3話 〜プロローグ〜
「はじめまして〜。私が神様です〜。」
「………………………え?」
え、誰この綺麗な女の子。長い金髪で、全てを包み込む様な圧倒的母性に満ち溢れた言動。そして何より……。
「あ〜、もうどこ見てるのですか〜?えっちぃのは関心しませんよ〜?」
「なんというけしからんおっぱ……んん!!これはマダム。この羽田 透。とんだ失礼を致しました。」
やっべー、あまりの豊満な果実に目が奪われちまったぜ……。てか谷間が見えてる!!隠して!!健全な男には毒ですよ毒!!本当にありがとうございます!!
出来る事なら揉ませてください!!
「何か不純な妄想をしているのが見え見えですよ〜。それよりもこうしてお逢いするのは初めてですね〜。いつもツブッターでお話ししている【アイ・アム・ゴット】です〜。気軽にアイとお呼びください〜。あ、先程電話でお話した口調で大丈夫ですよ〜。」
彼女の穏やかな雰囲気に包まれ、この非現実な世界に来た事による、不安や恐怖はいつのまにか俺の中から消えていた…。アイ……アイちゃんか……きゃわいいなおい。
「あ、ああ。こちらこそ初めまして、【もぎたてピーチパイ】こと羽田 透だ。俺の方もトオルでいい。自己紹介はともかくここは何処なんだ?さっきから歩き続けたが、人っ子1人も居なかったぞ?それと俺は何故ここにいるんだ?」
俺の質問に対して何故かアイちゃんが頬を染め、
「ち、ちゃん付けなんて……神界でもそのような呼び方されたこと無いのに……もうトオルさんったら…。」
急にクネクネし始めたぞ……?この人大丈夫なのか……?
「んっん……すみません〜取り乱しちゃいました〜。それでは質問にお答えしますね〜。まずここは何処かというと、見てお気付きだと思いますが、トオルさんの知っている日本ではありません〜。他にも、地球上で存在している国々でもありませんよ〜。トオルさんがいた世界とは違う……異世界ですね〜。電話でお話をした後、わたしが召喚魔法でお呼びしました〜。そしてここは《3界の狭間》と言って、トオルさんが居た世界で言うと、所謂空き地みたいな場所です〜。この場所は太古の昔に、我等神々が住まう【神界】。魔王が統括する【魔界】。そしてトオルさん達とは違う世界線の人々が集う【人界】の3界が、戦争を繰り広げた、歴史に名深い場所なのです〜。その時はまだわたしが創造されていなかったのですが、壮絶な戦いだったみたいですよ〜。その名残か、生命を帯びたものは一切存在しない、荒れ果てた土地になってしまったのです〜。」
……待て待て待て、何を言っているのか解らないぞ?!情報量が多すぎる?!電話した後に異世界だと?そんなの出会い厨でも出来ない芸当だぞ?!ーなんでいきなりそんな話になった?!思考が纏まらない、考えが追いつかない。戦争てなんだ?3界の狭間?神?魔王?違う世界線?わからない、わからない、わからないーー。
「……ああ〜ごめんなさい〜。急にこんな話を聞いても、直ぐには理解できないですよね〜。」
「あ、あたりまえだ!!こ、こんなの馬鹿げている!!異世界とか……どこの小説の話なんだよ!」
「ほら〜『事実は小説よりも奇なり』て言うじゃないですか〜。」
「どうなってんだよ……。」
アイちゃんの言葉に、俺はため息混じりに答えた。
「もういいや……考えるだけ無駄ってことか。流れに身をまかせるしかないよな。そういえば戦争て言ってたけど、何がキッカケで起こったんだ?」
「それはですね〜。この狭間は3界のどこにも所有されていない唯一の場所なのです〜。此処を取れば3界を統べることが出来るのらしいのですが……。わたしにもその訳は解らないのですよ〜。」
アイちゃんめっちゃ落ち込んでるじゃないか……なんか1回1回の行動がオーバーなんだな。可愛らしいけど。
「そうなのか。それならいいよ。……でなんで俺はここに居るのか説明してくれるか?」
最初にした質問を繰り返して聞いてみると、アイちゃんは忘れ物を思い出したかのように、ガバッと顔をあげて此方に近づいてくる。ち、近い近い!鼻息当たっちゃう!めっちゃ良い匂い!!おっぱい大きい!!ヤッター!!
そしてアイちゃんから思いがけない言葉が聞こえてくる。
「そうでした〜!!トオルさん!!貴方にはこの世界を救って欲しいのです〜!!」
え、
ええ、
えええ、
「ええええええええええええええええええええええええええええ!!!!?????」
お、俺が世界を救う?!嘘だろ?!
「な、なにかの間違いだよな?間違いだって言ってくれよアイちゃん?」
アイちゃんの両肩に手を掛け、思い切り揺さぶる。少し目を下に向けると、二つの熟した果実がブルンブルンと揺れているではないか。いや!それよりも大事な事が!
「本当です〜!トオルさんに世界を救って欲しいのです〜!それでわたしがお呼びしました〜!あと揺らさないで〜!」
目をぐるぐるに回したアイちゃんが制止を求めてくる。
「ハア、ハア、ハア……。冗談じゃないん……だな。しかし何でよりによって俺なんだ?アイちゃんがいる神界?に強い奴は沢山居るんじゃないのか?」
そうだなんで俺なんだ?魔法とか剣技のスキルとか皆無なんだぞ?あるとしたらバイトで身につけた筋肉しかない。
「ええっと〜……それはですね〜……あのですね……。」
アイちゃんが目を泳がせながら、歯切れの悪い返事をする。少し待って、答えを待つとするか。
「頼める人が……トオルさんしか居なかったのです。」
は?
「……え?いやいや、他の神とかに頼めば「トオルさんしか!!!!友達が居ないんです!!!!!!!」」
………………ええ〜……。マジで言ってるのこの神様……。流石に友達が居ないなんてそんな馬鹿n「うう……うううっ……」「ゴメンね?!泣かないで?!ねえ?!」
あらやだ〜。この子マジで友達がいないっぽいわ〜あちゃ〜。
「神界の……ひっぐ……同期と部下達は皆いぞがしいからっで、お、お母様にも、づいできてって、うぐ、お願いしたのに、そんなの1人でお願いしなざいって、ダメだって、うう、うええええええーーーーんんん!!!!」
……本格的に泣き出しちゃったよ。俺だって泣きたいのに。それにしても一気に見た目と中身とのギャップが激しく違って来たぞ。
この子も……1人、なんだな。妙な親近感が湧いてきた……。そういえばツブッターでのアイちゃんのフォロワー数。フォロー数:1000人に対して、フォロワー数:3人だもんな……。俺以外のアカウントも、何やら如何わしい破廉恥なアカウントだし……。まさかリアルとネットでも友達が居ないなんて……。
「〜〜!わかったよ!わかったわかった!!世界救う!!救うからアイちゃん泣き止んで!!!」
最終的には折れた。こんな可愛い女の子の泣いてる姿は見たくないし、何よりあの神さまだからな。俺の行き場の無い愚痴や、これからの人生について、一緒に考えてくれた。アイちゃんが居なければ俺はどうなっていたか解らない。そんな恩人であるアイちゃんの頼みを断るなんて、どうしても出来なかった。
「うう、ありがとうごじゃいます……。」
なんとか泣き止んだアイちゃんに向かって、俺は意思を固めこう問いた。
「それで俺はまずどうすればいい。」
多分次回でプロローグ部が終わります。