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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1223/2518

- C 165話 カラチ沖 カスピ海海戦 1 -

 カラチの港はこの地域では珍しい、西洋的な城塞貿易港だ。

 隕石と地殻変動の強烈な、力によって理不尽にも自然は、旧()()()は海中に没することとなった。数万という年月と、しぶとく生き残った人類が再び、似た文明を築くまで—―また、魔法と剣の時代を駆け抜けてきたことを踏まえ。

 かつての内陸最大の湖だった“カスピ海”は、ペルシャ湾とオマーン湾とひと繋ぎとなって広大な海へ。

 現地人はここを“カスピ海”と呼んでいる。

 スカイとバークのバクー港町周辺は“ノース”、カラチ周辺海域は“サウス”だ。


 400年前の建艦技術最先端といえば、南洋王国である。

 が、これは自らが勝ち得た職人たちの革命ではない。

 ここでいえば、次席であるグラスノザルツ帝国がトップリーダーであった。

 帝国の解体、国体の変更などを経るうちで、スカイとバークは造船技師の引き抜きに施行していた。

 よって、ここ200年はカスピ海の覇者といえば、スカイとバーク以外にない。

「おいおい、映りが悪いからって機械を叩くなよ! それでなくとも普段からご機嫌斜めなとこ、が...」

 注意している傍から再び、バシバシと兵士が精密機械を叩く。

 原理は全く分からないが理屈ならなんとなくわかる。

 とは、言ってもぼやっとした感じのものだ。


 生物にしろ、この世界に存在する物質は“マナ”の影響を大なり・小なりと受けているとされる。

 そのマナ、或いはオドの痕跡を受信することで存在を知覚することができるという。

 問題は無機質ならマナ、有機体ならオドの違いがありこれらの判別は非常に難しいらしい。

 帝国の魔女が遺した研究の引継ぎのようなものとか。

 わりと厄介なものを残してた。


 ...ま、もう本人は忘れてるんだろうなあ。


 で、しこたまポンポン叩いてた機械から白い煙が上がった。

 死んじゃったっぽい。

「消える前に()()()映ったんだが...」

 壊した奴の弁明。

 どうも悪びれてなさそう。

「ったく...壊れた、ら...???!!!!」

 窓ガラス越しに昏い海が光った気がした。

 刹那、操舵艦橋の真横に強烈な衝撃波を食らう。

 船が右に大きく傾いて、復元するまで相当時間がかかった気がした。


 いや、舷側の上甲板で「だれか落ちたぞー!!!」ってのが聞こえた気がする。

「耳が痛ぇー!!」

 よく見れば1つ上の士官の耳から血が出てる。

 叩いてた彼も自分の声が聞こえ難いので――ジェスチャーを交えてのパントマイムみたいな。

「ああ、おまえのも耳から血が出てる」

 砲撃であることは分かる。

 電探が壊れた矢先だから...

「こちら操舵室の当直士官です。砲撃を受け、復元が間に合いません!!!」



 十分な距離まで近づくと、マナ受波の探信儀は、その精度に陰りが見える。

 艦隊を組む場合は誤認しないよう、互いに個体波が取られる。

 それらを除外マスキングして、敵艦隊の位置把握に努めるという原理だ。

 しかも感度は抜群で、潜水艦さえも発見できる優れものだ。

「駆逐を先行とはセオリー通りだな?!」

 スカイとバークは、艦隊の3里先に駆逐2隻を派遣。

 霧が出ていなければ、サウスから北上する艦隊を視認できていたかもしれない。

 砲撃音は、発光から数秒遅れて聞こえた。


 音はやや軽め――100ミリか120ミリ前後。


「打ち返してこぬな?」

 ブリッジ内では身を乗り出すものが多数ある。

 総舵輪を握る者でさえ、舵輪を身で覆ってた。

「着弾したというより、過貫通した雰囲気でしたが???」

 同駆逐艦の艦長がやや目を丸くして...

「我が方ので過貫通では...どんな紙装甲だ?!」

 スカイとバーク王国の軍艦はピーキー過ぎる傾向だ。

 駆逐艦の特徴は曰く『本気出せば世界最速スピードレーサーだ!』と豪語する。

 それは装甲があってないを体現する。

 しかも、長砲身の76ミリ砲を単装で3基搭載してた。


 この船の戦い方は単純だ。

 素早く死角に回り込んで、射角の広い魚雷をばら撒いて、砲撃しながら逃げていくというもの。

 単純だが、護衛中に遭遇すると、実に厄介でウザイ船だった。

「紙か、...となると」

 深いため息とともに。

「バクー級のハイエナか......」

 艦長の表情が硬くなり、そしてやや複雑に。

「雷撃戦よーい!!」


「雷撃、戦ぇ~ん?」

 船同士が縦を向いていることが分かった。

 で、あればこのまま、霧のせいですれ違う可能性がある。

 逃がす選択肢もないし、単艦でもないことは電探で知っていた。

 その敵対者かれらが後続に控える本隊をどこまで把握しているかで、今後の行動に支障が出る。

「さて、そろそろすれ違うはずだが...」



 東洋王国の増援部隊が、ルソン島に迫ってた。

 と同時に、南洋王国の国王派艦隊にも動きがあり、遠洋訓練と称してビスマルク多島海へと向けて舵を切ったって情報が“珊瑚海・マレ島”から台州にあるウナ部長の下へ届けられた。

 空飛ぶペンギンが、首から下げた「〒」バッグの手紙を置いてった珍妙な風景。

「ウナちゃん、アレ...なに?」


「あ、配達員」


「ん?」

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