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Saki & Koshi  作者: ゆいき
それぞれの結末
141/176

赤い粉

ウェンズとユーズは先頭を走るジーバルのハンドルを狙いすまし反撃をした。

コントロールさえ乱してしまえば、バイクから転がり落とせる。


だが流石にジーバルもやすやすとは攻撃を喰らわない。

ユーズの手前まで来ると思い切りハンドルを切りその分厚いタイヤに引きずり込もうとした。


「ユーズ!!」

「くらってねぇよ!!余所見するなウェンズ!!」


ジーバルは高らかに笑うと豪快にバイクを転がしながら仲間たちに言った。


「こいつらの相手は俺がしてやる!!お前ら、門の向こうの蟻に駆除剤でも蒔いてこい!!」


バイクに乗った男たちが二人をすり抜けて門に向かう。


「リーダー!!」

「ほらほら、よそ見してる場合じゃないぜ?」


ジーバルは再びユーズに襲いかかった。

何度もユーズにぶつかり、その巨大なマシンで嬲り殺すつもりだ。


「ユーズ!!」


ウェンズは側面からジーバルに駆け寄ると、思い切り振りかぶり手にしていたナイフを投げ放った。


「ぐが!?…貴様!!」


右腕に刺さったウェンズのナイフを抜くと、ジーバルは血走った目で狙いを変えた。


「蟻の分際で噛み付くとは生意気な野郎だ!!!」


今度は嬲るどころではなく、即死させる勢いでウェンズに突っ込んでくる。


ウェンズは迫り来る大型マシンから目を逸らさずにらみ据えると、極限の中で笑った。


「今度こそお前の所へ行けそうだなサーズ」


無意識に声に出すと、咆哮を上げてジーバルに突っ込んで行く。


「ウェンズ駄目だ!!!」


ユーズが絶叫する。

バイクがウェンズに覆いかぶさるように前輪を上げた。

スローモーションのように見えたその瞬間、凄まじい音を立てて大きなマシンが横に吹っ飛んだ。

ウェンズは何が起きたのか分からず立ちすくんだ。


「リーダー!!!」


再びユーズの叫びが響き渡る。

アークルは物凄い勢いでバイクを走らせ、そのままジーバルの側面に突っ込んだのだ。


ウェンズしか眼中になかったジーバルはたまらずバイクごと投げ出された。

だがアークルも何の体制も整えずにスピードのままぶつけたのだ。

その体は衝撃を吸収できずに地面の上に叩きつけられた。


「アークル!!!」


ウェンズは急いでアークルに走り寄った。


「アークル!!お前がなぜ…!!俺なんかの為に!!」


アークルは動かない体を起こしながらウェンズを睨んだ。


「俺に構う暇があったら、ジーバルにとどめを刺せ!!!」


ユーズは動けないウェンズの代わりに、自分の頬を殴りつけると無理矢理アークルから視線を逸らしてジーバルの元へ走った。


「アークル!!アークル!!」


ウェンズは必死で頭から血を流すアークルにすがりつく。

彼にとってはアークルは幼い頃からずっと共にいる、たった一人の兄弟のようなものだ。


アークルはなんとか座り込むと手にした布を頭に巻き、ウェンズを見上げた。


「情けない顔をするなウェンズ。この俺がこれしきで動けなくなるとでも思うか?

俺もお前も、サーズの元へ行くにはまだ早い」


アークルは無理矢理立ち上がったが、やはりすぐに膝をつく。

ウェンズは迷わずアークルに肩を貸した。


「ぐぁっ!!何を!!!」


ユーズの悲鳴が横から上がる。

アークルとウェンズは弾けるようにそっちを見た。

そこにはのたうちまわるユーズと、ゆらりと立ち上がるジーバルの姿があった。


「お前ら…ぶち殺してやる!!」


手に小袋とナイフを持ちながら、ジーバルはふらふらと近付いて来た。


「アークル!!」

「アークル!!こっちだ!!」


青年たちが数人、こっちに気付きバイクで走り寄る。

そのうちの一台がアークルとウェンズを乗せると、残りの五台がジーバルに突撃した。


「お前たち!!迂闊に近寄るな!!」


アークルは声を上げたが遅かった。

ジーバルはバイクの青年が近付くとその手の小袋を投げつけた。

赤い粉が舞う度に、青年たちはバイクから投げ出された。


「くそっ…厄介な粉だ!!」

「アークル、ジーバルから一旦離れよう!!」


青年は叫ぶように言うと、そのまま門前に向けてバイクを走らせた。

そこではバイク同士、青年たちとジーバルの手下たちの激しい追い回し合いになっていた。

青年たちはその数を頼みに、なんとかジーバルの仲間が攻撃する隙を作らないようにと追いかけていた。

だがどちらかというと余裕を見せているのは男たちの方だ。


「ほらほら、しっかりついてこいよぉ!」

「もっと楽しませろよつまんねーな」

「そろそろ終わりにするか?」


挑発をし始めたかと思うと、揃って同じジーバルのいる方向に走り出す。

青年たちは構わずその後ろを走った。


「行くな!!罠だ!!!」


叫んだのは今門をくぐり抜け走り込んできたサキだ。

だが青年たちはすっかり興奮状態に陥り、誰もその声に気付かなかった。


男たちは真っ直ぐ追いかけてくる青年の集団を振り返ると、袋の中に入っている大量の赤い粉をばら撒いた。

サキは反射的に振り返ると右側を指差した。


「全員風上へ!!!巻き込まれるぞ!!!」


赤い粉は舞い上がる風に乗り空気をその色に染めた。

アークル達を乗せた青年は、その光景に驚愕した。

目の前ではジーバルの仲間達がこちらへ向かって走ってくる。

その後ろでは空気が赤く染まり、更にその後ろでは青年達が苦しみながらバイクから転がり落ちて行く。

顔に布を当てていたのなんて始めの方だけで、青年たちは煩わしいそれを早々に外していたのだ。


「なんだ…なんだよあれ…」

「代われ!!俺がハンドルを取る!!」


ウェンズは青年にアークルを預けると、風上に向けてハンドルを切った。

その隣を男たちが嘲笑いながらすれ違って行く。

ウェンズは大きく回り込むとサキの元に向かった。


「アークル!!どうする!?このまま皆を放って逃げることは出来ないぞ!?」

「このままサキと合流する。あいつは逃げる選択肢など選ばないはずだ」


顔を上げると皆を誘導するサキの姿が目に入る。


サキは逃げることなど選ばない。

その通りだ。

この時点でサキは既にこの状況を打破するために仕掛け始めていた。

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