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Saki & Koshi  作者: ゆいき
それぞれの結末
129/176

ゾンビ対策

サキは荒い呼吸を一度整えると戦地を見渡した。


「ジーバル!!」


一人バイクに跨る男を見つけると、中央区の獅子は猛進した。


「降りて来い!!俺が相手だ!!」


ジーバルはサキが近付くとわざと土煙を立ててバイクを滑らせた。


「お前とさしでやるほど俺は馬鹿じゃないぜ。第二地域はくれてやる。俺の首を取りたければ第四地域まで来るんだな」


ジーバルは笑い声を立てるとそのまま走り去って行った。


「またお前は仲間を切り捨てる気か!!?こいつらのことを何だと思ってやがる!!」


サキは本気で腹を立てるとその背中に怒声を浴びせた。

土埃と乱闘で、ジーバルが去ったことに誰も気付いていない。

命令がない限り、ジーバルの手下達は死ぬまで向かって来るだろう。


「途中で降伏させないとお互いに死者が増えるだけだ…。何か方法はないか…」


サキは視線を巡らすと、第一地域からこちらへ向かってくる東区の者たちに目が止まった。


「グランディオン!!」


サキが大声で叫ぶと、乱闘に迷いが走った。


「ぐ…グランディオン!?」

「ジーバルさん!!?ジーバルさんはどこだ!?」


サキはすかさず男達に向き直った。


「ジーバルは戦況が不利だと悟り一人戻った!!お前たち!!あそこに見えるはグランディオン率いる四百人の猛者共だ!!お前達に新たに奴らを相手する度胸はあるか!!」


それは絶妙な呼吸だった。

ジーバルと共に乗り込んできていた男たちは揃って青くなると明らかに戦意を喪失した。

サキは畳み掛けるように叫んだ。


「ジーバルに捨てられたお前らに用はない!!さっさとここから去れ!!次に俺の前に現れた日には容赦はしない!!」


獅子の咆哮に、ついに男たちは耐え切れなくなった。

転がるように駆け出すと、散り散りに姿を消していく。

ようやくついた決着に、サキは軽く息を吐くとナイフをしまった。

グランはサキの元に辿り着くと辺りを見回した。


「片付いたようだな」

「あぁ、とりあえずな。いいタイミングで来てくれたよ。虎の威を借りたおかげで余計な戦力を減らさずに済んだ」


サキは地面に座り込むと深く息を吸ってからゆっくり吐いた。


「…ジーバルを取り逃がした。あいつら…すぐに仲間を切り捨てて行きやがる。あの引きようは少し気になるな。あっさりしすぎてるというか…」

「なに、それがザリーガのスタイルなんだろう。今日はここまでだな。こっちの被害も大きそうだ」

「あぁ、じきに日も暮れてくる。夜までに第二地域を占拠して今夜はここで明日に備えよう」


グランは東区の者たちに寝ぐらの確保と怪我人の収容を命じた。

第二地域は既にどこももぬけの殻だった。

サキは適当な居住地に入るとその周りをがっちり固めさせた。

深夜に差し掛かるとサキはユカンとロバン、そしてグランディオンを呼んだ。


「疲れてるところ悪いな。明日のことについて話し合いをと思ってな」


サキが切り出すとグランは喉で笑った。


「俺たちよりお前の方が休息が必要だろう」


サキは苦笑すると足を組んだ。


「気にするなよ。俺はタフだからな」


普段ならユカンもサキとはよく喋るが、なにせ隣にはグランディオンがいる。

ユカンは冷や汗をかきながら黙って聞いていた。


「明日の相手だが、もし本当に薬を使った奴らが現れたら皆に動揺が走ると思う。

なにせ相手は切っても打っても平然と襲い掛かってくるゾンビみたいなもんだからな」

「くすり…?」


ロバンが眉を寄せるとサキは一つ頷いた。


「そうだ。アオイの調査によるとかなりやばい新種の薬だそうだ」


まさか自分の身を持って確かめていたとは言えず、サキは微妙な顔をして言った。


「まぁとにかく問題はその数だ。一体何人いるのか検討がつかない」


サキは目を閉じて今日一日を振り返った。


「出だしで百…いや二百は見たな。第一地域でも男たちだけで二百弱、あとはジーバルの奴らがざっと三百弱くらいか…」


グランは腕を組むと低い声で言った。


「となると、第四地域と単純に分けても二百弱はそのゾンビ共がいるってわけか」


ユカンとロバンは揃って顔をしかめた。

こちらは東区だけでも四百、決して負ける数字ではないがその後も第四地域が控えているとなるとあまり楽観視は出来ない。


皆揃って難しい顔をしていたが、サキはふと顔を上げるとユカンを見た。


「ユカン、転がっていた大量のバイクは今どうなってる?」


ユカンはサキを見ると顎に手を添えた。


「そこまでは手が回らなかったからな。まだ放置されたままじゃないか」


サキはいたずらを思いついたようににやりと笑った。


「ちょうどいい。明日それを使わせてもらうか」


ユカンは目を見張った。


「サキさん、だがあれは見ての通りいかれたバイクばかりだ。とても使える代物じゃない」


「分かってるって。それでいいんだ。それにしても何故あんなにバイクが一斉に壊れたのかは分かったのか?」


ロバンは目を輝かせると身を乗り出した。


「いやあれは、さすがはサキさんだぜ!!皆言ってたぜ!?やっぱりあんたにゃ神風が吹いてるって!!」


サキは肩をすくめると首を振った。


「そんないいもん持ってるなら、俺は今こんな所に居やしない…」


思わぬ沈痛な反応に、ユカンは首を傾げた。


ずっと黙っていたグランは突然喉の奥で笑い出すとサキを見た。


「なるほど、悪くない策だ」


サキは一瞬見せた暗い顔をさっと消すと、にやりと笑った。


「だろ?ユカン、ロバン。何人か元気そうな奴を集めてくれ。ちょっと手伝って欲しいんだ」

「今から!?」


サキは立ち上がると腰に手を置いた。


「当たり前だろ?明日の戦いの準備をするんだから」


訝しむ二人を促すと、サキは二十人ほど連れて昼の戦地後へ入って行った。

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