一般市街での事件
ララージュは一般市街を観察しながらのんびりと買い物をしていた。
「いつ見ても動きのある街だな。また店が色々変わってやがる。この店は昔から潰れないな…老舗の必勝法はなんだろうか…」
一人ぶつぶつと店を眺めていると、遠くの方から悲鳴が聞こえていた。
「大変だ!!ボイルエッグ氏の屋敷がテロリストに狙われたぞ!!」
「まさかあの人が!?なぜ…!?」
ざわざわと揺れる人々をかき分けて行くと、確かに屋敷の方から煙が上がっているのが見えた。
「うがっ…!?え、えらいこっちゃないか!!」
ララはすぐに走り出すと屋敷を目指した。
近付くとそこは人と護衛隊でごった返していた。
ララは注意深く耳を傾けながら前へ進んだ。
「ボイルエッグさんは人に恨まれるような御人じゃないはずだ」
「テロリストだって?やはり市長選が絡んでそうだな」
「…となると怪しいのはハードハム氏か…?」
「いや確かにハードハムさんは後ろ暗い連中と関わりがあると一時噂になったが、いくらなんでも…」
ざわざわと噂が飛び交う中、渦中のボイルエッグがバルコニーに姿を現した。
「皆、心配かけてすまない。私ならこの通り無事だ」
堂々と立つ姿はいつも演説する時と全く変わらない。
だがその頭には痛々しい包帯が巻かれていた。
「これは最近テロリスト共もすっかり影を潜めていた為に油断した私の落ち度だ。
私はこんなことに屈したりはしない。
テロリスト共もバカなことをしたものだ。
これで私が街をおさめた時には草の根を分けてでも彼らを壊滅させなければならなくなった」
朗らかに言い放つと、民衆から笑いと歓声が起こった。
「期待してるぞボイルエッグさん!!」
「俺、ハードハム氏にすると決めていたがあんたに傾いちまったよ!!」
ララは感心するとその場を離れた。
「この状況を利用できるとは大した男だな。それにしてもハードハムか…詳しく調べてみる必要がありそうだな」
ノートになにやらメモをとりながらララは再び街を歩き出した。
「おいララージュ」
「うぐぁぁぁ!!びっくりしたぁ!!ぼ、ボス!!」
ビオラは店と店の間から手招きをした。
ララは辺りをきょろきょろと見回してからボスに近付く。
「お前も見てきたか?」
「ボイルエッグ氏の家すか?行きましたよ」
「で?収穫は」
「とりあえずハードハム氏を調べようと思ってます」
ビオラは手持ちのカバンでララの頭をはたいた。
「この単純馬鹿が!!先にボイルエッグをマークしろっ!!どこをどういう風に、何で襲撃されたのか調べるんだ」
「は…え!?あ、はい…」
今一首を傾げるララの襟首を掴むと、ビオラは凄んで言った。
「表面ばかり調べてもしょーがねーだろ!!ハードハムが絡んでるならボイルエッグの襲撃事件を調べてりゃそのうち辿り着くだろうが」
ララははたと手を打つとこくこくと頷いた。
「確かに…その通りっす!!分かりました。あ、ボス、これ…」
ララが雑貨の紙袋を渡すと、ビオラはそれをひったくった。
「…そんなに必要な物なんですか?その茶葉。わざわざあの雑貨店に量り売りで購入するなんて…。何か怪しいものとでも混ぜて使うんですかい?」
「お前は知らなくていいことだ。
お前、喋り過ぎという大きな欠点があるなララージュ。…死たくなけりゃその欠点を克服しろっ」
ララはぴたりと口を塞ぐと、冷や汗をかきながらボスを横目で見た。
ビオラはララの背中を思い切り叩くと苛立たし気に言った。
「さぁ、ぼやぼやしてんと調べに行け!!薬が絡んでるかもしれんのだろ!?」
ララージュは痛む背中を手の甲でさすりながらも、すぐにボイルエッグの屋敷に引き返して行った。