表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
102/2381

-68話 決戦前夜 ②-

 天幕を引き払う傭兵連合軍。

 最後の戦いだと皆々が心に決意を固める。

 勇者アッシュは、何かを告げようと思ったが、その言葉をぐっと臓腑の下の方に落とし込んでいる。

 言わなくても皆、分かっていることだ。


「さあ、これが最後だ! イベント終了まで楽しもう!!」

 押し殺したセリフをKYなベックが拳を突き上げて叫んでいる。

 皆の視線が痛い。

 呆気にとらわれた勇者の姿がある。

「雰囲気を台無しにするな!」


「それを叫ぶのはお前じゃない!」


「ひっこめ、三流獣人がっ!!」


「ケモノ臭ぇーんだよ!」


「性病にすっぞ、こら!!」


「おまえ、やっぱり性病だったのか?!」


「ち、ちげぇーよ! てか、あたし言ってないもん」

 などと、罵声が飛び交う。

 ベックは涙目になり、グエンは憤慨する。

 傭兵団の後方支援部隊は『お供できるのは此処までです』と言い残している。

 ザボンの騎士の魔法使いも、聖職者ヒーラーだけが一緒に行くと宣言し、その数は半数以下になった。仲間からMP回復水剤エイテールを受け取っている。

 勇者・アッシュは微笑んでいた。

 彼らとの関わり合いは生涯の宝だと思っている。

「じゃ、行きましょうか?」

 アッシュは、皆に問う。

 全員がこくりと頷く。

「じゃ、このイベント以降でも使えるアイテムを渡しておくね!」

 マルが、アタッカー全員に指輪をひとつ用意していた。

「なに、コレ?」


「所謂、大技即時発動アイテム」


「メグミさんに渡していたアイテムで、その効果が先刻の戦闘で実証できたから、みんなに持って貰うことにしたの...普段は溜めが必要な大技や、条件的発動を“1日1回だけで、初動のみ”というペナルティを課して実行できるアイテム」


「ま、マル?」


「公式のショップに、面白い宝石が売ってたから買っといた。おかげで、大口納品クエストランキングで手に入れたコインがすっからかん」

 って、マルが苦笑している。

 マルは、ステ振りを行わずに、即時発動という1点のみを追求して設計した。

 加工したのは“始まりの街”にいるNPCの彫金師だ。

 マルの天幕から出ていく、彼の背中が目撃されている。

「デメリットはそれだけじゃないけどね!」


「...」


「MPを1本、消費してもらいます」


「?!」

 受け取った全員が、自分のステ面を確認する。

 この場の連中くらいならば、MP1本くらい失っても平気だ。

 ただ、デメリットが多いのは気にかかる。

「他には?」


「スタミナ消費量が半分くらいかな?」

 マルがほくそ笑む。

 ひきつった笑いではないが、ややそれに近い。

 メグミさんの場合は、マルが調整した特注の身体によって、スタミナ消費軽減量はチートクラスだった。

 メグミさん無双が可能だ。

「使いどころ、考えてね!」


 恐ろしい指輪だと、皆はそれを一瞥した。



 最後の転移門を潜り抜けると、白亜の天上宮に即転移した。

 内装から、天井画や壁、柱などの造りは、中欧の様式美に倣った荘厳な雰囲気だ。強いて挙げるなら、ベルサイユ宮殿とミラノ大聖堂を掛けわせたようなイメージがある。

 城というより宗教建築物みたいな感じか。

 また、城内の至る所に天使像はあるけど、それらが動き出して天使が出てくる雰囲気もない。

 天上の主人が居城において、転移門から来た侵入者は外敵ではなく、一応、客人ゲストとして扱われている雰囲気がある。

 ただし、招かれざる客ではあるが――。


 しばらく進むと、それまでの造りから一変して、天井の高い広間へと出た。

 これまで、導かれるように扉が開いて、それを疑うことなく進んできた一行の先に玉座がみえている。

 玉座にあるのは、女王エリザベータである。

 黒く染まった3対の翼と、自信に満ちた上からの視線。

 縦ロール・ドリルの髪にエロい肉体。

 組んだ足を解けば、天上の入り口が垣間見えるかもしれない座り方をしている。

「ようこそ、ゲストたちよ...私の宮を汚す者たちよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ