- C 166話 カラチ沖 カスピ海海戦 2 -
ペンギンは空を飛ばないよ?!
「いやだなあ、今飛んでたじゃん」
いやいや飛ばないから。
あ、いや、百歩も譲ってあげるとして、ね。
「そんなに後ろに下がって何してんの?」
言葉のアヤだよ、実際に下がんないよ!
で、ペンギン!!
「もう、魔界の子たちは、フライの魔法スキルで空を飛ぶ。研鑽を積んだ子たちは花形の郵便職員へと就職するんだよ。ま、一応、公務員だし。こうやって魔界以外の場所でも働けるから、すごい倍率でね!」
ちょ、ちょちょ...
ちょっと待って。
魔界から“公務員”なんてワード出てきたけど。
「そりゃ、魔界だって行政機関くらいあるよ。ボクの治める第2魔王領だって、12個ある荘園のひとつだし、王や公を置いた州と県単位でそれぞれ行政区がある。もっと小さく分ければ、県の下に郡があるけど...」
うむ。
なるほど、ウナちゃんは...凄い。
そう置換しちゃった、ボクがある。
もう、空飛ぶペンギンも、公務員というワードも忘れることにした。
で――。
「何?」
おーい!!!
ボクにも内容を教えろぉー、このポンコツがああああああ!!!
◇
珊瑚海のマレ島には魔界のゲートがある。
巧妙に隠され、小さな漁村で守ってきた。
そして、そこには例のペンギンがいる。
信じがたいのは、彼らは魔界の獣人だってことだ。
そして公務員だとウナちゃんは言ってた。
「ああ、云ったよ」
ボクの解説に割り込まないでくれるかなあ。
「マルちゃんの思考が単純だからだよ。こうやって、誰かに見透かされたように合いの手を入れられなかったかい? 本人がそんなに首振って否定しても、マルちゃんの解説えは駄々洩れだからね」
って、彼女は笑ってた。
いやボクが嗤われてるんだろう。
お姉ちゃんが買い出しに出てくれてよかった。
妹がこんなに嗤われてるんだ、居たら居たで面倒な...。
「で、内容は?」
「どうやら南洋も東洋とは、戦いたいらしいってことが分かった。最初は、マナ鉱石が火種じゃないかって考えてたけど...両国も、台州での仲介者から鉱石の購入を購入していることは、現地人でさえ知っている。と、なると敵対する理由がない」
小競り合いとか、確執などは動機にしても、やや結論付けるには薄い方だ。
むしろ暴論であったり、強引という感じだ。
シナリオ的にはもとより、長年の確執や対立している関係だけでいいので、リアリティは必要ないかも知れない。
この場合は真実だろう。
この地域の特徴としては――
「両国を除外すると、北天、南蛮などの大国はある。いやさ、ハイフォンも居れると、大陸軍であるから相手をするなら...」
「海軍国家、以外か!」
それぞれの両国が鍔迫り合いだけだったのを、殴り、殴り倒されるさまへとなったのは近年。
急いで建艦ラッシュへと発展したのもこの当たりを境にする。
「まるで人が変わったようにか?」
戸口にハナ姉が立つ。
買い出しは順調だったらしく、室内には大きな紙袋が運び込まれた。
「今、仕入れてきた話では」
食いつきのいい雛のようにボクたちは、姉さまの傍に寄る。
彼女もまんざらでもない表情を浮かべ。
「南洋の国王派というのが、な」
◆
船団の先でチカチカと発光して、爆発音が響けば誰もが気が付く。
当然、高高空まで上がってる観測器だって眼下の爆発を目撃してから念話してた。
が、銃声。
彼にとっては1発で良かった。
三脚マストの見張り塔に自らの身体をロープで括りつけた男は、かじかむ指に賭けていた。
上空にある魔法士を撃ち抜くためにただ、1発でいい。
そして仕留めてた。
スカイトバーク艦隊は、敵艦隊との戦力差と距離を知らない。
伝える前に念話が途切れたからだ。
「狙撃はした! 今から降りるぞ」
伝声管からの声はない。
一方通行に男は恨み言を向けない。
《返事もないか...》
なんて、吐き捨ててた。
スカイトバーク艦隊の南下は監視されていた。
王国にとっての初遠洋航海ではない。
が、帝国主義として新たな、領土獲得のための行動としてならば、初の大規模遠征軍派遣という構図だ。
陸と海とで覇権国家に並び立とうとする最初の一歩だった。
南下の先に西インドがある。
西欧諸侯連合が領有を主張する“ゴア”がある。
400年後のこの世界でも、“ゴア”には共同統治と、その文化遺産と西欧の守備隊がある。
抵抗勢力の支持基盤にこれら、西欧も絡んでいる証左だろうか。
「侍従長?」
「各国が目を光らせておりました」
皇女殿下は小さくうなづき、
「分かってます...今ある皇家は私の敵! でも、艦隊の兵は私にとっても民なのだという事が...」
涙を流してもいい状況だった。
彼女はぐっと堪えて、こぶしを握る。
「この戦いで目を、目を覚まさせないと!!」




