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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-66話 前哨戦 ⑤-

「うおおおお! 喰らえ、クマ殺し!!」

 ベックの重攻撃・下段から上段に突き抜けるアッパーモーションが、天使を粉々に吹き飛ばした。

「熊殺し? それ、もっといい名が無かったか?」

 突っ走るベックの背中からカーマイケルが声を掛けた。

 彼は、後頭部を掻きながら――

「いや、あったと思うけど...舌噛みそうだから」

 ベックがそのまま、6対の腕を持つ天使の懐に飛び込んでいった。

 その光景は、誰もが“ベック、バカじゃないか?!”と思わせるものだった。


――獅子座流星ぐぅーん!!!


 両腕からから、まるでガトリングの砲弾のように放たれる攻撃の数。

 その一撃が重攻撃以上の威力を誇る、格闘家の超位級連続攻撃術――獣王重連撃スターダスト・ストーム――手数の多さは、実に本システム上最多の56連撃。正面突破能力においては右に出る技はなく、撃ち終えた後の硬直は、0.5秒と短いため直ぐに同系の獣王烈風脚とか、単一重攻撃ミーティア・シュートなどへと続けられる点においては、連続攻撃の多い技を繋げていくと、格闘家ひとりでフロア全体のエネミーを倒しきれる手数になる。

 但し、それを撃ち終えた後のプレイヤー側が問題である。

 CT=クールタイムは、スキルをひとつ発動した時点でスタミナを消費するため、それを回復する目的の休憩を指している。スキルとスキルの間に挟むことで、連続スキル行使は出来ないが、スタミナの過大消費による昏倒を防ぐ事が出来る。

 単純な攻撃ならば、スタミナの消費は少ない。

 しかし、より高度で強力な攻撃だと、消費量は比例して大きくなる。

 そこで練りだされたのが、スタミナ消費量を圧縮していく技だ。一応、スキル名も存在し、会得には十分な経験が必要だとされた。

 ベックは、56連撃を撃ち終わると砕け散った天使の背後に立っていた。

 撃ち終えた後の仁王立ちなど様になっている。

「見事な技だが、あれも確か――」


 ベック、爆睡――。



「スタミナ量を計算しながら撃ち込みなさいよ!!」

 ヒーラーで参加しているメグミさんだ。

 ザボンの騎士内で慣れてきたのか、みんなのお母さんみたいに頼られている。

 転移門の近くに天幕を張った攻略組は、暫しの休憩である。

「すまない」

 覚醒したベックは、メグミさんの腕を掴み。

「もう少し傍に」


「ダメ、これから寄るところあるから!」

 と、即答。ベック・パパ涙目というシーン。

 この戦いで、何故かカップルが多く誕生した。

 ひとり身で寂しいのはベックだけのような疎外感を憶える。


「どうだったの?」

 マルが心配そうに戻ってきた、メグミさんへ尋ねる。

「どーってことないのよ...単なるスタミナ管理の悪さってだけ」

 少々苛立ちを見せる。

「手が焼けるってこういう事ね」

 と、言ってくすっと笑う。

「...じゃ、問題ないね」

 マルは、粘土を捏ねている。

 彼女が作っているゴーレムは、メグミさん専用のである。

「じゃ、ちょっと服脱いで」


「え?!」


「え!じゃないよ、採寸できないじゃん!!」

 口を尖らせ困ってますよってマルが表情に顕していた。

 気恥ずかしそうに一糸まとわぬ姿になる。

「いや、そこまで脱がなくても良かったんだけど」

 マルの手がペタペタと、メグミさんの肌に触れて採寸していく。

 まあ、ぱっと見女の子同士のいけないシーンのように見えてならない。

 襲うマルと、襲われるメグミさんという構図。

 内太腿から奥へ臀部に指が抜けて、茂みから臍にむけて舌が這う。


「ぅ...」

 変な声が漏れ出た。

「ちょっと、採寸だけで奇妙な声出さないでよ」

 マルは、メジャーで各サイズをこまめにチェックしているだけ。

 手が、指、舌が這うなどはメグミさんの勝手な妄想だったが。

「もう、エッチなこだねぇー」


「ボクも嫌いじゃないけど、ま、今度ね」

 焦らすのは得意だ。

 服着ていいよ――マルは、メグミさんのゴーレムを本人が視ている前で完成まで持ち込んだ。

 その流れるような手捌きは正に巨匠と呼ばれるに相応しいものだった。

「じゃ、ちょっと」

 ゴーレムの出来栄え。

 メグミさんのリアルな身体を、スキャンされたのと寸分違わぬサイズ。

 しいて言うと、胸がやや小さく感じる。

「ああ、盛ってるでしょ! だからリサイズしておいたよ」

 意地悪な解答だ。

 マル自身も、バストアップに文句をいったクチである。

「で、こ...これ...」


「何?」


「せ、せ...く...」


「言わなくても分かるけど、本人に耐性無いんだから、やらない方がいいよ」

 マルが冷めた目で見てる。

 周りはカップルが沢山出来た。

 長身で貧相な造りのメグミさんでも彼氏いや、恋人が欲しい。

 これだけ人が同じ方向を見ているなら、私にもと思ってしまった。

「あれでしょ、ルーカスじゃ心のバランス取れないでしょ?」


「だから、このゴーレムは、メグミさん自身で使えるように調整してみた。ボクの魔力が注ぎ込まれてるけど、刺突剣使いの元ルーカスならアタッカーとしてこの身体、使いこなせるはずだよ!」

 メグミさんは、ゴーレムのステ面を確認する。

 確かにルーカスという男の身体では、女の子から告白されても心の安寧は求められない。

 やっぱり、強い男性の腕にぎゅっとされたい。

「あ...えっとね。心の声が顔に出てるから...気を付けて!」


「は、はい」

 しゅんとしたメグミさんがあった。


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