気づいてやれ
「おー、コーセー今日は何の飲み会だ?まあ俺は飲めれば何でもいいんだがな」
「新しい魔王の歓迎会だよ。フェイタル・ガーデンに入るからな」
相変わらずノンキなヤスオに答えた。新たな魔王をフェイタルガーデンに迎え入れるべく村総出で歓迎会の準備をしている。大丈夫か?この村。
「ああ、聖女様が堕天の魔王に認定されたんだってな」
「ああ、その聖女様だよ、もう少ししたら来るから、気にかけてやってくれ」
というか気づいてやれ。
「みんな今日は、あーし特製の蜂蜜だれに浸けたお肉でビィビィキューだょー!」
俺とヤスオが話しているとマミがバーベキューの準備を始めた。エマやマリンも、それを手伝う。キアラとノッテは何か機材を色々準備している。進行はユータがするみたいだ。
俺はニートだったから歓迎会とか知らんけど…司会進行っているの?
「それでは準備が整いましたので、主役を呼びましょう。どうぞー」
ユータの合図で、ミレイが入ってきた。紫の修道服に緑と赤のオッドアイ。ヤスオはまだピンと来ていない。
「みなさん、改めて、ご挨拶を。
元聖女のサマエこと、堕天の魔王ミレイです。よろしくお願いします」
ユータが「じゃあカンパーイ」というなか、ヤスオはポカンとしている。気づいたっぽい。俺は聞いてみた。
「ヤスオどうしたんだ?」
「いや、昔の知り合いと同じ名前で驚いただけだ。そいつは、もう死んでるんだけどな」
おー、良い反応!
「本人かもよ?」
「無いない。髪は真っ黒だったし、目も真っ黒で、それにな………」
「それに?」
「すげーブスだった」
!?殺気!ヤスオが刀に手を掛けている。
「てめぇどういうつもりだ?聖教国を裏切ったと思ったら、次は俺達を裏切るのか?」
ヤスオが吠えた。カツカツと靴をならしミレイが近づいてくる。
「裏切る?「不義」の魔王さんが、面白いことを言いますね」
「よし、その喧嘩買った」
一触即発、そんな時。空気は読まない派の魔王が皆を連れてやって来た。
「ミレイっちあーし特製お肉食べたー?…うん?あー!ヤスオっちあーしの料理ひっくり返してる!!」
「ねえ、何事かしら?」
マミが騒ぎ、エマがたずねた。
「エマさん……私はただ、彼が女性のことを『すげーブスだった』と言ったのが聞こえたので、そんなこと言ったらダメですとたしなめようと……」
「あーん、ヤスオちゃん。そんなこと言ったらダメよん。」
「「サイテー」」
レンレン、キアラとノッテにせめられたじろぐヤスオ。さらに、
「愛を知らないのね?」
「愛は尊い。」
マリンとクルスも続く。いや、クルスお前、ハネムーンはどうした?アカリも横で「そうッス」と頷いている。
ヤスオは皆の冷たい視線に顔が青くなっている。
「蜂蜜酒、一年間、おあずけね」
あっ、エマの最後のひと言でヤスオは白目を剥いた。ヤスオにはゲンコツより効く攻撃だったらしい。
−−−エマ視点−−−
「何で伝えないの?」
「伝えようとするんですけどね。本人を前にするとどうしても……」
「そうね……真実を伝えるのは難しいわ」
私たち二人は、バーベキュー会場から少し離れた東屋で話していた。
「昔もアイツ私のことブスって言うことあったんですよ。酷くないですか?アザゼに変えられたのも髪と目の色だけですよ?」
「それでも好きだった…違うわね。今も大好きなのね?」
ミレイは顔を赤く染め答えてくれた。
「…大好きです!!……ところで、エマさんはコーセーさんとお付き合いされているんですか?」
「私たちの関係ってどうなのかしら。確かな絆はあると思うの。でも……今は蜂の女王と眷属の関係ね」
私もまっすぐ言えたら楽なのかな……コーセーの気持ちは……聞けるわけないのに。
−−−ヤスオ視点−−−
俺は今、すごく後悔している。
「コーセー何でお前は俺より酔ってんだよ。まだ1杯目だぞ」
「まあまあヒック、ヤシュオお前も飲め」
子どもに飲ませるんじゃなかった。
「なあ、やシュオ」
「何だ?水か?吐くなよ。もったいねーからな」
「お前きじゅいてんだりょ〜?」
こいつ……これ聞くために酔ったんじゃねぇだろうな。
「なんのことだよ?」
「ミレイにきまっヒクッ、てりゅだろ」
はあ、俺って結構演技派なんだけどなあ。自信なくすぜ。
「あの、笑い方忘れるわけねーだろ!最初見た時から気づいてたよ……」
「ヒック、そう言ってやりぇ……zzz」
こいつ、寝やがったな。
……言えない理由なんて無いのにな。何で言えないんだろうな。




