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遊び人の彼とまじめな彼女

作者: 水野リベル

 フランス人のグレゴリーはタイに旅行に来ていた。列車に乗り、次の目的地へと向かう。グレゴリーは空いていた席に座った。少し迷って乗り遅れるところだったけどなんとか間に合ってよかったー、グレゴリーがほっとしていると、ふと自分の斜め前の席に座る女性に目がいった。黒髪をひとつに束ねた真面目で清楚な感じの女性だった。女性は書類を熱心に眺めていた。グレゴリーはのぞいてみると、書類の文字は、タイの文字ではないようだ。旅行で来ているわけでもなさそうだし、タイ人とはどこか違う感じだ。グレゴリーは気になって思わずきいてみた。

『ヘイ、それはなにを見てるんだい?』女性は書類から目を離しこちらをむいた。グレゴリーはフランス語でたずねてしまったことに気付いて今度は英語でいいなおしてきいてみた。すると女性は、「予習をしているんです」「予習?」「ええ、これからいく施設についての予習です」


 聞けば女性は日本人であり、ボランティアでタイに来ているそうだ。グレゴリーは彼女の話に興味を持っていろいろときいてみた。

 そして話を聞き、彼女が純粋に困っている人の役に立ちたくてボランティアに参加したことや、彼女の人助けに対する立派な志しを知る。これが彼女の初めての海外なのだそうだ。


「はぁ……」グレゴリーは彼女に感嘆の念を感じたように見入った。親の財力で放蕩しビーチで遊んでタイに女を買いに来ていた自分が恥ずかしくなった。損得にとらわれず美しい人間の心を持った彼女はフランスに白人にあこがれて集まってくる多くの東洋人たちに比べて何百倍魅力的なことか!それに彼女の白人にこびるところがまったくないのもいいと思った。

 グレゴリーは彼女と話をするうちにどんどん彼女に惹かれていった。

 

「ぼくはグレゴリーというんだ。きみの名前を教えてもらってもいいかい?」「翠といいます」「ミドリ……」


 そして……


 彼は彼女の行き先と同じ場所で下車した。そしてしばらく付いて歩いた。「わたしの行くところはこっちだから」と翠はいうが、「ぼくもこの近くに宿を取っているんだ。またきみと会えないかな?」

 彼女は驚いていたが、自分は旅行者で、他に誰も知り合いがいないので話し相手になってほしいだのなんだのいい、彼女にまた会う約束をしてもらった。グレゴリーは彼女に頼み携帯のアドレスも交換してもらった。

 本当は、泊まっている宿は別の場所だったが、グレゴリーは彼女の下宿の近くに宿を移した。

 そしてその後グレゴリーは彼女を誘い、彼女と会った。お互い少しわかりにくいものの、英語で会話した。言葉はあまり正確に通じないこともあったが、いろいろ遊びにいったりして2人は楽しい時を過ごした。

 グレゴリーはその後も何度か翠をデートに誘った。仕事の終わるころ、彼女の職場まで、迎えにきて一緒に帰ったりもするようになっていた。


 翠は、自分にこんな態度をとるグレゴリーが少し気になり始めた。彼はいつも明るい笑みを浮かべていて、金髪で、へーゼルというのだろうか緑っぽい色の瞳は俳優並みとはいかないまでも十分かっこいいといえた。彼は言葉や態度にユーモアがあり、いつもレディファーストで、彼のそんな物腰には翠でさえ魅力を感じ、いつの間にかグレゴリーに会うのが楽しみになっていた。

 ……彼は翠の前ではつねに立派なフランス人紳士を演じていたので彼女は彼のことを素敵な人だと思い実はアレな人間だとはバレずにすんでいた。


 その日もグレゴリーは翠と一緒に帰ろうと迎えにいったが、一足違いで翠はもう先に帰ってしまったとのことだった。グレゴリーはあわてて引き返し、翠のところへむかった。すると……先のほうに翠がいるのが見えた。

(あっ、ミドリいたー)グレゴリーは喜び、翠のもとへと向かうが、そのとき、翠の前に3人のタイの男たちがやってきて、その男たちからなにかいわれているのが目に入った。翠は困ってなにかを断っているようだ。グレゴリーは不審に思って彼らに近づいていった。すると、どうやら翠はタイ人どもからカツアゲされているようだった。グレゴリーはかけより、さっと翠の目の前に立った。「あっ」と翠は驚き、タイ人たちも突然現れた外国人にギョッとしていた。グレゴリーは鋭い目をして英語で威嚇の言葉をいうと、タイ人たちはあわてて逃げていった。


 そんなこともあったが、そうこうしているうちに、彼のタイでの滞在期間が終わろうとしていた。グレゴリーは帰国する前にあることを考えたが、やがて決意した。

 次のデートで彼は彼女にプロポーズしたのだった。

 が、彼女と自分はどことなく愛し合っている自信があったのだが、彼女には断られてしまった。ショックなグレゴリーだったが、彼女はまだボランティアの任期があるのでまだそうゆうことを考えられないという。そこで彼は無理に予定を引き延ばし、彼女のところに残ることにした(彼の実家は割と裕福だった)。近くにアパートを借りることにした。


 そしてまたデートをした2人。帰りに大雨に降られてしまった。ここからだとグレゴリーのアパートに近い、ということで、彼は彼女を部屋にさそった。2人、部屋で一緒にすごしていたが、やがて彼は彼女にキスをし、彼女はそのままムードに流され一夜をともにしてしまった。

 彼の身体は金髪の胸毛がいっぱいだが下はそれほど生えていなかった。

 彼女はこれまでだいぶ前に小さい日本人とちょっとしかした経験がなかったのでちょっと手間取った。最初は先のほうしか入らずすぐぬけてしまった。

 でもそのうちちゃんと入った。だんだん気持ちよくなって2人ともいった──。



 ◇ ◇ ◇



 その後、彼女はボランティアの任期をすぎ帰国して2人は結婚。まじめで働き者の翠に影響されてグレゴリーもちゃんと働くようになり、今は子供もでき、2人は日本で暮らしているそうだ。


Fin


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