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Saki & Koshi  作者: ゆいき
それぞれの結末
144/176

形勢逆転

グランディオンは怪しげな男たちを引き連れながらこっちへ走って来るサキに怒号を発した。


「自分で蒔いた厄介ごとなら受け付けんぞ!!!」

「こいつらは中央塔から出てきた奴らだ!!もれなく薬漬けだぜ!!!」


サキはグランの元に辿り着くと思い切り土をかいて止まった。


「ザリーガはどこにまだこんな人数を隠していたというのだ!!」

「こいつはら反社会組織ダブルフォークだ!!あの野郎随分悪どい権力者と仲良しみたいだぜ!!」

「ダブルフォークだと!?」

「くるぜ!!」


サキは男たちを振り返ると大音量で叫んだ。


「野郎ども!!昨日と同じゾンビ集団が相手だ!!気合を入れろ!!」


言い終わると先頭を切って敵に突っ込んで行く。

グランは大きな刃物を構えるとこちらも大声で吠えた。


「このままサキに続け!!!遅れをとるなよ!!!」


中央塔から出て来たのはおよそ百人程度だ。


サキは三人の男を同時に吹き飛ばすと休む間も無くその二本のナイフを存分に振るった。

グランは大きな刃物にものを言わせて襲い来る男の首を一太刀で落とす。

サキに続く男たちも昨日とは違い果敢に攻めたてていた。


「昨日話した対策通り三人でグループを組め!!相手は脳みその足りない化け物だ!!二人で引きつけ一人が後ろからとどめを刺せ!!!」


サキの声に男たちがさっと動く。

足を使い、頭を使い、とどめを刺す。

この流れるような動きは思った以上に功をなした。

じわじわと数が減るのを見たダニーは踵を返した。


「まずいじゃないか。しょうがない、あまり解放したくなかったけどゼプの犬どもを使うか」


ダニーはベルを懐にしまうと中央塔のもう一つの扉のロックを外しにかかった。


「駄目ですよダニー。僕がいないのに彼らを解放しちゃ」

「ゼプ!!!どこにいたんだよこんな時に!!」


ゼプは中央塔の側面の階段からゆったりと降り立つと戦地を見た。


「意外と苦戦してますね。彼らだけでひねり潰せると思ったのに」

「悠長なこと言ってる場合か!!お前の凶暴な犬を使わせてもらうぞ」


ゼプは不気味な笑みを浮かべるとゆっくりと頷いた。


「どうぞ。準備だけはできていますよ。彼らは今、死ぬほど薬を欲しているはずですからね」


ダニーは顔を引きつらせながらも最後のロックを外した。

サキは敵をあらかた沈めたのを確認するとそのまま前進した。


「このまま一気に攻め込みザリーガを炙り出す!!かたがついた者から俺について来い!!」


勇ましく煽りたてるが、サキは嫌な予感が拭えなかった。


「アオイ…」


サキはある程度この状況も算段に入れていた。

この場の切り札としていたのが、まさに昨日の夜現れたアオイだったのだ。


いない者を当てにするわけにもいかず、サキは慎重に辺りを見渡しながら南の塔を目指した。


異変が起こったのは中央塔を横切ろうとした時だ。

鉄の扉が開くような音が鳴り響いたかと思うと、人のものとは思えない絶叫が空気を震わせた。


「な、なんだ!?」

「猛獣か!?」

「あそこだ!!あの扉からまた出て来やがった!!!」


男たちは新たに出てきた敵に騒然とした。

何せその数はどう見ても百以上、いや百五十以上はいる。

しかもなんだか様子が尋常ではない。


「なんだよ…あれ…」


近付いて来る敵は、もはや人とは言い難かった。

二本足で走っているのかどうかも怪しい獣のような体勢で転がるようにやってくる。

その叫び声は異常な奇声で、なにより唾液を垂らしながら白目を剥き出しにしたその顔がもう人とは言えない。

サキは痛烈に舌打ちをすると後ろを振り返った。


「グランディオン!!カヲル!!三部に分散してあいつらを囲みながら削れ!!!」


グランは即座に西に何人かを連れて別れた。最後尾を固く守っていたカヲルもそれを見ると十数人を連れて東へ逸れる。

人数は圧倒的にこちらが少ない。

それも今さっき一戦を交えたばかりだ。

それでもサキは微塵も怯みはしなかった。


自ら化け物に突撃すると少しも衰えない闘志で道を切り開く。

皆はその姿に励まされ粘りに粘ったが、倒しても倒してもきりのない化け物はまだまだ襲いかかってくる。

一人、また一人と化け物に倒れて行く姿に、男たちは絶望にくれ始めた。


「もう、ダメだ!!!いくらなんでもこれじゃあ皆こいつらに食われて終いだ!!」

「サキさん!!!引きましょう!!!」


サキは男たちの悲鳴に舌打ちをした。


「ここまでか…!?」


散々浴びた返り血を拭うと、撤退の合図を送るために振り返る。

まさにその時、こっちに向かい来ていた集団がサキの元にたどり着いた。


「こんな人数で何を粘っとんねん!!!あかん思ったらもっと早く引かんかいサキ!!!」

「M-A!!!」


集団の先頭に立つM-Aが後ろを振り返ると大音量で喝を入れた。


「お前ら!!!あれが昨日言うてた薬漬けの化け物集団や!!!東中西の連中かて負けずに戦いぬいとんねん!!南区の意地を存分に見せたれや!!!」


現れた集団は雄叫びを上げるとM-Aを左右から抜き猛突進を始めた。

その別れた集団の先頭にいるのはファイアとエンビエンスだ。


「ザリーガぁ!!!この南区を吸い尽くす害虫が!!!ここから叩き出してやる!!」

「わざわざ南区に流れ着いたのにお前らのせいでただのチンピラ以下だぜ!!俺がこの手で南区を変えてやるよ!!!」


その勢いのまま化け物集団に踊りかかる。

その数およそ二百人。

グランはこの機に男たちに喝を入れ直した。


「この流れが読めぬほどお前たちは愚かではないはずだ!!!気合を入れ直せ!!!」


カヲルも仲間を叱咤激励する。


「決着まであと僅かだ!!!最後まで腹をくくれ!!!」


怖気付いていた男たちは水を得た魚のようにまた前へ足を踏み出し始めた。

M-Aはサキの元まで近付くと敵を殴り倒しながら叫んだ。


「悪いなサキ!!遅なった!!!」

「全くだ!!!だがこの人数には驚いた、ぜっ!!!」


下からナイフを力任せに閃かせながらサキは不敵に笑った。

M-Aは発狂しながら襲い来る敵を上段蹴りで沈めると、こちらもにやりと笑った。


「だいぶ口説き落としたんやぞ!!!思ったよりも集まりすぎて逆に着くんが遅なったわ!!だがここを目指してたんは俺らだけやないぞ!!」


M-Aが指を差したのは最後尾の集団だ。

サキは目を凝らすと歓喜の声をあげた。


「ユカン!!!」


そこにユカンが率いる六十人近くの男たちがいた。


「あいつら昨日の薬を打たれた連中やねんてなぁ!!ザリーガに裏切られたとかでえらい怒っとったぞ!!」

「ユカンなら上手いこと味方に引き入れてくれると思っていたが、まさかもう戦地に駆けつけてくるなんてな!!!」


サキが大きくナイフを振りかぶり合図を送ると、遠くからユカンも腕を大きく振った。


「よし!!これで形勢は逆転するぞ!!!ここを持ちこたえればラストステージだ!!」


サキは左右の敵をなぎ払いながら壮絶に笑った。


「待ってろよザリーガ。どうやら今日お前の首までこの刃物が届くらしいぜ」


化け物が相手でもこちらの手勢は充分揃った。

誰もがこのまま勝利への道が開けたと確信していた。

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