよって聞かされたら、みんなどう思うだろう?
まあ、大概の人は...
言った本人であるボクを気の触れた、ガキだと思うだろう。
跳躍先がそうであるように。
世界は、ストレージの容量と数だけ存在している。
聖櫃の連中は、ソレを知っているという事か...ちょっと厄介になってるなあ。
「この追跡は正しいのか?」
“巨乳姫”提督が問い、
星詠みの魔法士たちが頷く。
で、そのやり取りに目をまるくさせてる“ウサギ”ちゃんがあって。
眠そうなハナ姉が...。
あれ、なんでハナ姉がブリッジに居るの?
ノワールさんたちは、宛がわれた巡洋艦で魚釣ってた。
仕事がないらしい。
いや、艦隊としての仕事はある。
ただねえ...
四領王に対して、
『貴殿らに手に余るようならば、我らも尽力いたそうぞ!!』
と上から言ったもんだから――臍曲げられた。
いや、もとよりプライドの高い四領王がへりくだることは無い。
知ってる正確なのに...
◇
「だって癪に障るじゃないか! 征伐から天領らを欺き、聖櫃とつるんでいたのだぞ?! たばかった報いを受けるべきなのだ」
というのは、“巨乳姫”として個人の意見でしかない。
軍の方針もいささかそっちに向いている。
マナ鉱石の正体からしても、採取法次第で星が死ぬ。
「その我を突き通した結果、艦隊は再集結したものの...仕事がなくなったのは、どう皇帝陛下に詫びるんかな?」
ウサギちゃんの耳が目端に目る。
巨乳姫の傍にいるようだけど、姿が耳だけ。
ちゃんと胸を退かせば、脇腹のちかくに直立している。
人参を齧っているが。
「どうした、それ」
「くれないから...自分で調理場からくすねてきた。いや、それよりもだ!! この軍艦には、ほかにどんな機能があるんだ?!」
ハイブリッド艦であることは承知している。
後部に飛行甲板があり、139ミリと105ミリ、76ミリの両用砲が連装で固められてある。
一見すると、大型の巡洋艦にも見えるけど...後部から見ると、イメージはハリネズミっぽい。
「艦の中央に魔法術式を検索する“水鏡”という、星詠み魔法士が詰めてる。属性は大重巡で、艦首集中配置された305ミリ4連装砲が2基(8門)、洋上での制圧力よりも魔法士戦でのサポートが主だろうなあ」
だって。
確かに艦橋も戦艦なみに大きく、高い。
煙突が「Y」字のネギみたいに見えるし。
今までの水上艦とはちょっと雰囲気が違ってた。




