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お姫様でも



 死んだ後はどうなるのか、考えたことあるだろうか?

考えたことが、あっただろうか?

 学校に行こうと家を出て、いつも通りの道を歩いていた。信号待ちして立っていたら、ハンドル操作でも誤ったのか、車が一台突っ込んできた。

反応なんて出来ないまま、衝撃をくらい、あたしの視界は真っ暗になったのだ。

 十六年のあたしの人生は、終わってしまった。

それが恋した矢先だったのは、悔いる。どうせなら、告白した後だとか恋をする前がよかった。

なんてしょうもないことを考えてしまう。


 ───前世の記憶を引き摺ったまま、生まれ変わってしまうくらいならば。


普通の女子高生が、ある日車に轢かれて死にました、バットエンド。にはならず、気が付けばあたしは新しく生まれ変わっていた。

どうやら魂は存在して、リサイクルするようにまた生まれるらしい。きっと普通なら前世の記憶なんて消えているはずだが、あたしは恋心のせいか記憶残ってしまった。

 それだけでも今後の人生に支障が出るというのに、あたしが生まれ変わった場所は地球とは違う星に生まれたようだ。

詳しくはわからないが、推測するに世界は幾つもあってでも魂のループは共通しているのだろう。

知らないことばかりあるんだなぁ、と思えた。前世引き摺るくらいなら同じ世界に生まれ変わりたかった、とも思った。

 そんなあたしが生まれた世界は、簡潔に言えばファンタジー。

そのファンタジーな世界に、あたしはお姫様として生まれた。


 お姫様。


聴こえはいいけど、中世風のピンクなドレスを着たお姫様とは違う。違いすぎる。

 でもピンクのドレスを着せられました。

 とりあえず逃亡することにしました。

五歳児の覚束ない足で大人から逃げ切ることは不可能で、すぐ確保されてしまう。

 めげずに逃亡を計画をしたら、うっかりその計画書が見付かり軟禁されました。

それでもめげずに脱出して逃げ出したが、やっぱり確保されてしまう。

 それを三回繰り返したところで父親に諭されました。


「……おとうさま」

「なんだ?娘よ」


 自分の幼い声が父親の低い声とは、似ても似つかないが血の繋がった親だ。

その容姿は完璧と言えるほど美しい天使のような容姿だった。透けてしまうほどのブロンドに白い肌。彫刻のような顔立ちで切れ目の金色の睫毛の下には青い瞳。

美形な外国人の容姿である父親は、本当に五歳児の父親なのか疑うほど美しい美青年だった。


「あたくしは、おとうさまのあとを、つがなくてはいけないのでつか」


シリアスをぶち壊す舌足らずの台詞。

でつかって…。でつかって…。

頑張って最後にそうなるなんて悔いる。


「そうだ。私の跡を継ぐのは娘であるお前だ」


しゃがんで視線を合わせた父親は、あたしの肩に手を置いて真面目に答えた。


「あたくし、いやです」


 正直に告げる。

ピクリと父親の眉毛が動いた。

空気が揺れる。

徐々にブロンドと青い瞳から色が抜け落ちていく。髪は白銀に変わり、青い瞳は銀色に変わった。

黒い瞳孔と耳の先は尖る。


「何故だっ!!!」


 怒号が空気を震わせてあたしを震え上がらせたが、父親がきつく掴んだ肩はびくともしなかった。

十六年+五年生きたあたしは、怒られて泣きました。


「お前は私の子だ!子が親の跡を継ぐのは当然のことだ!!お前は魔王になるのだっ!!!」


泣きじゃくるあたしに怒声を浴びせる父親にまた震え上がるがやっぱりびくともしない。



 ───死んだらまた、生まれる。


 ───お姫様はお姫様でも、魔王の娘でした。






主人公の名前は篠原せな。

現在はセレイナちゃんです。




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