表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/76

今はそれどころじゃない

《現在の徳ポイント△10,847,019pt》


「……笑えねえ」


俺はその数字を、蜂の複眼でじっと眺めた。

マイナス一千万超え。コンビニバイトで換算したら、何年分だ。いや、そもそも俺はニートだったから比較対象もない。

夜空の下、拠点の屋根の上に一匹で止まって、俺はぼんやりと星を見上げた。異世界の星は、やけに多い。


「……母ちゃん、元気かな」


誰に言うでもなく、声が漏れた。もちろん届かない。届くわけがない。俺は今、魔王認定されたピンクの蜂で、母ちゃんは家で、俺の帰りを、もう待っていないかもしれない。

たった10分。謝って、肩でも叩いて、「飯うまかったよ」って言うだけでいい。ついでに父ちゃんにも。

それだけのために、俺はマイナス一千万の借金を背負って、魔王と呼ばれて、今から勇者を捕まえに行く。物騒なことしようとしてるのに、これで徳が増えるんだもんなあ。


「……何してんの、こんなとこで」


背後から声がして振り返ると、エマが羽をゆっくり動かしながら屋根の端に止まった。


「星見てた」


「嘘ね。落ち込んでたんでしょ」


「……見抜くなよ」


エマはしばらく黙って、俺の隣に並んだ。


「コーセー。早くポイント稼いで結婚しましょ?」


「……」


「やっぱり10分だけ戻れること考えてたのね」


俺は何も言えなかった。


「まあ、今はいいわ。さっさと勇者捕まえにいくわよ」


エマのどこか淋しげな顔を見て、俺が話しかけようとするとダークフォンがなった。フェイタル・ガーデンメンバーのグループ通話だ。


『コーセーきゅん、皆、準備できてるわよん! 』


レンレンの通話が飛び込んできた瞬間、俺は、気持ちを切り替えた。


『全員聞こえるか。俺から作戦を伝えるーーー』



30分後、俺の目の前には、縄で拘束された召喚勇者30人と何故か聖女もいた。


「魔王、私たちを解放しなさい。聖王様も返して下さい」


「「そうだ、解放しろー。俺たちは勇者だぞ」」


「聖女様を縛るなんて、じ、実にすば…けしからん。解放したまえ」


「黙れ。今はそれどころじゃない」


俺はうるさい勇者や聖女を一蹴し問題児の魔王達に話しかける。


「で、マミ。何の薬使ったんだ?」


「えー聞きたい?あーしが心を込めて作った指毛発毛薬?」


だよな。女子勇者の指からとんでもない量の指毛が生えてる。頭に特化させたら地球じゃノーベル賞ものだ。まぁロザリーのとこにノーベルいるけどな。


「いや、いい。解毒剤を今すぐ使いなさい」


「ちぇっ」と言う、マミを無視し、次はマリンを見て聞く。


「マリン、作戦じゃ聖女の捕縛は無かったはずだが?」


「この女、レンレンに色目を使うから。殺さなかっただけマシよ?」


いや、レンレンに色目は使わんだろ。恋は盲目ってこのことか?


「それでレンレン。この世界に月は2つあったはずだけど?」


「コーセーきゅん。聞いてーん。この子たち、ちょっぴり強かったのよん。だからすこーし本気出そうとしたら……ねん?本気出しすぎたと思って、とっさに上にエクスプロージョン(物理)を放ったの。そしたら、なくなったのよん。軟弱なお月さんね」


レンレンは見た目以外本当に魔王だな。


「ユータ、ヤスオ!2人は何で酒を飲んでいるんだ?」


「ヒック…コーセーさん…酒はいいね〜」


「コーセー、聞いてくれ。生産スキル持ちの勇者が俺に、……俺に、大魔王って書かれた酒瓶を渡してきたんだ。あいつは策士だった。騙しやがって許せねー」


ユータは酔いつぶれ、ヤスオは買収され。うん。その勇者は策士だな。


「エマ、アカリとクルスはどうした」


「『今から子を授かる俺達に若者の勇者を倒すことは出来ない』って」


「それはクルスだな。アカリは何て?」


「『魔王ごっこ飽きたっす。クルスとハネムーン戻るっす』ってメッセージ来たわ」


……まあ、2人はいいか。そして最後の問題児キアラとノッテだ。


「キアラ、ノッテ、配信視聴者数は?」


「「世界人口の80%。さすがお姉様」」


「いや、お前ら18禁レベルの殺戮風景に加工しながらライブ配信しただろ。やり過ぎなんだよ!!」


実際は問題児パーティーに変わり天空国家スカイの第1航空隊が安全に素早く勇者たちを確保してくれたのだ。


「ところでコーセー、あなたは何してたのかしら?」


「ぐっ!?」


エマが痛いところをついてきた。

俺は魔王っぽいだろうと思い、蜂の姿で勇者を確保しにいった。それが行けなかった。地球の女子高生には、ブサイクマスコットに見えたらしい。数名の女子にかわるがわる抱っこされている所を第一航空隊に救われたのだ。


「まあ、いいわ。ママ…地獄省に連絡したからもうすぐ召喚勇者の迎えが来るわ」


「そうか。……あの、エマ」


「何?」


「女子高生に抱っこされて、怒ってる?」


エマは一瞬黙った。


「貴方だけ、キアラとノッテに加工されず魔王がマスコットとして愛でられてる映像………1000万再生超えてるって」


エマは「じゃ、迎え来るまでよろしくー」とこの場から離れていった。

ポン!俺の肩に誰かが手を置いた。振り返ると聖女だった。え?縄どうしたの?


「浮気は不潔です」


「浮気じゃねー!!」


聖女が自由になってる疑問は吹っ飛び、俺はただただ叫ぶのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ