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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1471/2519

- C 346話 侵略者たち 21 -

 ヤウ公爵の陣営内では、上から下まで――

 ベック、旦那さん探しの真っ最中である。

 本人が観念でもして、自信の運命に身をゆだねればよし。

 なくとも、仔の父親としての責任は取るべきところ。


 でないと、だ。

 まあ、公爵軍の幕僚らが許さんだろう。

 ヤウが許しても、だが。

「それが...おっかないと?!」

 身の上相談っぽくなってる。

 魚臭い冒険者あがりの使者は、咳き込みながら火酒を注ぐ。


 ベックは盃いっぱいの酒を飲みほした。

 相変わらず飲みっぷりは豪快で、清々しい。

 これだけの器量ってんなら...勢いで飛び出しても、どうにかなりそうな気もする。

「もやもやするじゃんか!!」


「そんな身も蓋もない。女子じゃあるまいに...スパっと行け! スパっと」

 冒険者は独身だが。

 同僚の中には、勢いで父親になった者がある。

 結局、出来ちゃった婚は出たとこ勝負らしい。

「で、おっちゃんは...俺に何の用だったんだ」

 ベックは冒険者に問う。

 彼も、

「俺が天領のじゃないことは知ってたんだろ?」

 と、問うた。

 頷かれて、納得してた。

「こんな生臭い奴が...使者なんてのはお門違いだよな」


「いや、素性じゃないよ。要は、心意さ...天領軍は何を考えてるかって」

 一戦交える気ならば、武者が立つ。

 これは名誉が絡む。

 使者が生きて帰る事は殆どない。

 ヤウ公爵軍は、北方戦線の拠点を叩き潰して回ってるのだし。

 天領軍の港街占拠は、いわゆる不当占領であるから...

「天領の行動は戦争行為にも見える」


「ほう」

 音の酒の量より、ベックの方が多いけど。

 彼の目や言動にブレはない。

「じゃ、俺が来たことで...お前さんはどう見るね?」


「戦う意思はないか、交渉ってトコかな」

 冒険者の瞳に魔法の痕跡がある。

 彼が見聞きしたことは、衛星都市の外にある斥候へ筒抜けだということ。

 その情報はそのまま、交易都市の前で陣取るセラフィムの下へ。



 四領軍と侵入者本隊が激突した。

 魔王が自ら陣頭指揮に立つ、正規軍10万という規模のものである。

 王都防衛の外側、第一警戒線“モーダ”城塞で両軍が激突してた。


 アンプルで暴走するオオカミたち1匹につき、100人の兵士が引き千切られ、噛み砕かれ、蹂躙された。ただし、そのアンプルが敵兵の全てに同様の効果、恩恵を与えないことも目撃と共に把握されている。

 50人が投与されて、20人がオオカミに成る。

 それは、命を削る劇薬だった。

「ほう、追い込むと死亡率が跳ね上がるか」

 面白いと頷くのは聖櫃からの導師。

 姿と身分を偽装して、四領軍の中から未来人たちを監察してた。

 劇薬のサンプルは得ている。


 研究と称して、人体実験は必須としても。

 その使用者たちが間近にあるのだから、観察しない筈もなく――研究者としてのサガみたいなものだろう。

 やや、無粋のような気もしないでもないけど。

「ストレス...でしょうか」

 記録映像と、レポートが書かれていく。

 城塞だから望楼の上からの監察だ。

「どうだろうな。たかが戦場で受けるストレス程度で、致死率が跳ねるのだとすると...それはもう欠陥品ではないか!! かつて人族たちの世界では“眠らない軍隊”というのがあった。タネを明かせば、向精神薬による効果を最大限に発揮させたものだが...過剰投与でもなければ、死に至らぬ」

 偽薬としてのアンプルに、視線を落とす。

 色と雰囲気だけを似させたもので無害。

 中身は、甘味を抜いたシロップだ。

「人狼どもは、どうやってオオカミに...獣に堕ちるのだろうなあ?」

 これは問い。

 御伽噺であれば、満月の夜にソレを見て、血が奮い立つという。

 まあ、実際には任意で人の姿のまま、獣化するだけなのだが。


 眼下のオオカミたちは、ちょっと違う。

 魔狼という種族ゆえか...

 獣人の3倍の大きさへと変貌して、血や肉に飢えて狂暴化してた。

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