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インビジブル転生記 〜透明人間になっちゃった?!〜  作者: まある・甲斐手・智四
0章〜プロローグ〜
4/10

4話〜プロローグ〜了〜

プロローグ終了話です。見てくださり有難う御座います。

 


 俺が意思を固めた言葉は、どうやらアイちゃんに深く届いた様だ。


「……。はい、まずトオルさんには残年ながら、剣武・魔術の才は一切ありません。そのまま現地にお送りしますと、1日も持たないでしょう。ですので、私からトオルさんに加護を授けます。その加護を持った状態で、《人界》のアルテナ王国に位置する、ウド村に行って頂きます。」


 先程の彼女とは打って違い、間伸びした話し方では無い。それ程に彼女と、そして俺にとって重要な事なのだろう。流石にあの話し方で続けられたら、話の腰が折れまくるに違いない。

 俺はその話に無言で頷き、話を促そうとしたが、そこで1つの疑問を思い出してきた。



「俺は役目を果たせば元の世界に戻れるのか?」



「それは安心してください。もし世界が救われたら、神王様が直々に元の世界にお返しするという流れになっております。」


「そうか……。」


 それを聞いてホッとするが、ただ元の世界に戻っても何時もの、変わり映えのしない生活が待っていると思うと、少し考える物があった。


「大体はわかった。それで加護と言うのはどういう物なんだ?」


 まさかチート能力とか貰えるんじゃね?俺TUEEEEEや無双展開があるに違いない!!


「はい。今からお見せするのは加護の一覧です。申し訳ありませんが、原則1つのみとさせて頂きます…。」


 アイちゃんの手にはいつの間にか大量のカードが浮かび上がる。どうやらこれを選ぶらしい。ええと……?【剣の才能:初級】【魔法の才能:初級】。なるほど、どれも見た感じは至って普通の加護の内容なんだな。他にはっと……。



【盾の才能:初級】

【ナイフの才能:初級】

【槍の才能:初級】

【魔物使いの才能:初級】

【気配察知遮断の才能】

  ・

  ・

  ・


「ええっと、アイちゃん。他にはないかな?もうちょっと良いのが欲しいんだけど。」


 一通り見て、あまりパッとした物が見当たらないから、アイちゃんに聞いてみたけど……。え、なんで悲しそうな顔してるの?


「……。申し訳ありませんトオルさん。今の私の神位ではこれが精一杯で……。」


 神位(しんい)とは神界での位置付けらしい。それによって貰える力や加護が変わってくるみたいだけど……。


「ええー……。これではちょっとな……。てかそもそもなんでアイちゃんはこの役目を引き受けたの?他には居なかったのか?」


 それを言うと更にアイちゃんの顔が暗くなり、


「本当は上司が行う予定だったのですが、いきなり呼び出されて「この案件はお前に任せる。これがお前のステップアップに繋がるからな!良い感じに頼むよ!」と言われて……。他の神は助けても貰えず、仕方なく……。ううっ。良い感じってなんですか……。どんな感じなんですか。」


 うわぁ……なんかブラックな職場だな。と思いつつ苦い顔をしていると、


「あ、ち、違いますよ!!仕方ないとはいえ、こうしてトオルさんともお会い出来たし、それと、ア、アイちゃんと呼んでもらえたし……。えへへ。」


 大丈夫気にしていないよ。

「お持ち帰りしても大丈夫ですか?」


「ト、トオルさん?!」


 やべ!本音と建前が逆になっちゃった!!だってしょうがないだろ!!めちゃんこ可愛いんだから!!!そりゃあお持ち帰りしたくなるさ!!ええ?!


「んん、ごめんごめん。でもそれは困ったな……。」


 正直に言うと、困っているのは本当である。カードを見た限り、どれも初級止まりである事がわかった。何枚かは初級とは書いて無い物が混じっていたが、どれも戦闘系に向いていない物だ。これから世界を救うのに初級止まりの加護を貰っても、何処まで通用出来るか分からなかったからだ。そう悩んでいるとアイちゃんから驚きの提案をしてきた。


「あ、あの!本来ならば加護は1つのみと定められていますが、その……。3つまでなら選んでも大丈夫ですよ!!わたしが頑張って上司を説得してみせますから!!」


「おおお!!!マジかアイちゃん!!!」


 これはまだ望みがあるぞ!!これを組み合わせれば、まだ何とかなるかもしれない。これは良く考えないと……。うん、これは……。


「【転生:平民】……?アイちゃん、これはなんだ?」


 転生と書かれたカードを手にしアイちゃんに聞いてみる。


「それはですね、向こうの世界に行く時に、今のトオルさんの姿のまま送る事ができるのですが、それとは別に、1度【死んで】から別の存在に生まれ直すカードですね。そうなると、元の世界に帰る時に元の身体に戻れるかは解りません……。」


 そうなのか、下手すると違う存在になって元の世界に戻る可能性があるという事か。……。まあ、戻れなくても、元の世界では友達や両親も居ないし、戻ったところで、あの生活を送るのはまっぴら御免だな。


「わかったよ。でもこの転生カードは面白そうだな。もう少し探してみよう……。」


 何分経ったのだろうか、悩みに悩んで選んだカードはこの3つだ。


【ナイフの才能:初級】

【気配察知遮断の才能】

【転生:モンスター(選択:可)】


 選んだカードを見たアイちゃんは、驚愕しているようだった。


「え……。【転生:モンスター】のカードを選んだのですか……?だとすると、元の世界でモンスターの姿で帰る事になるんですよ?!良いのですか?!」

 

「アイちゃんアイちゃん、落ち着いて。別にゴブリンやキメラになろうとしているわけじゃ無いんだ。俺がなりたいのはそう……。」


 この変てこな世界に来てから、考えた事があったのだ。俺が消えてしまったのでは無いかと。折角別の存在に生まれ直す事が出来るのなら、一層の事消えてしまえばいいのだ。



「俺がなりたいのは、【透明人間】だ。」




 少しの間が空いてアイちゃんが息を吐くように呟いた。


「透明人間……ですか?」


「ああそうだ。透明人間なら恐らくモンスターの部類に入るだろう?ならこれでいい。」


「え、ええ。透明人間ならこのカードの条件を満たしています。しかし、透明人間ですよ?!解りますか?!透明になるんですよ?!それがどういう事かわかっているんですか!」


 声を荒げるアイちゃんが続けてこう言う。


「透明になれば、誰にも見えないのですよ?!それと透明になるのは身体だけでは無いんですよ!声も!声も透明になって、貴方の言葉を聞く人がいなくなるんですよ?!貴方の事を見てくれる人がいなくなるんですよ?!そんなの!!そんなの……。寂しいじゃないですか……。」


 何、声も出せなくなるのか。それは……別に困らないか。元の世界ではあまり会話とかしていないし、今更多数の他人と喋る事は少し億劫だな。と考えていると、アイちゃんの目には涙を浮かべ肩で上下に動かしていた。そこまで声を荒げる事があるのか……。まさか。


「まさかアイちゃん。俺の事を思って……?」


(コクン)


 そうか……。心配して……くれているんだな。俺の境遇をわかってくれているからな。


「優しいな……。アイは。」


 俺は俺の為に泣いてくれる存在の頭に手を乗せ、優しく撫でる。


「大丈夫だよ。これでもちゃんと事を考えてこの3つの加護を貰おうとしてるんだ。少しは俺の事を信用してくれよ。神さま。」


「…………。【もぎたてピーチパイ】さん。」

 

「ねえ?!なんで今その名前を出してくるの?!やめて!!そこはトオルさんで返して!!折角のお涙頂戴の場面を返してよ!ねえ!!」


 もうめちゃくちゃだよ!!!なんであんなアカウント名にしたんだろ!!死にたい!!いや今から死ぬから大丈夫だけど!!

 …………。いや!大丈夫じゃないよ!!!【もぎたてピーチパイ】のアカウントが残ってるよ!!!俺が居なくなったら警察が動くに違い無い!!!きっとツブッターも覗かれる!!ああ!!こんな事になるならHDDぶっ壊せば良かった!!俺の果樹園!!


「何ブツブツ言っているかはわかりませんが、トオルさんの意思は伝わりました。この条件で送り致します。」


「わ、わかった……。それよりもどうやって俺は死ぬ事になるんだ?今から刺されるのか俺。怖いのは嫌よ??」


 せめて死ぬなら苦しまずに死にたい……。


「そんな事しませんよ?転移魔法の中に即死魔法も組み込まれています。向こうで起きれば加護が発動され、自動的に透明人間です。それと苦痛で苦しまずに死ねますよ、ヒッヒ、ヒヒヒ。」


 アイちゃん?神さまがそんな顔をしちゃいけませんよ?


「了解。それならもう大丈夫かな。特に元の世界でやる事は無いし。今から送ってくれ。」


 バイト先に辞める事の報告は別にいいか。特に思い入れも無いし。


「……わかりました。それでは今から転移魔法を行います。【ゲート】」


 俺の目の前に黒い門が突然現れる。門がひとりでに開き、その先には小さな光が見える。


「あそこの光に向かって歩き続けてください。そうすれば向こうの世界に辿り着けます。」


「そうか……。なあ、アイちゃんとは此処でお別れか?もう逢えないのか?」


 俺の事を友達と呼んでくれる神さまに会えなくなるのは、正直に嫌だった。が。


「安心してください。これでお別れではありません。いつかそう遠くない時にまたお会いする機会がありますので。」


「よかった……。なら良いんだ。ゴメンよなんかしんみりさせちゃって。」


「気にしないでください。そろそろ門がひとりでに閉まりますのでお早めにお願いしますね。」


「おっと、そうだったな。それじゃあ行ってくるよアイちゃん。」


「…………。はい〜。行ってらっしゃい〜。」

 

「フッ、その口調の方が可愛いよ…!また会おうねアイちゃん!その時はツブッターオフ会でもしようぜ!!」


「ッッ!!……はい…はい〜!!!」


 頬を赤らめたアイちゃんは、涙を浮かべ手を振って俺を見送る。

 俺は門を潜り、前を向きながらアイちゃんに見える様にサムズアップをし、その先の光に向かって、歩を進めた。



「さあて、いっちょ世界を救ってみるか!!!!」



 これが後に3界の歴史に伝わる【透明な勇者物語】の始まる事は、この時は誰も気づきはしなかった。



 プロローグ 〜終〜

プロローグ終了しました。次回から遂に【もぎたてピーチパイ】…もとい透明人間の暗躍が動き始めます。透明人間以外の加護にも、少し焦点を当てたお話になると思います。感想・ご指摘等受け付けております。バシバシお願いします。

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