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親より先に死んだ俺、異世界で徳を積んで無双する  作者: 田舎浪漫


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地獄省の迎えが来るまでの間、俺はマミにある仕事を頼んでいた。


「マミ。勇者たちのスキルを奪えるか?」


「ロザリーっちにアドバイス貰って完成させてるからモチロン!まあ…あれだけど」


「………あれとは?」


「あれだよ、あれ。副作用が指毛ボーボーなるんだよねー」


そういってマミがポーチから取り出したのは、やたら怪しく発光している飴玉だった。


「まあ、仕方ないか。スキルを奪ってくれ」


「まっかせて♪」


だが、マミが配った怪しい飴を勇者たちはなめようとしない。まあ俺も同じ状況なら絶対なめないな。するとマミがレンレンに合図した。


「あら〜ん、皆ひとりで飴をなめれないのねぇん?わ·た·しが熱い口移しでなめさせたげるわーん」


勇者は一斉に飴をなめた。すると勇者たちの身体から淡く光る煙が抜けていった。これでスキルを奪えたのだろう。なんか、指毛すごいし。


「あー、お前らのスキルは奪わせてもらったぞ」


「「「はあ?スキル返せ。

ふざけるなー」」」


騒ぎだす勇者たちを他所に俺は事務的に伝える。


「お前らを、これから地球に強制送還する。地球にスキルはいらないよ」


「「「は?帰れるのか」」」


「お前らは召喚された転移者だ。地球で死んで転生してきたんじゃない。帰れるさ」


帰れると聞いて安堵し涙する者。チートが、ハーレムがと騒ぐ者。反応は様々だが……

帰って「ただいま」って言うんだ。それが出来るのだから。


それからほどなく、地獄省の迎えーーエマの両親…地獄省大臣と魂管理部部長の閻魔大王が直々に来た。


「地獄省です。不当召喚の被害者の皆さんを地球へお送りします。お荷物はありませんか?」


「「え、なにこのオバサン」」


ゴン!ゴン!あー、エマのお母さんのゲンコツ、ヤバイんだよなあ。2人ほど逝った。


「皆さんは、被害者ですので優しく丁寧にお送りする予定でしたが…性格に問題がある様ですね」


「いきなり殴るオバサンのほうが性格…ゴン!


また1人逝った。人間は学習する者だ。俺は前回学んだ。


「決めました。お帰り頂く前に、皆さんには少し地獄を見てもらいます。文字通り」


ざわめく勇者たちをよそに地獄省の死神部隊が1人ずつ勇者を連れて虚空に消えていく。

そんな中、一人の男子勇者が、複雑な顔で振り返り俺を見た。


「……魔王。癪だけどありがとな。俺たちを地球に返してくれて」


「気にするな、地球に帰って親を安心させてやれ」


最後の1人も虚空の向こうへと消えていった。指毛については、誰も触れなかった。大人の判断だ。


その瞬間——


ピコーン!


《クエスト達成:『不当に召喚された勇者の魂を地球に返せ』》

《報酬:徳ポイント +10,000,000pt》

《現在の徳ポイント△847,019pt》


「……よし。とりあえずは前回のマイナスを相殺出来たな」


俺が、徳ポイントを確認しているとエマの両親が近づいてきた。


「まだ、マイナスなのね。エマが嫁げるのは何時になるのかしら?」


「儂は認めておらんがな」と呟くエマのお父さん閻魔大王を無視し、お母さんが続ける。


「まあ、頑張りなさい。コーセーさん。浮気はだめよ?エマを泣かしたら……ねえ?」


そう言って2人も虚空に消えていった。


勇者たちがいなくなり、それを見届けた天空国家スカイの第一航空部隊も、帰還していく。


「お祖父様、また何かあればお声がけを」


「ありがとねぇん。ダレルにもよろしくね〜」


海底国家の部隊も、キューとかいいながら帰っていった。こいつらずっと水槽にいたんだが何しに来たんだとは誰も言えなかった。

こうして、にぎやかすぎた戦場が、ようやく静かになった。


あとは——


「……選挙の結果、どうなったんだ?」


俺がユータに問うと、彼はダークフォンを見せてきた。


「ちょうど速報が出ましたよ」


画面には「アグロニア民主共和国(仮)初代首相、確定」の文字。


そして写真。


「……なんでマミのお母さんが?」


「僕も驚いていますが。得票率、断トツで一位でした」


「……お母さん、立候補してたの?」


「してたみたいですね」


俺はマミを見た。マミはダークフォンを見ながら、さも当然という顔をしていた。


「マミ、お前が裏で——」


「あーし何もしてないよ? ママが立候補したの知ってたけど、あーしには関係ないし」


「……本当に何もしてないのか?」


「アグロニア中に蜂蜜と蜂蜜酒をポスティングしただけ」


「マミ、選挙法違反だ」


マミはきょとんとした顔で「え、そうなの?」と言った。


「ユータ、選挙法の認知度が低い。今回のは無効にしてやり直しをするよう働きかけてくれ」


アグロニア初代首相、マミのお母さんは幻に終わった。



「さて」と、エマは気持ちを切り替えるように言った。


「そろそろ、あの子どうするか決めないとね」


「……ああ」


俺は振り返る。


縄を抜け出し、ぽつんと一人立っている聖女がいた。


勇者たちは全員帰った。各国の部隊も帰った。フェイタル・ガーデンのメンバーも、思い思いに休んでいる。

なのに彼女だけが、帰らなかった。


「……解放する。帰っていい」


俺がそう言った瞬間、聖女の視線がすっと動いた。

俺ではなく、その先——少し離れたところで蜂蜜酒の瓶を傾けているヤスオの背中へ。え?もしかして惚れた?


「……聖教国には、もう戻れません」


「なんでだ?」


「アザゼ様が連行された今、私が戻れば……」


そこで聖女は言葉を切った。続きを言わない。言えない、という顔だった。

嘘ではない。だが——全部でもない気がした。


「……どこかに行くあてはあるのかしら?」


「……ありません」


エマが細い目でじっと聖女を見ている。俺もしばらく黙って聖女を観察した。

縄で拘束されていたはずなのに、あっさり抜け出し、そして「浮気は不潔です」とか言ってのけた。何者だ、こいつ。


「……名前は?」


「……ミレイ、です」


「ミレイ。お前、本当に聖女か?」


ミレイは答えなかった。


ただ——また、視線がヤスオの方へ流れた。今度はもっと短く、まるで無意識のように。

あーやっぱ惚れてんじゃん。


「……今夜だけ、泊まっていい」


俺がそう言うと、エマが「コーセー」と低い声で呼んだ。


「わかってる」と俺は返す。そこへ、ヤスオが空の瓶を置きながらのっそり近づいてきた。


「……聖教国の聖女がなんでまだいるんだ?」


ミレイはヤスオを見た。ヤスオもミレイを見た。


「……事情があります」


ミレイが静かに答える。その声は、さっきより少しだけ——ほんの少しだけ、低かった。


「そうか」


ヤスオはそれ以上聞かず、興味がないのか、踵を返して歩き去った。その背中を、ミレイはじっと見送っていた。




「それにしてもコーセー、あなたまだマイナスなのね」


ミレイを村の宿に送った帰り道。エマが話しかけて来た。


「△847,019。……思ったより減ったじゃない」


「喜んでいいのか悲しんでいいのかわからん数字だな」


「前向きに考えれば、あと百万積めばゼロよ」


「ゼロになってもその先が長いんだが」


エマは小さく笑った。


「……コーセー」


「なんだ?」


「早く積みましょ。一緒に」


俺は空を見上げた。月が一個足りない夜空だった。


レンレン……本当にやりすぎだろ。



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