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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1217/2519

- C 162話 機動艦隊とクァンガイ航空隊 8 -

 新装備の39式 紺色箒マリンA型を装備した魔法士の一群がクァンガイ航空隊に着任する。

 この派遣は本国からのであると同時に、大型の水上器母艦1隻を含む連邦の機動艦隊が差し向けられたものである。

 表向きは周辺地域の治安活動とする動きだとした。

「こちら、クァンガイ領のギャザース子爵です...」

 紹介しておいて、参謀が視線を向けると領主の肩が上向き矢印みたいに見えた。

 多分、背中から領主を見ているすべての部下が“上向き矢印”だと思ったに違いない。

「し、子爵...ですか」

 現状の連邦では、貴族社会はすでに終焉している。

 その爵位と権威は結び付かないのである。

「で、市長は?」

 参謀は再びなで肩の領主を差して、

「ギャザース子爵が市長を歴任しております」


「つまり...それは」


「世襲制ではありませんが、飛び地領は帝国時代の名残です。かつてのいえ、王国でも名ばかりの爵位持ちが多かった為、こうして飛び地...辺境に派遣された貴族が、私財を投げ打ち家臣と共に切り拓いて町が出来ました。外見的には時代錯誤かもしれませんが」

 片手を前に言葉が遮られた。

「なるほど、まあ、総督府も飛び地領には寛容であれと、言伝を頂いております。その...っ長い歴史において、貴卿らも色々あった...としておきましょう」

 と、艦隊司令官は執務室のソファーに腰を下ろす。

 紺色箒の魔法士たちが、飛行訓練中のようだ。

 館からでも彼らの様が見て取れた。

「あちらは...新型ですか?」

 やや身を乗り出した、参謀が問う。

 守備隊司令官は臨時休養が明けていない為、病欠中という()()になっていた。

「39式のA型です」


「と、云いますと?」

 正式採用されて2年弱、最新の飛行モジュールのひとつだ。

 箒の両脇下に大型のフロートが取り付けられ、足を掛けられるよう装甲化したあぶみみたいなつくりだ。

 また箒の下部には、弾頭装薬100kg相当の航空爆弾か或いは、可変式感応魚雷ソードフィッシュの改良型が装備できるハードポイントがあった。

 ソードフィッシュの方は、スクリューの回転音を収集し、音響誘導装置にセットできれば、簡易誘導が可能であるという噂だ――実験では“妖精の()()()”と呼ばれた魔術式が組まれ、40~50%未満の静かな水面で2キロメートル、誘導したという記録が挙げられてある。

 あくまでも連邦の技術部が“簡易”と、言葉を濁していたので命中率は()()()()()()で半々という記録であるから、誘導しないと思った方が精神衛生上過度に期待しなくていい。

 まあ、それでもだ。

 とうとう本格的に雷装が登場してきたことになる。



 魔都・台州に集まる各国の諜報員たちの前に、ひとつの珍事件じょうほうが飛び込んできた。

 南洋王国の内紛である。

 まあ、旧オーストラリアを東西に分かち、パンダ海側・ダーウィン軍港を眼下に、新王都“カーセルキャメロット”を設けた北部地域と。旧時代の海没都市シドニー側、南部地域を支配下に置く真王家派は旧王都“クイーンズランド”に立て籠もってた。

 どちらも正統なる南洋王国の主人であるという主張は変わらず、歩み寄りもなくただただ、横一列に歩んできた。どちらかが先んじれば、相手の足を引っ張って邪魔をするというのだから、手に負えない。

 結果、本土空襲でもなければ一枚にまとまらなかったという悲しい話だ。

 さて、対東洋王国勢力の一雄であった国は、これでほぼ完全に退場することになる。

 これを仕掛けたのが...実は、ウナ部長だったりする。


 その理由。

 いたってシンプルな話。

 ノワール・シャッスさんに掛けられていた嫌疑の有耶無耶である。

 実際に取り下げられてはいる。

 懸賞金を払えなくさせたのだから、彼女にどんな恨みがあろうとも国王派にはもう、手出しができる状態ではないからだが。逆に南側の真王家派には貸しが生まれた気がする。

「んにゃ、それは気にしなくていい」

 と、言うのは()()胸を張るウナ部長。

「魔界と疎遠になってたのは、ポータルが自然と閉じちゃってたので...」


「ふむふむ」


「...専用の掘削機で空間にゲートを作っておいたから、彼ら...えっと、クイーンズランドの人々ともう一度、交易から関係の構築を組むという話でチャラにしておいた」

 って聞いてぬか喜びしてたけど。

「でも、仕事はあるからノワールさんにちゃんと受注させてね」

 耳を疑ったんで、もう一度問いただす。

「いやさ、タダより怖いものはないって言うからね。世界経済にもやや影響するわけだよ...たぶんさ、マナ鉱石なんかも魔界こっちにも流れてくるわけだ。でも、魔界ではそもそも鉱石に頼らなくとも、高濃度のマナが採取可能なんで...交易品で流れてきても困るわけ」

 むせ返るような空気だと思ってたが。

 まさか、そんな...。

 あ、でも。

「そこで海賊の彼女が、魔界領わたしの交易船の間に入ってくれる事を願うわけ。鉱石が流れてきたら、3割さ、報酬にするからどこかで売ってきてくれる?」

 その交易船は拿捕という形で輸送用に使っていいという好条件だ。

 だが...

「な、なにその疑うような目は」

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