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親より先に死んだ俺、異世界で徳を積んで無双する  作者: 田舎浪漫


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二十歳から


「――フェニキア聖教国に宣戦布告します!」


俺が放った言葉は、集会所を、そしてマナカメラを通じて全世界を凍りつかせた。

なぜこのタイミングだったのか。それはトールが「この国を立憲君主制の民主主義に変更します!!」とドヤ顔で言い放った直後のことだ。

俺の脳内に、久々の快音が鳴り響いた。


ピコーン!

《「民主主義という概念を提示し、一国の救済を確定させた功績」:徳ポイント 3,000,000pt が加算されました。》


きたあぁぁ!! トール、お前最高だ!

だが、衝撃の本番はここからだった。脳内アナウンスが無機質な声で、震えるような超大型クエストを叩き込んできたのだ。


ピコーン!

《緊急クエスト:『偽りの聖域解体』が発生しました》

【クエスト1:不当に召喚された勇者の魂を地球に返せ】

内容:不当に拘束された勇者たちの魂を解放し、元の世界へ送還する。

報酬:徳ポイント 10,000,000pt

【クエスト2:堕天使を捕縛しろ】

内容:聖教国のトップ『聖王』の正体である堕天使を無力化し、捕縛する。

報酬:徳ポイント 10,000,000pt

…2000万!? 合計で、よ、2000万ポイントだと!?

今までゴミ拾いや下水掃除でコツコツ稼いできたのがアホらしくなるほどの巨額報酬。これを見逃したら一生後悔するレベルのボーナスステージだ。


『……ちょっとコーセー! あんた何を勝手なことを言い出してるのよ!』


念話でエマの鋭い声が響く。彼女は今、壁際で涼しい顔をして立っているが、その内心はパニックに近い怒りで充満しているのが伝わってくる。


『宣戦布告なんて聞いてないわ! 今はアグロニアの事後処理が最優先でしょ。わざわざ聖教国を刺激して、この状況で敵を増やすメリットがどこにあるの!? 』


エマの正論。だが、俺は確信を持って、念話で一言だけ返した。


『エマ、落ち着け。聖教国……聖王捕まえれば徳ポイント2000万だ』


『……は? 』


『クエストが発生した』


一瞬の沈黙。

コンマ数秒後、念話越しにエマの「理性のスイッチ」が切り替わる音が聞こえた気がした。


『……コーセー、もっと聖教国を煽りなさい』


豹変である。さすが俺のパートナー、話が早くて助かる。2000万ポイントあれば…両親に会えるな。


「……さて、聖教新聞の記者さん。いや、工作員のあんたに言っておく」


俺はカメラの向こう側、そして目の前で拘束されている男を冷めた目で見下ろした。


「俺たちが戦争を煽った? 違うな。俺たちは本当の敵を見極めていただけだ。トールが掲げた民主主義がこの国を救うなら、俺の仕事はその邪魔をする古い利権……つまり、聖教国の腐った神話をぶち壊すことだ」


会場のモニターに映るコメント欄が、一気に加速する。

『え?うちの国とやるの?』『魔王がマジギレしてる』『民主主義ってパンに塗るやつ?』『聖女様は俺が守る』


「聖王、聞こえてる? ……お前らが勝手に決めた、俺達『魔王』が遊びに行ってやるからな」


こうして、俺の謝罪会見は謝罪せず終わった。

横でトールが「……えーと、民主主義についての動画、もうアップしていいですか?」とオドオドしていたが、もはや世界中が、フェイタル・ガーデンの次なる一手に釘付けになっていた。




アグロニア王国改め、「アグロニア民主共和国(仮)」では、トールがぶち上げた『立憲君主制の民主主義』を形にするための第一歩、「第一回総選挙」の準備が始まっていた。


「よーし、僕が初代首相になって、この国を最高に自由な国にするぞー!」


と、鼻息荒く立候補しようとしたトールだったが、エルフフロンティアに作成してもらった、憲法草案の分厚い束に阻まれた。


「……トール。残念だけど、被選挙権(立候補できる権利)は二十歳からよ。あなた、まだ十代でしょ?」


「えええっ!? 僕が言い出しっぺなのにー!?」


エマにツッコまれ、トールの絶叫が響いたが、法は法だ。民主主義において「言い出しっぺ特権」は存在しない。


一方、俺とエマは、防壁の上で「聖教国への進軍計画」を立てていた。


「ねえコーセー。スカイのドラゴン部隊も、信長の戦車も、『いつ聖都に突っ込むんだ?』ってソワソワしてるわよ」


「……いや、あんなガチ勢の中に突っ込むの怖すぎるだろ。向こうには『聖歌隊』とかいうチートバフ集団もいるらしいぞ?」


「じゃあ、どうするのよ? クエスト、諦めるの?」


「まさか。……エマ、作戦名は『おまわりさ〜ん、この人です』だ」


俺はニヤリと笑い、ダークフォンを取り出しある人に電話した。


「もしもし、おまわりさんですか?」


『誰がお巡りさんじゃ。お前エマに手ぇだしてねーだろうな?』


俺が電話した相手は、地獄省魂管理部部長の閻魔大王。通称、エマのお父さんだ。


「あー、お巡りさん?今日は善良な市民である僕から情報提供です」


『お巡りさんじゃねぇ。さっきから何言ってんだ?情報提供?ふざけてると魂…』


「あっ、お父さん。今メールで魂を不当に扱うやつの証拠を送りましたー。こんな奴怖いんで逮捕してください」


『……うん?メール?』


閻魔大王の話を遮り、俺はメールを送った。


『お父さんでもない!…… 聖王を名乗る堕天使が、地球から魂を密輸して兵器転用してる? ……あー、確認したが儂にどうしろ言うんじゃ。管轄違いじゃな。担当部署に情報は渡しておくわい』


脳内に、地響きのような、でも心底めんどくさそうな声が響く。


「こいつヤバいでしょ?今すぐ逮捕しないとお母さんに言いますよ? 」


『……よし、わかった。今すぐ死神課の特殊部隊【G.R.I.M】を出す。堕天使は任せろ。……ところでエマそばにいるんだろ?いいのか?』


閻魔大王が唐突にエマに話しだし、エマが答える。


「パパ、何のこと?」


『気づいてなかったのか。聖王を名乗る堕天使はお前の元婚約者のアザゼ君だよ』


「……関係ないわ。グリム早く派遣してね」


エマがそう言うと、閻魔大王は「分かった」と言い電話を切った。


「婚約者いたんだな…本当に良かったのか?」


「……ねえコーセー。……婚約者は親が決めたことよ?それに元よ!」


「ならいいんだ。ま、これで勝確だな」


ピコーン!

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