ところで、なんですけど
お久しぶりです、私。
氷山 行といいます。
実は、ちょっと前に出てきてからすっかりご無沙汰でして、ね。
誰も私のスジを弄ってくれないので、とうとう...私自身が乗り出してきちゃった。
なんて、そんなところです。
丸恵師匠には、新しい仕事があると紹介はされたんです。
でもねえ~
時期が悪かったんで、その時は仮登録だけに留めて。
暫くログインしてなかったら、いつの間にか新シーズン始まってるって言うじゃないですか!!
びっくりでした。
「姫さま?」
どちらの方とお話で?なんて、侍従長が問うてきた。
白髪の老紳士。
眉毛まで雪のように白くて長いのが特徴。
私は“白ヤギさん”と蔭でいうようにしてたり。
「いえ、えっと...今までの報告を?」
「報告、を?」
瞬きだと思しき感じで、眉毛が非常に早く痙攣でもしているような――
“白ヤギさん”は私の身を案じて、共に故郷を出奔してくれた人でもある。
大事な人がたくさんいたであろうにも関わらず。
「いや、儂のようなジジイにはもう、子供も大きくなり...助けなどいらんでしょう。ま、孫には(もう...)会えないでしょうが、儂には姫さまが居られます!!」
殊勝な事を言う。
行ちゃん、涙が出てくるよ。
おっと、私。
仮登録してたNPCガチャなんですけど。
病人優遇とか補正値、効いてるんですかね?
今回も結構、重要なのが来ましたよw
前は、帝国の魔女でしたけど。
スカイトバーク王国王位継承11番目、末姫のフィズ・アーチペラゴーニュ。
母方の姓を名乗る少女である。
えっと、12歳で...っ、半年前に初潮を迎えた、半分レディな糞生意気な娘だ。
自分自身の評価をすれば、まあ、こういう表現であってるはず。
アーチペラゴーニュの母の父の父へと6代いや、9代遡ると...ペンドラゴンって苗字が出てくるけど、まあ、ここまで遡ってくと眉唾の気がしてならない。それにさあ、記憶の方は嫌でもつい最近なわけで。
紅いドラゴンに食われちゃった、ハーフエルフの“ウーゼル・ウセディグ”のこともある。
あれがペンドラゴン家のもう一つの現実だとすると...寒気が。
「姫さま、これを」
身震いが、寒さから来たのだと勘違いされた。
私を観察している証左だけど。
ちょっと過保護です。
「大丈夫だって」
「いえいえ、姫さまの御身体は大事です!」
抵抗勢力を率いるリーダーいや、精神的支柱という点で、極めて重要なポジションにある。
皆が私の一挙手一投速を見ている。
注視している。
そして、私には自由がない。
「今でも悪夢を見られますか?」
肩に羽織らせてくれたのはガウン。
国から持ち出せたもののひとつで、貴重という割には売ったところで大した額にはならないだろう。
私がスカイトバーク王国の姫であるという身分の証明は、オーラのような魔法力と王家の証たる痣である。
装飾品の類でないのがやや寂しい。
身体能力だと手放すことが出来ないからだ。
「う、うん...」
父王に拝謁した旅商人から始まった、伝染病のような奇々怪々な出来事。
私にはそれが悪夢のように見えた。
5人いた母は、気が振れでもしたように憤死して、兄や姉もまるで別人のようになった。
今にして思えば、魂が入れ替わったような。
故に身体である器が耐えられなかった者は、憤死という形で肉体が滅んだのだと思われる。
私たち王族は魔法耐性がある。
故に悪魔の儀式にも耐えられたのでは――?
「皆が、姫さまのお姿を心待ちにしておいでです」
侍従長と私の仲を裂くように、騎士然とした肥えた男が入室してきた。
ノックもなしにレディの部屋へ。
当然、侍従長の憤慨はある。
彼は一瞥して、冷ややかな視線を投げた。
「殿下は我らの旗頭! ここから世界が動くのだ!!!」
一蹴とまではいかないものの、老人にはいたわりが必要だ。
私もこの騎士然とした男が嫌いだ。
うん、私はスカイトバーク王国が末姫、フィズ・アーチペラゴーニュ。
反体制派勢力のリーダーである!!




