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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 大戦斧の冒険者
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-91話 アデン砦攻略 ①-

 アデン砦は、丘陵地の尾根に築かれた砦だ。

 ここを守るのは、この地域の地方豪族。州としての軍閥内ではやや小規模な方の勢力にあり、攻略起点として、エサ子たち一行において最も手の出しやすい兵力差だった。その差は、僅かに500余り。

 この豪族が有する全兵力は、同砦の眼下にあるアデンから農民を軍役と称してかき集めておよそ、3000人。砦に収容可能な兵力は、2000人といったところだった。

 ただ、丘陵の尾根に築かれたこの砦の生命線は取水地からの隠し用水路である。

 高地にあるから攻め込まれた際は、敵兵を一望できる点で有利だったが、水や食料は有限で限りがある。

 国境の州・メンシィルは、南北に長く教会が守護するメルセン州とはシェイハーンという城塞都市を挟む形で隣りあわせだ。

 この街は、メルセン側が建設したものだ。

 街の規模はキルトニゼブのゆうに3倍の規模を誇り6万人の住民を抱える。

 城壁は、特に北側の黒鉄くろがね城という連結式尖塔城壁を有して、連射式バリスタという兵器を備えている。これは、帝国の築城スタイルに酷似したもので、シェイハーンを起点に小競り合いを繰り返してきた時代がある。

 そのメンシィル州は、北部にアスラという港町があり、帝国とは“黒き海”を隔てて支配地域を有する。

 軍閥の本拠地はそのアスラであるが、構成の殆どは豪族たちだ。

 仮にひとつの城が攻められた場合、近隣の城までは距離も遠く連携は難しい、


 そこで彼らは、割り切った考えに至る。

 敵を深く入り込ませてから反撃するというスタイルへ。

 その戦術において、教会は常に手痛い損害を出してきた。



 アビゲイルは、取水地の水辺をくまなく探索した。

 時に、エサ子は池の中をずっと覗き込んでいる。

「どうしたの?」

 水回りの探索から戻ってきたハゲは、波打つ池の砂地にしゃがみ込んでいる彼女に声を掛けた。

 よく見れば、水面に反射してエサ子のパンツが丸見えだった。

 地味で色気も無いパンツ――『男の子はね何でもいいという訳では...』と言いかけてエサ子の見ているソレに気が付いた。

 透明度の高い池の底に何かある。

「エサちゃん...」


「うん。ちょっと気になってて」

 ブーツを無造作に脱いだアビゲイルは、池に勢いよく飛び込んだ。

 エサ子の真横から入水したものだから、彼女はその飛沫でびしょ濡れになる。

「ぅー」


「あった! あったよ、エサちゃんファインプレー!!」

 水底から戻ってきた彼は、水路の状態を息が続くまで何度も調査する。

 この作業に要したのは、半日ほどになる。

 陽動のために1000の兵力で砦に取りついた剣士たちの目の前には、アデン城兵1500人が現れたところだ。本来ならば、一刻も早く城を攻略して欲しい状況になっている。


「水路が湖底にあるのは一時的で、10mちょっとで取水口よりも広い空間に出る。恐らくそこが貯水池なんだと思う。そこは石造で、階段と柱が何本も天井を支えている」

 アビゲイルの身体は、毛布が何枚も重ねられて暖をとれるよう手配されている。

 エサ子が未だ必要とばかりに毛布を運んできている。

「もう、要らないから」


「...」


「武器は持って短剣くらいだろう。階段を上ると、倉庫っぽい部屋になってたから、その辺りはエサちゃんの索敵能力で周囲をひとつ、ひとつ攻略していこう!!」

 静かに『応ッ』と唸る200人。

 エサ子もぐっと拳を握りしめている。



 一方、1500人の兵を前に陣を敷き直した槍使いは、眉間に皺を寄せて細い目で敵陣を眺めていた。

「何か策があって、後退したんだよな?」

 剣士が脱ぎたくて仕方のない法衣を引きずって天幕から這い出て来た。

 槍使いの細い目が剣士に向けられた。

「...とりあえず奴らが城に戻るまでに足がもたつく地まで引っ張り出すことは出来た」


「できた...それから?」


「ふぅー」


「おいおい、何かあるんだよな? あいつら俺たちより人数多いぞ」

 剣士や槍使いが本気を出せば、広範囲とまでいかなくともせいぜい百人足らずは生傷負って倒せそうな雰囲気はある。いや、多分倒せるだろう。

 集団戦闘の指揮こそ、騎士長に任せた方がもっと効率的かも知れない。

「んじゃ、取りあえず奴らをビビらせてみようか」


「ビビるのか?! 戦いなれてる連中なんだろ? ま、この距離からでもバカにされてるような奇声が聞こえるし???」

 剣士が1500人の黒山を指さしている。

「ビビるさ、あいつらは身をもってこれを受けて来たからな!!」

 と、槍使いが母衣ほろを被せてあった6基の荷馬車を敵陣に向けて押し出した。

 教会が誇る投射兵器“連射式バリスタ”である。

 いや、その改良型でより重量のある砲丸を投射して、面制圧を行う新兵器として開発した。

 王国でも同様のバリスタを開発したが、教会の方がいち早く全軍に配備し終えていたものだ。

「こ、これって...最早...」


「ああ、火薬を使わない大砲と同義だ」


「――北アフリカのドイツ軍さながらの八八アハトアハトミリ高射砲みたいなもんさ...」

 槍使いの自信が戻って何よりと、剣士は心配していた不安を棄てる事が出来た。

 ただ、彼が何を言っているのかは意味不明だった。

「ま、まあ...何かするんなら、やってみてくれ」


剣士おまえには浪漫が無いのか?!」


「いや、槍使おまえいのネタが分からんのだ...」

 剣士の前でミリタリーネタは通じない。

 彼は、アーサー王伝説とかファンタジー世界が友達だったからだ。

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