屋上エデン
屋上から見る空は快晴だ。
今日も死にたい。
フェンスを乗り越えて見るいつもの世界は、さよならって言ってるみたいだ。
ここから落ちれば地面が受け止めてくれる。
靴を脱いで落ちかけたその時、手を誰かが掴んでいた。
誰かの手は放してくれない。
宙ぶらりんになる。
不思議と抵抗はしなかった。
その手が温かかったから。
強い力で引っ張られ、屋上に戻る。
「大丈夫?」
誰かは言う。
何故か泣きそうになる。
部屋で独り首つりをしなかった理由が分かった。
誰かに助けて欲しかった。
地面ではなく、人に受け止めて欲しかった。
大丈夫って言って欲しかった。
悲しんでもらいたかった。
必要とされたかった。
手の温かさが「大丈夫?」って言葉が、助けてくれた。
屋上は地獄だった。
独りで震えていた。
消えてしまいたいと何度も思った。
叫んでも泣いても、誰にも届かなかった。
「お前は必要ない」って言われてるみたいだった。
でも今は屋上は天国だ。
もう独りじゃない。
下らないことを言い合って笑いあえる友達がいる。
必要とされている。
空は快晴だ。
今日も生きたい。