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どうか明日も生きて。
生きて、生きて、生き抜いてください。
小さい子供の声がこだまする。
緑いっぱいの公園に2人だけ。この世界に誰もいなくなってしまったみたいだ。
「待ってよ!」
「ふふっ捕まえてみてよ!」
「無理だよっ」
「そんなことない」
追いかけても追いかけても開く一方の君との距離。
いくら腕を伸ばしても掴むものは虚しい空だった。
「なんでそんなに足がはやいの」
「なんでだろうね」
涼しげに笑う少女。
僕とは正反対に軽やかに地面を蹴っている。
「僕、鬼ごっこは苦手なんだ」
「私もおんなじだよ」
「嘘だ。そんなに足がはやいのに」
「嘘じゃない。追いかけるのが苦手なの」
彼女は少し速度を落とした。
それを逃す手はないと僕は既に尽きている力を絞り出し、一際強く地面を蹴った。
僕と君の距離が縮まってゆく。
あともう少し。
「捕まえた!」
勢い余って強めに肩を叩くと彼女はぴたりと止まった。
僕は勝ち誇った気持ちになり笑みをにじませる。
「さぁ今度は君が鬼だ」
「……あーあ捕まっちゃった」
くるりと振り返って笑った少女。
僕たちは日が沈むまで遊び続けた。