クリエイターズ・クライシス
精神病(主に鬱病)、薬物の過剰摂取、および自殺に関する描写および記述が存在します。苦手な方は閲読を控えてください。
物価高、低賃金、終わらない残業と休日出勤、そして孤独。
日本は限界だった。
精神病床は殆どの病院で限界を超えており、一般病床を圧迫する程。既に医療が崩壊していると言って差し支えない。勿論、患者全員を収容することは不可能だ。その結果、自ら未来を諦める者も少なくない。平均5000人、ある月は8000人を超えた。
働き手は減る一方。しかし仕事の量は変わらず、1人あたりで見るとむしろ増えている。
既に負のスパイラルは奥深くまで進んでいた。
それは、たった1件の投稿だった。
===
この漫画マジで癒される
今辛い奴ら全員読め
https: …
===
恐らく投稿者は気まぐれで送信したのだろう。或いは自分と同じと思われる境遇の人間を少しでも救おうとしたのかもしれない。
そのたった1件の投稿から、変化が始まった。
人々はそれぞれ好みのコンテンツを追いかけ、傷だらけの心を少しでも癒していった。結果として、1人あたりの平均入院時間が1割弱程度短くなり、以前と比べて医療に少しだけ余裕が生まれた(依然として病床が圧迫され続けている事に変わりはない)。
創作物が人々の心の支えとなるのに時間は要さなかった。
人々は創作物を求めた。
人々は創作物を消費した。
人々は創作物を求めた。
「ようやく書き終わった…早く投稿しないと…」
a.m.0:23。大急ぎで書き上げた拙い量産品を、投稿サイトにアップロードする。
カツン。
「あっ」
カシャカシャカシャーン。
「あっ、あっ…あぁ……」
積み上がったエナドリの缶に、マウスのケーブルが当たったようだ。私の怠慢を叱るかの如く、深夜に鳴らすにはけたたましい音を奏でて、それは一斉に雪崩れた。
「……」
もはや声を出す気も湧かなかった。大きなビニール袋に、缶を1つずつ放り込む。
明日ゴミ捨て場に出そう。そう考えながら私はベッドに倒れた。
a.m.4:17。
枕が濡れている。
私は、何のために創作をしているのだろう。
頭が痛い。
最近、雨続きだ。
「くすり…」
3錠飲んだ。
a.m.5:21。
頭が痛い。
「くすり…」
3錠のんだ。
a.m.6:14。
頭がいたい。
「もっと…」
5錠くらいのん
p.m.8:56。
「 ぁ 」
ぼやける。
かかなきゃ。
「かかなきゃ」
p.m.11:07。
滅茶苦茶だ。
全部消した。
p.m.12:11。
『あなたにリプライ:今回のも最高でした!次も楽しみです!』
『あなたにリプライ:いつも癒されてます!』
『あなたにリプライ:昔の作品の方が好きだった』
『あなたのポストがいいね!されました』
a.m.4:32。
きょうは、きっとはれる。




