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継ぎました



 この世界には、人間とは異なる種族がいる。人間の姿と酷使した魔物。あたしはその魔物の頂点に立つ魔王の娘として生まれた。

人間と魔物は相容れない関係らしく、長年敵対している。

魔物は魔術で人間を凌駕するが滅ぼすことは望まなかった。例え人間が忌み嫌い我々を滅ぼそうとしても、危害を加えてくる対象と捉えるだけで手出しをすることなく今に至る。

魔術で凌駕するからこそ、人間は魔物を危険視しているのだ。人間の存亡を脅かす対象と捉えられている。

 あたしが生まれる前のこと。

人間達は神様からお告げをいただいたそうだ。


未来、世界を救う勇者が現れる。


とのことだ。

魔王を勇者が倒すのはセオリー。

つまり未来は勇者に倒されることに決まっているわけだ。

生まれ変わって早々、死因がわかっちゃう人生って、なにそれホラー?

だから逃げ出していたが、あまりにも魔王である父親が怖すぎたので、逃げることすら敵わなくなった。

ところで神様に会えるかな?殴ってもいいかな?


「お前は魔物の王族だ。魔物達を正しい方へと導く存在が必要なのだ、セレイナ。私達がその存在」


魔物が人間を滅ぼさないのは、魔王が決めたことだからだ。


「母はいつか人間と和解する日を願い祈っていた…これは母の願いを叶えるためでもある」


憂いた瞳で見つめる父は、あたしの小さな手を握り締めた。

あたしの母で彼の妻は、あたしを産んだ三年後に病死。きっと何処かでうぶ声を上げているはずだ。


「勇者が現れたら私が相手をして息の根を止める。そうすれば人間達は思い知るだろう…我々を全滅できないと。その時、人間と和解できるはずだ」


 父と母の理想がずれてると思う。

母のはもうちょっと平和的に穏やかな和解だと思うんだ、お父様。

お父様のは恐怖による完全支配だと思うんだ、お父様。

思っても口にはできなかった。

 魔王である彼が怖いという理由もあったが、人間の姿で何度も人間の王の元に足を運び和解を申し込んだことを知っているからだ。その度襲撃を食らっても皆殺しにせずに、無傷で父親は帰ってきてきた。

 こちらにその気がないのに、人間達が一方的に牙を向けてくるのだ。全滅しないだけ有り難く思ってほしい。

 勇者の登場はこちらとてチャンスだった。

人間は勇者を最後の希望とばかり祭り上げる気でいるらしい。その最後の希望を打ち砕けば、戦意は喪失するはずだと父親は考えている。

敵陣に乗り込んで集中放火を受けたにも関わらず、無傷で舞い戻った父親ならば、神様にずるすぎるオプションもといチートを貰った勇者も容易く勝てないはずだ。

 細やかだが、勇者に滅ぼされる末路を回避できるならば、あたしは父親の援護が出来るよう魔術を教わることにした。

殺しに来るなら、殺されても文句は言えないはずだ。

勇者は生け贄となるが、哀れに思いつつも魔王を継ぐ勉強に励んだ。父親は喜んでくれた。

 魔王とは、魔物の中で一番強い者のこと。最も強い者の意向に従うのが魔物のルール。

人間を滅ぼしたいと言う魔物がいるならば、先ずは魔王に挑み勝ち、新たな魔王になって人間を滅ぼせと命令すればいい。

強い者が支配する。そんな単純なシステム。

 だからあたしは歴代最強と謳われる父親を越さなければいけなかった。

 父親・ジゼルグが魔王になった理由は、あたしの母親・セレーンの願いがあったからだという。

良心の塊であるセレーンは人間との共存を望んだ。愛妻家のジゼルグは前魔王を倒して、自ら魔王になり人間を滅ぼさない意向を魔物全員に告げた。

あとは人間と和解するだけだったが、叶わないままセレーンは病死。

亡くなった今でも、ジゼルグは叶えるため動いている。

 一途な人だ。

ジゼルグのセレーンへの愛で、人間は生かされていることを知らせてやりたいくらい。

 朧気な記憶にしか残っていない母親の願いを、あたしも叶えたいと思った。

勇者の相手を父親がして倒した後、あたしが父親を倒して魔王を継ぐ。

継いだ後はあたしの好きにしていいとのこと。

人間と共存して、平和に過ごそう。

 それだけを願い、家臣達に鍛えてもらった最中に、父親は爆弾発言をした。


「愛する人を見付けた」


 あんなに一途だった父親にあっさり、次の人が見付かってしまったのだ。

恋に落ちたら一直線な父親は、既にプロポーズをしてイエスの返事を貰ったらしい。

え?継母?なんで事後報告なの?あたし娘だよね?

 更に更に驚くべきことに、相手は人間だった。

しかもしかも、自分が魔物だと明かしていないと言う。

魔術で簡単に人間の姿になれるのだ。その姿でしか会っていなく、相手は人間だと思っている。

人間の大陸と魔物の大陸と二つに分かれているが、境界線は曖昧。

その曖昧な境界線付近に暮らす女性に、人間の王の元へ足を運ぶ途中で一目惚れしたらしい。

 父親の決定に逆らえないので、とりあえず紹介したいと言われたので、連れていかれ会ってみた。

ジゼルグに劣らない美しさの持ち主。ジゼルグが天使ならば、彼女は女神様ではないかと思うぐらい容姿端麗。しかも純粋そのものの性格の持ち主だった。


「父をよろしくお願いします」


としか言えなかった。

魔王なんで別れてください、なんて言えなかった。

再婚をきっかけに、ジゼルグは魔王を引退。



 ───魔王の最後の命令により、十四歳のあたしは魔王となりました。







父親であり、前魔王は

愛妻家です。


娘も大事に思っておりますよ。



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