- C 161話 機動艦隊とクァンガイ航空隊 7 -
少年たちばかりの航空隊は、受けと攻めに分かれてパートナーが伝統的に生まれてた。
女の子絡みの嫉妬は、男×女よりも男×男でも、凄まじいものがある。
そこら辺の出っ張りを端折ってしまうとだ、嫉妬で狂うとどちらも身を焦がすという単純なお話である。
30台手前の顎髭無精の教官には、男の娘がパートナーとして二人ほどある。
街まで行けば、囲っている商売女だっているんだから隅に置けないナイスガイだ。
ま、拗れると...それは多分、凄い修羅場になるんだろう。
可愛らしいリボンのついた“ローライズショートパンツ”を履きこなす少年と共にある。
基地の外で囲っている男の娘で、元飛行隊という経歴を持つ。
彼とは其処でのつながりが、今も続いているという――「隊長?!」
少年が不思議そうに問うてきた。
二人は、つまりデート中である。
「...だめだな、身が入んねえなあ」
前髪をかき上げ、
パートナーの腰に腕を回す。
「なあ、やらせろよ」
「え?!」
まあ、そんな流れで彼らは、まだ日も高いのに何処かの路地へと消えていった。
◆
クァンガイ領の領主館では、突如、炊事場に現れた“黒光り”にでも、対処するかのような大騒ぎである。蜘蛛の巣或いは、蜂の巣でもいい...どこの巣を突いたものか、尋常ではない書類の山と、人の流れに頭を抱える執事の姿。
この事態が起きたのは、戦利品だと言って持ち帰ってきた第一陣の直掩隊らのせいだ。
東洋艦隊所属の魔法少女の内、御手つき前の子は半数超でまあ、心のケアは軽くて済んだ。
問題は暴走した少年たちの興味本位で本土空襲までしちゃったいや、されちゃった被害者の子らの医療ケアと心の問題だ。
「賠償金、だよなあ」
領主のあたまが数度のぐるんぐるん回って擡げてる。
壁に向かって手を突き、唸ったと思ったら額を打ち付け始めてた。
「わわわ、な、何してるんですか!!!」
執事と、参謀部の将校らが止めに入っている。
飛び地領防衛司令官も、唐突に病欠といって緊急入院してた。
「これはさ、ねえ、やっぱり東洋に...」
「戦時下ですから多少は...その誤魔化しがきかせられます。とはいっても慰問の為に捕虜を慮辱して良いという事には成らんでしょうが、苦しい言い訳でよろしかったら...無い知恵、もなくはないかと」
参謀長が首を垂れてる。
面と向かって目を見れる内容じゃないという事の証左だが。
領主は、彼の前に立ち――「忌憚なく申して見よ! 余はこの際、どんな駄策でも全身全霊を以て答えると約束しよう!」なんて告げてたが、ひとたび参謀長は開口すると――。
「ば、バカを申すな!!」
と一蹴しかけた。
「いやしかし戦時規定に則れば、将校および士官、一般兵にはそれぞれの階級的立場と、捕虜の扱いが異なり人格を無視することなく扱う事が定められております。これはかつての暗黒戦争時代のような兵と市民を区別するためのものであり...」
「で、なぜ彼女らが情報収集の過程で拷問を受けねばならんのだ!! 未だ、と、年端もいかぬ...いや、見れば、私の娘くらいの子まで居るではないか!!!!!」
って怒鳴ってもいた。
怒りたくなる気持ちも分からなくもない。
ただ、東洋王国の魔法師団では、主要な魔法使いが女性主体だったという文化の違いである。
そして彼女たちは、女神にその身を捧げた身寄りのない、子供たちという背景もあった。
この違いを無視して一概に女の子を前線に送る“東洋”の連中は悪だと、決めつけることは誰にもできないのだ。
たとえ連邦共和国に正義があってもだ。
「しかし、その方法であれば...行き過ぎた拷問の末だとして言い逃れはできます」
「...」
領主の粘りつくような視線が嫌いだ。
参謀は、トーンを落として静かに、
「認めないでおくと、痛くもない腹を探られることになるでしょう。少なくとも、本国から教官として派遣された者を人身御供にするという手段も無くはない...それだと、買わなくてもいい不協和音をですが、恐らくはわが軍は早晩、崩壊すると確約いたします」
変な予言を言い渡された。
確かに犯人捜しで事態が収まる物でもない。
魔法少女の階級は低くても少尉、将校である。
で、あれば――条件次第では気密性のある情報を持っているのではないかと、憲兵なり諜報部の横やりがあってもと、考え及ぶ可能性はあった。
仕方なく、領主が首を縦に振る。
その仕方なさが、振った後もしきりに参謀を呼びつけては、確認しているほどである。
流石にウザくなると...
「閣下、お暇でしたら滑走路でも走ってくることをお勧めします」
なんて切り返されてた。
それで奔ったかはまた別の話だろう。




