trick and treat
trick and treat
「お姉ちゃん、お菓子ください」
「……何改まってんの?」
部屋でweb小説を読んでいたらノックもなしに入ってきた妹の千亜。その千亜は、部屋に入ってくるやいなや、菓子を要求してきた。
「いや、だからお菓子」
「なんで?」
「ハロウィンだよ? カボチャだよ? 仮装してtrick and treatだよ?」
「あー、今日ってハロウィンだっけ」
PC画面の隅にある日付と時刻をみれば、10月31日。ハロウィンとは、まあ、千亜が好きそうな行事。
「たかられてもなんもないわよ」
「……いたずらするよ?」
「具体的には?」
「お姉ちゃんに付きまとったり、べたべたしたり、お風呂突入したり」
「おお、それはかなり迷惑」
というかそれはいたずら? いつもやってるでしょ。
「ということで、trick and treat」
「いや、だからなんもないって」
買いにでも行かないと。というか菓子自体、ストックがでるほど買わないから常備してない。
「ハロウィン~」
今度はしがみついて前後左右にゆすりだした。
「ああっ、もう、わかったわよ」
家に菓子はない。ということは必然的に買いに行くしかなくなる。滅多なことがない限り休日は、外にでたくないのに。
椅子から離れて外着にきがえるべく、クローゼットに向かうと、千亜は一人楽しそうに部屋から出て行った。まあ、ついてくるつもりで着替えに行ったんだろうけど。
厚手のジーンズに、セーター、ジャケット、とにかく防寒しか意識してない格好。
「お姉ちゃん……温かそうだね」
「この寒い中出歩くんだから上等でしょ」
なんか不満がありそうな千亜を連れて家を出る。ここから近くのデパートまで歩くのが、面倒。やっぱ休日は外に出ないに限る。
「もう、お姉ちゃん歩くの遅い」
「財布渡すから一人で買ってくれば?」
「それじゃ意味がないのー」
ハロウィンなんて面倒な行事、誰が考案したのよ。人さまに菓子たかるような劣悪な行事を。
「お姉ちゃん早くー」
「急いだって無駄に疲れるでしょうが」
*** ***
デパートにつくやいなや、千亜は食品売り場の菓子コーナーに突っ走って行った。あれで今年16なのが不思議。というか精神年齢の問題か。きっと6歳だと思う。
ゆっくり歩いて千亜のもとの行けば、カゴの中になにやら『大量』に菓子を詰め込んでいるのを発見。ざっと見ただけでも1000円分弱ある。
「千亜、買いすぎって言葉知らない?」
「だってハロウィンだよ?」
何気なしに周りを見てみたら、ハロウィンフェアと書かれた広告。
菓子詰めセットやなんやらと、集客を狙った店の陰謀が見え隠れしてる。
「で、まだ買う気」
「うん」
すでにカゴの容積を軽く超えかけてる。ねえ、限度って単語知ってる? さっき聞いたっけ。でもねえ、1000円超えてるでしょ、これ。ハロウィンにこんな出費するとは思わなかったんだけど。
「このくらいかな」
千亜の持ったカゴは隅から隅まで菓子が詰めてあった。財布の体重を抉りとるつもりだろうか。
「レジ~」
「……」
会計の時に出ていく金額がえらく気になった。
「――1452円です」
千亜、買いすぎ。
「~♪」
一人上機嫌な千亜は、菓子の入った袋を手に鼻歌を歌いながら帰路を歩いてる。かという私は、買おうと思ってのけてた金銭が飛んで、小説が買えなくなっている。ハロウィンなんてなくなってしまえ。
「あとで一緒に食べようねー」
来年は何かしら常備しておこうという、教訓を思い知らされた。
**** *** ****
「ん~あまーい」
テーブルの上には買ってきた菓子。千亜はそのうちの一つのチョコ菓子を食べてる。私は、ホワイトチョコ。
「あま」
ハロウィンです。
それは人様の家を訪ねて菓子を強要する行事(嘘)




