-69話 決戦!女王討滅-
集団の中で最初に飛び出したのが、メグミさんだった。
「アーク・エクリプス!!」
続いて、ベックはメグミさんの横隣に並ぶような位置に滑り込むと――
「獅子座流星ぐぅーん!!」
と、叫んでいる。
まあ、本来は獣王重連撃と名付けられた、格闘家クラスの最高難易度拳技だ。
彼が正式な名称でコレを叫ばないのは、気恥ずかしさと覚えられなかったことに由来する。
ふたりに続くようにしてカブトムシが羽ばたき始めると、誰かに蹴り飛ばされている。
転がるカブトムシと座する、グエン。
「性病は、すっこんでろ!」
彼女を蹴り飛ばしたのは、ラージュだった。
「や、性病じゃ」
グエンは、ボロボロと泣きだしている。
「ネメシス・アーク!!!」
ラージュは、片手剣12連撃の剣技を発動。
既に技を出し終えた、ふたりはそれぞれ女王の袖に回り込んでいる。
真円にそって、垂直重攻撃が繰り出されているその後ろにカーマイケルの姿があった。
「ラージュ、伏せろ!」
彼女の名を叫ぶと、ラージュは撃ち終えた瞬間に脇へ飛び退いた。
雷電のような凄まじい放電現象と青白い炎を纏いながら――
「片手剣超神速重突撃!!」
女王の背後にある玉座の背もたれまで吹き飛ばしている。
凄まじい貫通力に、マルまで鳥肌を感じた。
かつて、カーマイケルにこんな技を使わせたことは一度も無い。
いや、彼と対峙した記憶も無いから、緋色もここまでの魔人だと気が付いてなかったと分析する。
「眠れる獅子、目覚めるって」
マルの独り言。
まあ、彼女までこのラッシュが続くことは無かった。
カーマイケルの放った一撃で、女王の右肩から胸、腹とその下まで跡形もなく引き飛んでいる。そして、彼女の身体に細かいヒビが入る。まるで、陶器の茶碗のような雰囲気だ。
細かく砕け散る予感。
「な...」
何もできなかった――と言いたかったのか、彼女は高い音を上げ――パリンっ、粉々になった。
「はっえー!!」
マルを含めた魔法詠唱者たちの感想。
「私らの仕事は?」
「いや、勇者は?」
振り返ると、俺Tueeee!!な冒険者を前に足が竦んでいた。
「どーすんのよ、コレ????」
「ボクが分かるわけ...」
暫くすると、天上を見上げてたマルが――
「ボク、ちょっとトイレに」
なんて踵を返して離れようとするも、
「いやいや、脳筋が勢いづいた責任をね?」
「そうそう、ここはマルちゃんが責任をとって」
「スライム・エステと、スパで払って貰わないと...」
聖職者の婦女子から挙がる声。
「そっち?!」
「そっちでしょ!」
◆
天上宮から勇者たちが凱旋する。
ランペルーク王国に再び、平和が訪れた――なんてノリのエンディング・ストーリーが少年王から告知。
見れば、女の子みたいに可愛らしい男の子だ。
碧色の短髪で毛足が跳ねてる感じは珍しい。
バルドーの食いつき方が異常なので、妹のエイジスに問うと――『兄は、幼い女の子も好きですがストライクを狙うなら、十代前半の少年が好みです』などと応えている。
が、どっちも倫理観の無いヤバい人間だという事が分かる。
その大賢者は、都に残って王の補佐をすると宣言した。
誰もが思う――『こいつ、少年王目当てだ』と。
勇者アッシュは、結局、勇者業を廃業すると決意した。
エルフの娘が『そんな不安定な職より、私の郷に来て治癒士やれば儲かるから』と説き伏せたらしい。結局、アッシュは、この娘の尻に敷かれる人生を送るらしい。
いや、彼らしい判断かもしれない。
はじめての相手は忘れられないものだともいう。
中隊長は、エイジスの手を取り――
「俺は不器用だから、...だから、...あ、そば」
なんて、しどろもどろな応対をしていたら、彼女から腕をとって。
「どこまでもついていきます、旦那さま」
ふたりが新婚旅行に出たのは、イベント終了即日だという話だ。
しかし行動力のあるNPCだと後に散々言われるようになる。
国境なき傭兵団と、カーマイケル総長代理...と、魔王の娘ラージュの微妙な関係がちょっと問題だ。
グエンは入院中でゲスト扱いのままだが、ラージュからは正式加入申請が出されている。
「実家の...魔王軍所属から抜けはしないのか?」
事務手続き上、カーマイケルが受け取った書類はラージュのものだ。
簡単な申請でいいのに彼女は、スリーサイズまでしっかり書き込んでアピールしている。
「父上はがっかりするけど、お婿さんGetしたら文句ないと思うの!!」
随分、前向きになった。
いや、ラージュが女の子らしくなったのかもしれない。
「私にとって所属は関係ない! そこにカーマイケル、お前が居ればいい」
口調はそのまま。
言動がちぐはぐなだけだ。
「断る理由は此方にない。君の申請は受理しよう...ようこそ傭兵団へ」
「よろしくな!」
ラージュの笑顔が眩しい。




