表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/76

たまにはいいね

『なあ、エマ。……やっぱりやりすぎちまったみたいだぞ』


俺は引き攣った顔を隠しながら、隣に立つエマに念話で話しかけた。


『そんなことないわよ、コーセー。あんな糞ガキ共、魂ごと消滅させなかっただけ有難いと思ってもらわなきゃ。むしろ足りないくらいだわ』


『……いや、ステータス見てくれよ。脳内に「徳ポイント:マイナス195万」って不吉すぎる赤字通知が来たんだが』


「えっ」とエマが短い声を漏らし、慌ててステータス画面を確認する。

みるみるうちに彼女の顔から血の気が引いていき、幽霊のように真っ白になった。


『……嘘。……やりすぎたわね。これじゃ、結婚が……また大幅赤字じゃない……っ!』


さっきまで玉座にふんぞり返っていた威厳はどこへやら、エマが小刻みに震えだした。

このまま手ぶらで帰ったら、地獄のパパやママに「赤字営業乙」と笑われるどころか、結婚の許可が1000年くらい先延ばしにされかねない。

俺は未だに床に膝をついてブルブル震えているなんちゃら王に、無理やり営業スマイルを向けて話しかける。


「ま、いろいろありましたが……なんちゃら王様? 依頼は受けますよ。詳しく説明してもらえます?」


この巨大なマイナスをプラスにするには、魔王討伐という超高難易度クエストのボーナスを狙うしかない。

俺が声をかけると、なんちゃら王は側近らしき痩せた男を必死に手招きした。その側近が、震える足で資料を抱えながら前に出る。


「えー、い、依頼内容は……我が国がしょ、召喚した異世界の勇者様のせ、戦闘くんりぇんと……二柱の魔王とうばちゅへの同行になりましゅ……っ!」


「二柱? 魔王ってそんなにいるのか?」


というか、側近さん噛みすぎだ。聞き取りづらくてしょうがない。


「戦闘訓練は分かりました。その二柱の魔王とは? 落ち着いて話してください。危害を加える気はありませんから」


「はっ、はいっ……! ご存知の通り、この世界には五柱の魔王がおりますが……」


ご存知ないけどな。この世界の設定を今初めて聞いたわ。


「こっ今回は我が国に極めて害をなす、天空国家スカイの龍魔王、ニコタール・スカイの討伐と……」


「……ブフッ!?」


吹き出したのは俺だ。ニコタール? ……え?やっぱりレンレン魔王だった?

俺は思わず、横で魔法少女の姿で爪を弄っているレンレンを見た。

自分の名前が出てよくそんな知らん顔出来るな。

アグロニア王国の人たち、魔王本人に魔王討伐を依頼してる感じ?


「ど、どうかされましたか……? やはり、龍魔王は恐ろしい存在で……」


「いや、なんでもないです。……それで、もう一柱の魔王とは?」


俺が冷や汗を拭いながら聞くと、側近は声を潜めて言った。


「はいっ。もう一柱の魔王は、その正体はハッキリと分かっていないのですが……通称、おぼろの魔王姫と呼ばれておりまして。神出鬼没、我が国の貴族が多被害にあっており、被害が甚大でして……」


朧の……魔王姫……。

俺は、パーティーの隅で無表情に佇んでいるマリンをチラッと見た。

すると、いつもはクールなマリンが、不自然なほど素早く「ぷいっ」と目を逸らした。……え確定?確定じゃないよね?あっ、テヘペロした。確定じゃん!

え、何このパーティー。

魔王軍の幹部どころか、魔王本人が二人も混ざってんの?よく、昨日以来受けるの聞いた時、了承したね。君たち2人はバカなの?ホントどうすんのこれ。


「なあ、キアラ、ノッテお前らは違うよね?」


「「知らないわ」」


だよね。この二人は人間に魔王認定されていても気付いていなそう、というか興味無さそうだな。よし、今はスルーしよっと。

俺が2人に確認していると絶望から立ち直ったエマが耳元で囁いてきた。


「……コーセー。魔王二柱ってボーナスポイント凄そうじゃない?」


どうやら彼女は「仲間を倒したフリをしてポイントだけ掠め取る」という計画を思いついたらしい。…神のシステム騙せるわけないよね?エマさん、時折見せるポンコツは今はいらんよ。


「はあ」


ため息をつきながら俺は、顔面をレンレンに変えられた女子高生勇者たちと、キスマークだらけで放心状態の男子高生勇者たち、そして倒すべき魔王本人たちが二人もいるこのパーティーを見渡した。よし、俺は決めた。




「あっ、やっぱ依頼受けるのやめまーす!」


俺の戯けた声が謁見の間に響いた。


「「「「「?えっーーーっ!?」」」」」


うん、俺以外が驚くのを見るのも、たまにはいいね。魔王討伐?争いは何もうまんよ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ