ようやくプラス
歓迎会から半年がたった。
ピコーン!
《善行を確認。徳ポイント4ptを獲得しました。》
《徳ポイント残高 +3pt》
「エマ、やったぞ!初めてプラスだーー!!」
「おめでとう!コーセー」
俺はエマに、サムズアップをしながらガッツポーズをしてからのハイタッチをした。
そう。サムガッツタッチだ!………忘れてくれ。テンションが上がりすぎて、変な言葉を作ってしまった。
人の黒歴史は、テンションが上がった時に、こうやって作られていくのだろう。
「それにしても、この半年はあっという間に過ぎたわね」
「確かに。色々ありすぎてあっという間だったな」
俺たちの半年の歩みをダイジェストで振り返るとこうだ。
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■ アグロニア王国初代首相決定
初代首相は、アステリアマークZだ。
エルフフロンティアから輸入してきた。何故かって?何回選挙をやっても買収が起きて無効になるからだ。トール曰く「民主主義ってこんなに難しいのか……」とのことだが、お前が言い出したんだぞ?
もう面倒くさいので、要所要所では人の手も借りつつ、民意を反映するならこれ以上の効率化はないと判断した。
どうやらこれが正解だったらしく、マークZを導入した功績として、ピコーンと徳ポイント50万ptが入った。
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■ フェニキア聖教国のその後
聖王の失踪と聖女の魔王認定で大混乱していたフェニキア聖教国だったが、エルダートレントとレンゲを人知れず派遣したことで、混乱は終息した。
伝説の世界樹として、守護精霊として。国の安寧に一役買ったとして、徳ポイント10万ptが入った。
問題はミレイへの討伐令だった。聖教国守備隊は「堕天の魔王」の行方を今も追っているのだが、正面から取り消しを求めれば外交問題になるだろう。
「レンゲに頼んだわ」
エマがさらりと言った。
守護精霊として聖教国に根を張ったレンゲが、国の枢機卿たちの夢に「お告げ」を届けた。
レンゲはエマの眷属だ。もう実質、聖教国のトップはエマだ。
「……エマ、お前やっぱり怖いな」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
涼しい顔だった。出会った頃のポンコツはドコに行ったのだろうか。
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■ 卑屈の精霊グラウ
処分保留のまま半年が経過していたグラウの件が、ようやく動き裁判が開かれた。だが、問題はレンレンだった。
「グラウ。あなたがサラの眠る場所を……私が決めた最大の禁忌。その罪の重さを……忘れたとは言わせないわよん?」
法廷に入るなり、レンレンがエクスプロージョン(物理)をマックスパワーでチャージしはじめた。
待て待て待て。ここ法廷だぞ?
「レンレン!!止まれ!!」
フェイタル・ガーデン総出で止めにかかった。が、マックスパワーのエクスプロージョンはすでにレンレンの手の中で臨界点に達していた。
ドォォォォン!!!!
何とか上には反らせたが………余波だけで法廷は崩れさり−−−−
「うん、来年から月見は出来ないな」
最後の月もなくなった。グラウは白目を剥き失神し……
ピコーン!
《深刻な警告:月の完全消失を確認。》
《徳ポイント △30,000,000pt》
「……3000万」
俺も白目を剥いた。
そして当の本人はというと、
「……やっぱり軟弱なお月さんね。でもスッキリしたわん」
満面の笑みだった。こいつ、本当に魔王だな。
しかしその後、スッキリしたレンレンは案外あっさりとグラウと向き合った。
「……グラウ。あなたが私に戻ってほしかった気持ちは、分かるのよ。でもね」
レンレンは、静かに笑った。サラの話をした時と同じ顔だった。
「今の私のほうが、ずっと幸せなのよん。はい、これ!飴ちゃん食べて元気出すのよん」
グラウは黙って飴を舐めた。
「わたし、がんばるわん」
!!?俺は一瞬固まった。
視線をマミに向けると、レンレンとサムガッツタッチをしていた。
結局、グラウ改めグラリスは天空国家スカイにあるサラの墓所の墓守を、生涯かけてすることが刑罰になった。
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■ 月の復活
流石に月が2つとも消えたままはまずかった。太陽の登り降りが4時間おきになり、世界が終末状態に突入したのだ。
急ぎロザリーと時空の精霊に相談すると、ロザリーたちと一緒にニュートンまでやってきて「引力がどうの」「天体の法則がどうの」とうるさかったのだが、無事に月は復活した。
「見返りにマミを時空旅行に連れて行く許可をもらうぞ?」
「え?あーし?やったー!!ゴミ拾い飽きてたんだよねー」
ノリノリなマミがそのままついていった。
ちなみに3000万ptのペナルティは、月を2つとも復活させたことで取り下げられた。ホントに良かった。
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それからは大きな事件もなく、皆でのんびり冒険者生活を再開した。
ゴミ拾い、困っている旅人の荷物持ち、迷子の案内。地味な善行を積み重ねて、今日ようやくプラスになった。
「ここからだな」
「ええ。ここからよ。あなたが真面目に働けばね?」
意地悪を言うエマの笑顔はどこか淋しげに見えた。
俺は何も答えず、笑顔で頷いた。
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そして、翌日。クルスから電話がなった。
『女の子だ』




