楽しそーで良かったよ
「嫌な予想って当たるよなあ。……なあユータ。念のために残りの二柱も教えてもらってもいいか?」
キアラとノッテまで「双極の魔王」だと判明した今、俺の警戒レベルは最大だ。
エマと俺はこの世界に来てまだ数ヶ月だし、マミもつい最近まで違法奴隷だった。魔王認定されている訳がない。
問題は、今ここにいないクルスだ。絶対にあいつ、何かやらかして魔王扱いされているはずだ。
「もう、違って欲しいんですが……確認はしたほうが良さそうですね……」
ユータが震える手で資料をめくる。
「次は、『古城の魔王』ですね」
古城? ……あ、ちょっと違う気がするな。巨人の魔王とかだったらヤバかったが、不気味な城の主って感じじゃないし。
「どんな魔王なんだ?」
「現在はどうなったか分からないんですが、記録では2000年ほど前に古城を占拠し、昼夜を問わず爆発音や機械音などの騒音をまき散らかした魔王だったようですね。近隣住民からは『騒音の魔王』とも呼ばれ、当時の軍が討伐に向かうも尽く返り討ちにあった記録が残っていますね。ある日を境に消息不明になりましたが、討伐された記録が無い為、認定だけは残っているんですよ」
「騒音? クルスっぽくは無いな。あいつは無口だし、そんな迷惑な真似はしない。……もうその魔王認定、さっさと抹消しろよー」
「そうね、クルスは騒音たてるタイプじゃないわね」
エマも同意する。俺たちが魔王情報の精査に必死になっている後ろで、マミが誰かと楽しそうに通話していた。
「うんうん。はーい。またねー」
「マミ、誰と電話してたんだ? トールか?」
「クルスっちだよー。ハネムーン楽しいだってー! それにマスターにも会えたんだって」
「おー、ジローは天国にいるのか!」
その情報は嬉しい。俺も両親に早く会いたいわ。
「楽しそーで良かったよ。しかしクルスの話してたから、声を聞きたくなったのか?」
「違うしー。クルスっちに聞いたら、マスターが研究所にしてた城を守ってたことあるってー! マスターが死んでから、その城から出ていろんな所を旅してたんだって。マスター、生きてる時はずっとお城に引きこもって、ガシャンガシャン研究してて、すっごくうるさかったんだってー!」
「…………」
一瞬、屋敷に死のような静寂が訪れた。
「……そうか、淋しくなってクルスと電話したのか。マミ、今は大事な話し合い中だから後でクルスの話は聞くな。………えーとなんだったっけ?ああ、四柱目はクルスじゃなかったな! よしユータ、最後の一人を教えてくれ! 次だ次!」
俺が冷や汗を流しながら、全力でスルーを決め込んで強引に話を締めくくろうとすると、隣に座る面々が、凍てつくような視線で俺を射抜いた。
「コーセー。……諦めなさい」
エマが、哀れな子を見るような目で首を横に振る。
「……スルーは無理があるぜ、兄弟」
ヤスオが憐れみの表情で俺の肩を叩く。
「「クルスも魔王ね」」
キアラとノッテが、無慈悲にトドメを刺した。
「あああああああああ!! やっぱりかよおおおお!!」
俺が頭を抱えて絶叫すると、そこから三人の名探偵による冷静な分析が始まった。
「……なるほど。ジロー殿は引きこもりで、その姿は世間に一切知られていなかったわけですね」
ユータが顎に手を当て、資料と照らし合わせながら淡々と語り出す。
「そうなると、世間に見えていたのは、城を占拠して討伐軍をことごとく返り討ちにする無敵の門番……クルスだけだったってことか」
ヤスオが納得したように酒をあおる。
「つまり、世間の人たちは、『中から聞こえるジローの騒音』と、『外で暴れるクルス』をセットにして、一人の不気味な魔王だと思い込んだのね」
エマがパズルを完成させるように締めくくった。
「……あいつ、主の研究を守るために、自分が『騒音の魔王』なんて濡れ衣を着せられてることも気にせず、門番してたのかよ……」
健気すぎて涙が出る。いや、巻き込まれた俺たちの現状を思うと血の涙が出る。
これで四柱。五大魔王のうち、四人が俺のパーティーメンバーだ。
ピコーン!
《人類が認定した魔王を仲間にしていたことが判明:神界システムでは魔王認定は冤罪と判断していますが、半年以内に汚名を返上できなければ徳ポイント △400万ptが加算されます。》
えーと……何で!?




