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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
ある場所、ある世界の原風景、さあ開演です
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-1.4話 灰色の修道士-

 世界政府、円卓の評議会が置かれているのは、大陸の中央に位置する黒海の大帝国。

 七つの海を支配する巨大な帝国を人は、太陽の沈まぬ黄金の帝国と呼んだ。これが、人々の共通の認識だが、実は七つのうち、既に三つの海を魔王軍の水軍によって喪失し、四つ目の海で激しい海上戦が繰り広げられている。

 これまでの戦いでは、世界政府によって招聘された内、およそ45万もの将兵を海戦や陸戦で失った。しかし、寸でのところで人類側にやや有利というあたりでいる。

 もっとも英雄の誰一人も海戦を熟せる将帥の片鱗が無い為、ただの人間という将軍たちの奮闘と采配によって持ち堪えるという状態が続いている。


 野戦病院に賢者がいると噂が立つまでに2か月も掛かってしまった。

 運ばれてくる重度な傷病兵が殆どだったからだが、それでもこれ程までに埋もれてしまったのには理由があった。その陣地にあった将帥が、後方とはいえ賢者の身に危険が及ぶと判断してかん口令を強いたからだ。


 いま、その賢者は病院船の中にいる。

 蒼海という大海の支配権を巡って、最前線だった黒水晶の島を脱した彼らは南下していた。

 2隻のキャラックと8隻のキャラベルで構成された船団に、追撃中の魔王側の水軍。


「やつら、しつこいですね」

 船長が船尾から望遠鏡で数百mあとの水軍の影を睨んで呟く。

 風は此方の味方をしている補助帆もすべて使って、全速力で逃走しているが、いつまでこの追撃戦が続くか分からない。

 どこかで艦影を隠せる霧かスコールを期待したいものだが。

「彼らの船も早いですね?」

 賢者も望遠鏡ごしに睨んでいる。

「あれは、ジーベックという船種です。むしろ彼らの方が足の速い船ですから、あと数日逃げられるかは敵方の腕次第という事になりそうです」

 船長の焦りはその当たりから来ている。

 ラテンセイル装備のジーベックは、人間側に恐怖を植え付けることに成功した。

 一説によると、魔王自らが水軍を創設しこれを指揮したという肝いりらしい。

「せめて私も、攻撃魔法が使えたら」

 回復魔法しか使えない賢者の自虐だが、船長の方は滅相もないという返答を送った。

 イルカに乗った槍の勇者とか、カモメに鷲掴みされる弓の勇者でもあれば、この追撃を振り切れるものなのだがと、皆が思ったかは定かではないが賢者はずーっと考えていた。

 巨大蟹の背中で立つ盾の勇者?

 大王烏賊と友達の剣の勇者...は、どっちが魔物か分からんか...などと呟いている。



 一方、後方の追跡者ジーベックの甲板では、半魚人たちがせっせとデッキブラシで床を掃除していた。

 船体は木造、特殊な油を沁み込ませているが、掃除しないと塩気や水棲動物たちに侵食されて、使い物に成らなくなってしまう。この船1隻を作り出す資源は、有限なのだと魔王様から脳みそ吹き飛ぶくらい大袈裟に説法を食らった半魚人なら、誰もが自らの意思で掃除する。

 その追撃者の船団長は、冷酷なマーメイド族の将軍だった。

「ちょい、風を逃がせ! 適当な距離で追跡する」

 いえっさー!なんて掛け声が聞こえている時点で何か場違いな気もするのだが。

 全長60m前後の船体におよそ300人の水棲魔物が乗り込んでいる。

 砲郭と座は、18門と多くガンスミスのコボルトたちが製造した特殊な長砲だ。

「将軍、そろそろ人間の支配領域に入ります」

 額の前で軽く握った拳を挙げて、軽く会釈する航海士がティーカップを薦めた。

 彼女は、その盆の上にあるカップを受け取ると、

「ならば、このまま風を逃がせ! いったん距離を空ける」


「ラテンセイルを畳め!」


「漕ぎ手は持ち場に付け! 櫂を使って静かに進む」

 矢継ぎ早に命令が飛び、船団長が自室に降りていく。

 4隻のジーベックはそのまま蒼海の闇の向こう側に消えていく。

「疑われることなく、人間側に潜り込ませる事が出来た...お手並み拝見と行きましょう、陛下」



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