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インビジブル転生記 〜透明人間になっちゃった?!〜  作者: まある・甲斐手・智四
1章〜ウド村にて〜
5/10

5話

もぎたてピーチパイくんは声を出す事は出来ますが、周りには聴こえません。その為彼の台詞には( )を使用しています。

 

 門の先にある光に包まれ、眼を開けると、そこには草木に囲まれた森林が広がっていた。川のせせらぎや鳥の鳴き声が聞こえる。 どうやらいつの間にか草葉の上で寝ていた様だ。


(ここは……。そうか、転生に成功したんだな、俺は。さてと身体はどうなっているのかな。)


 俺は異世界に来た実感と共に、自分の身体がどうなっているのかを確かめてみたくなった。透明人間になっているのか?それこそこの世界に来てからの最初の疑問だった。


(おお…本当に見えないぞ!!凄いぞこれ!!見えないけど腕とかに触る事は出来るのか?おお、触れた触れた!眼がある、耳がある、手がある…。足も…あるな。最後は頭と顔…ペタペタ…うん。ちゃんと揃ってる。一応人間としてのパーツは揃ってるみたいだな。ただ見えないだけで。それと……。んん、あーあー。やっぱり声は聞こえないな。喉が震えてるから出しているとは思うけど……。アイちゃんから聞いてたけど、何かしらの意思疎通の手段は欲しいよな。情報も聞けないし。)


 俺は今置かれている状況を理解し、これからどうするかを考える。とりあえず歩いてみるか。

 あてもなく森の中を彷徨っていると、見慣れないモノが眼に見えた。


「ギ、ギギィ!!」


 あれは……?ゴブリンなのか?しかも1体ない5体もいるぞ。棍棒持って辺りを警戒している。中には棍棒の先に血と思われる液体が付着していた。狩りの途中なのか?それにしても俺が見たマンガに出て来る奴と似てるな…。どれ、近づいてみよう。としたその時。


「ギィ!!ダ、ダレダ!!」


 ヤ、ヤベ!!気づかれたか?!直ぐに息を止める。落ち着け落ち着け。見えてない見えてない……。


「ミエナイ!デ、デモ、ニオイ、ス、スル!イル!」


 あちゃ〜、流石にニオイは気づかれたか〜あちゃ〜。オイオイオイ、ドンドン近づいてくるぞ!!


「コッチダ!」

「違ウ!コッチ!」

「オナカスイタ!クワセロ!クワセロ!」

「サガセ!ニオウ!ニオウ!」

「皆さん落ち着いてください。きっと内気であまり表に出られない、麗しい女性の方なのです。此処は紳士的な対応が求められる所ですよ?」


 ……1体ゴブリンとは思えない奴がいるぞ?やけに達観しているな。それに何故かフォーマルスーツを着こなしているし。こいつがリーダー格なのか?恐らく知能が高いんだろう。


「そして出来ることならば私が1番にヤらせてくださいね?女性の身体は久しく味わってないのですからグヘヘ。」


 前言撤回。やはりこいつもゴブリン脳だ。それよりもどうするこの状況。このままだと見つかってしまう。こんな早い場面でバレたくない。消えろ、消えろ、消えろーー。


「アレ?ニオイ、ナイ。」

「違ワナイ!ニゲタ!」

「オナカスイタ!クワセロ!クワセロ!」

「サガセ!ニオワナイ!ニオワナイ!」

「おやおや、残念ですね。久しぶりの女性の身体を味わいたかったのですが…。此処は撤収しましょう。集落に戻りますよ?お前達。」


 スーツゴブリンがそう促すと、他のゴブリンと共に森の中へと消えていった。


(はあ〜〜……。危なかった……。何がどうなったんだ……。)


 緊張して出てきた汗を拭う。汗もどうやら透明みたいだ。どうして助かったのかが、理解できなかった。すると


「うわあああああああああああ!!!!!!!!助けてくれえええええええええええええええええええ!!!!!!!」


 と森の奥から叫び声が聞こえてきた。


(人の声か?!行ってみるか!!)


 あまり大事にならないといいけど……。下手すると透明人間としての初陣かもしれないし、用心しなきゃな。とりあえず向かおう。


「うわあああああああああああ!!!」


(声が近いな。……うん。)


 叫び声に近づく中、ある1つの事に気が付いた。


(地面に足跡が付いてる。これは俺の足跡なのか?………今立っている所に付いてるんだから俺のに違いない。透明人間でも透明なだけで、そこには実体があるもんな。そうじゃなきゃ幽霊だぜ。)


 近くにある木の枝を手に取る。

(やはり触れるか。……!?おお!!木の枝も見えなくなったぞ!!これは大発見だ!!)

 どうやら手に触れた物も、透明になる力があるみたいだ。これは有効活用出来そうだな。おっと、それよりも早く行かなきゃ。


 暫く向かうと奥の方で大きな音が聞こえてきた。どうやら樹々が倒れた音らしい。そこから此方に向かって出てきたのは、1人の騎士風な青年と、その背には別の盗賊風なおっさんが意識がなくし、青年に背負われ逃げている途中の様だ。何から逃げているんだ…?

 そう考えた刹那ーー。


「グオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!」


 獣の咆哮が森中に木霊する。


「ひ、ひぃ!!来た!!」


 青年が怯えにより足がおぼつかなくなった。それにより躓き、その背には背負ったおっさん共々、地面に顔を付ける。丁度俺の目の前にふたりが転がってきたのは驚いたのだが、それよりも眼を疑う物が、俺の前に居た。


(なんだこりゃあ……?)


 そこにはゆうに3mを超す大熊が、涎を垂らしながら此方を睨みつけていたのだ。


(あ、これあかん奴や。)


「なんで死なないんだ!!ビックベアーは鼻が弱点だと聞いていたのに!!全然効かないじゃないか!!」


 青年がこの世の終わりだと言わんばかりに、恨み辛みを熊に向かって吐き出している。それを知って知らずが大熊はもう一度。


「グオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!」

 

 雄叫びを上げたのだ。それを聞いた騎士は、眼をひっくり返して気絶をする。


(これは……恐いな……。)


 誰にも届かない悲痛な声を出した俺は、この状況をどう打破するか考えていたが、熊の様子が少しおかしい。やたらと鼻をスンスンと鳴らしている。そしてニオイの在り処を見つけたのか、俺と眼が合う。実際ニオイは熊には俺の眼は見えていないだろうが、目線が丁度合っていた。


(まさか、またニオイで気づかれたのか?!ヤバイヤバイ!さっきのゴブリンは上手く巻けたのに、どうしたらいいんだ!!)


 と叫びながらも熊は此方に目線を向けて迫ってくる。


(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!消えてくれ消えてくれ消えてくれ消えてくれ消えてくれ消えてくれ消えてくれ消えてくれーー。)


 そう念じた後の熊の様子は変わった。どこかキョトンとしている。あったモノが無い。さっきはあったのに、今は無い。なんで?みたいな顔だ。


(上手くいったか?た、助かった……。でもこの状況で1人だけで逃げるというのはな……。)


 俺もまた元とはいえ人間だったのだ。モンスターとなった今では、人間だった頃の感情が失ったと聞かれるとNOだし、そこに倒れている2人をなんとかして助けたかった。理由は……。無い!


(目の前でムシャムシャと喰われたら、おかしくなっちゃうぜ。)


 そう熊に向かって言いながら、盗賊風のおっさんの腰に身につけている物に眼が行く。


(あれは、ナイフか?……よし丁度良い!試してみるか!)


 寝ているおっさんの腰からナイフを取り出して、透明化を行う。ナイフは透明になり、腰深く構える。熊は相変わらずキョトンとした顔で、周りをキョロキョロとさせていた。


(確かさっきの兄ちゃんが鼻が弱点だと言っていたが……通じるか?)


 ズンズンと見失った気配を探して、此方に向かって歩いてくる熊の鼻に、タイミング良くさせれるか……。やるしか無い。


(タイミングを合わせて……1、2の3!!!)


 透明化したナイフを、ドスで物を刺す時の様に体重を込めて穿つ!!!


「グオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!」


 森中にビックベアーの叫びが響き渡る。熊は理解出来ない。何故己が刺されたのか、刃は小さいが確実に急所を狙われた一撃。それを対処しようとするが、あまりの激痛にその場で、巨大な身体を揺らし倒れこんだ。


(勝った……のか…?し、死んだのか……?)


 鼻にナイフが刺さったまま倒れこんだ熊に近寄ると、どうやら気絶しているだけで、死んではいない様だ。危なかった……。喰われるかと思ったぜ……。

 とは言え、なんとかなったもんだなぁ。ニオイには気づかれたけど、念じたら見失っていた……。コレが加護の力、【気配察知遮断の才能】か。狙ってた通り便利な加護だが、使えるタイミングがよくわからん。一度研究をしてみるか。それよりも、

 

(こいつらを手当てしなければ。)









「う、うーん……。此処は……。そ、そうだ!!!ビックベアーに襲われて!!それで!!それ、で……。あれ?い、生きてる?!というか、え!!!ビックベアーが死んでる!!いや、気絶してるだけなのか?!それはそうと……このナイフは……、おい!サンバ!起きろサンバ!!」


「……ッ。ど、どうしたウィル……。あの化物はどうなった?死んだのか?それとも俺たちが死んで、天国で再会って奴か…イテテ。」


「馬鹿言え!!お前が倒したんじゃないのか?!ビックベアーの鼻に刺さってるこのナイフはお前のだろ?!アレだけあの化物の鼻に、剣やナイフで切りつけても、傷1つつかなかった鼻にナイフがこうも深く刺さるなんて…!!お前どんな技を使ったんだ?!教えろよ!!」


「そんな……馬鹿な……。俺のナイフが刺さっている。こ、これは俺じゃねえよウィル。正直この化物に出会った瞬間、天国の母ちゃんが見えたもんだ。そんな俺にこいつを倒せるだけの力があると思もうか?お前もそれが良く分かっているだろう……?」


「それは!そう、だけど。でもこの状況をみて取り乱さない冒険者はいるか?このビッグベアー。見た所C+……いやBクラスに届くモンスターだ。これはギルドが荒れるぞ。」


「そうだな。ならとっととこいつの首を切って殺してしまおう。早く村に戻って、ギルド長に報告だ。それと……できれば肩を貸してくれないか?どうも足をやられてしまってな。」

 

「当たり前だよ相棒。ほら肩貸せよ。よっと、それじゃ行くぜ。」


「ありがとうよ相棒。イテテ。」








(冒険者……ギルド、か。付いていくか!!)


他の加護についての情報が出てきました。次は初めて村回でございます。頭の中では色々と考えているのですが、それが出るのは何時になるやら。僕もわかりません。

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