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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 大戦斧の冒険者
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-112話 ジーワス会戦 ①-

 マル・コメが製作した怪鳥ゴーレムの最大高度は1800m程度しかない。

 でも、上は寒いので防寒対策は必須だった。幸い、科学に明るい人が居たので“気圧を一定に”と言われて、格納庫と操縦席?には魔法城壁マジック・ランパートが張られてある。

 状態異常無効化プロテクトなども施され、ちょっと寒いけど快適な空の旅を過ごしていた。

 ただ、エサ子は、メグミさんにしがみついて泣きっぱなしである。

 とにかく、この子は環境の変化に対し臆病だった。

「もう、ちょっとだからね~」

 と、メグミさんに抱き抱えられるエサ子。

 メグミさんも非常に母性が擽られ、地母神的な神々しさを感じられる。


 エサ子の配下らも『母御さまの慈愛をここでも拝めるとは――』とか呟いているもの多数。


 一行がジーワスを見下ろすところで不時着したのは、アイアンセプを発って半日弱だ。

 怪鳥ゴーレムと技師は、この地で暫し待機すると言った。

 各拠点を攻略している“西さん”と交信し、彼が合流するというので補給物資の整理が必要だと言っている。

 ガチガチに強張った身体を温めたいというのも本音だ。

「じゃ、帰りもよろしく」

 なんて、メグミさんは言葉を技師に掛け、彼らはジーワスを目指す。

 ただ、その直後にエサ子が腫れた眼で『えー、また乗るのー』と、ボロボロ...大泣きである。

 メグミさんが彼女をあやすまでが1セットのコントが場を包む。



 一方では、“甲蛾衆”の一群が動いている。

 ジーワスへの攻撃は容易に予測できた――攻略する必要がない、これはすべて挑発行為――というワードをもって思考実験を行えば、苛立ちの頂点を捉えるのも容易だという事になる。いや、攻略できるけど、攻略もしない挑発行為として一番、怒髪天にくる地域と仮定すればだ――ジーワス城は最高であるという事だ。

 3000の兵を得た“甲蛾衆”は、ジーワスの東側ザーラという街に入った。

 ザーラからは、やや見下ろす形でジーワス城の付近を見渡す事が出来る。

 エサ子ら一行は、まだ見えない。

「領地を切り取られる豪族たちの心理を逆なでする...策か、なかなかに心地よい」

 少年は言葉を吐きながら、顔が歪む。

「だが、気に食わない」

 彼は、我がままだ。


「土煙!!」

 教会の鐘楼にあった忍びが眼下の兵団に声を飛ばす。

「敵影、見ゆ!」


「よし、緒戦、我らで取る」


「応っ!!」

 3000の騎兵と共に、少年と数騎のサムライが土煙の上がった方へ進軍を開始する。



 エサ子らは、4日待って、ジーワス城近くに姿を現した。

 西が散々荒らしてくれるのを、期待してのことだ。

 苛立ちのピークを待っていた。

 この4日は、エサ子の部下も辛抱できる最大の時間だった。敵地深くに僅かな兵で侵攻している緊張感と、戦が早くしたいという高揚感を維持しながら抑え込むというのは難しい。もっとも、敵地深くの恐怖が引き金になる。

 早く終わらせて安全な地域まで、後退したいというのが本音だ。

 エサ子本人は、どんな過酷な状況でも生き抜いて帰還できる自信はあるが、メグミさんを気遣って戦うのはやや難しい。彼女を無事に逃がすとなると――最悪な事ばかりを考えてしまっていた自身に驚愕している。


《マルちゃんって...怖いなー》


 そうして、駆け出したのがこの時点だ。

 ゴーレム2体も20騎と同じように駆けている。

 走れるまでに改良が進み、タワーシールドとUSBライフルを抱えている当たりは、もはや剣と魔法の世界とは思えない光景だ。ただ、足音が図体のわりに軽い気がするのはSEがそれに合ってない証拠だろうか。できれば、もう少し重みのあるSEが好ましい。

 現在、キュッキュッと鳴っているような気がしないでもない。

「ぬぅ! 読まれたか!!」

 ラルさんが踵を返すと、その足で真横へ飛んでいる。

 向きを変えた先に騎馬の一群が見えた。

「全軍、側面の騎兵に目標変更!! 遭遇戦開始!」

 エサ子の怒号とともに20が右にカーブしながら、東の尾根をくだる騎兵に突撃していく。

 二本の角が生えた兜を被る彼女と共に騎兵が3000の馬群に吸い込まれていった。

 両軍の本格的な戦闘がここ、ジーワス城前で始まった。

 城まではまだ数kmも先の話だが、3000はゴーレム2体を左右に回避しながら両翼をひろげ、各々に旋回する。エサ子ら騎兵20はどっぷりと真っ赤に染まって駆け抜けていく。

「ん? 何この紐......」

 エサ子の斧柄に巻き付いた紐は腸だったが、それをまとめて放り投げている。

「旋かーい! 第二突撃態勢ーぃ!!」

 馬群はゆっくりと歩みながら、向きを変える。

 20の騎兵に、脱落者はいない。

 程よく真っ赤というか黒っぽくなって対峙し直している。


 一方で、甲蛾衆らの一般騎兵は1割ちかくも兵を失い、対峙する。両軍を挟んだ、中央の場におぞましい肉片が飛び散っている。馬ごと人が粉々にされた感じだった。

「野戦慣れした兵か...」

 棟梁は、やや分が悪いと悟る。

 配下のサムライに兵をそれぞれに分ける指示を伝える。

「御意」


「ゴーレムは無視してよい! 今は目の前の騎兵に」

 と、両軍は再び突撃しあう。


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