あっ、やり過ぎた
「話を伺いましょう!辺境伯殿?」
「わざとらしい、下手な敬語はやめろ」
俺が茶化すように聞くと、ヤスオは顔をしかめ「いいから真面目に聞け」と言いながらユータに目配せをする。
「私から説明しましょう。あなた達、S級冒険者『フェイタル・ガーデン』に、アグロニア王国、ヴォルデマール・ルクス・アグロニア23世国王陛下から直々に指名依頼がありました。依頼内容は魔王を討伐する異世界勇者のサポートになります。魔王討伐の監督責任者として辺境伯でS級冒険者と剣聖の肩書を持つヤスオも同行します。この依頼受けますか?」
へーこの世界に転生してだいぶ経つけどこの国の名前初めて聞いたわ。しかし異世界勇者ねぇ。
「皆この依頼受けていいか?」
全員了承してくれた、次の日、俺たちは早速、王城に呼ばれることになった。
「いいか、一応、粗相はするなよ。相手はプライドだけは高いがこの国の王だ。……まあ、俺にとっては酒を奢らせる相手にすぎんがな」
ヤスオがそう言いながら俺たちを先導する。俺は人化し、ピンク色の髪に腰には刀を。エマはラフな洋装で銀髪を靡かせている。妖艶な空気を纏うマリンはいつもの黒いイブニングドレス。
そして、ヒゲを生やした魔法少女?のレンレン。最近は憑依をあまりしなくなった、ふわふわ浮くキアラとノッテ。マミは茶髪にピンクのメッシュをいれた一昔前のギャル姿。
先頭を行くヤスオは、辺境伯のくせに酒瓶を持ち「あ、ここ禁酒だっけ? まぁいいか」とフラフラ歩いている。そして謁見の間に足を踏み入れたのだが。
「……フン。これが辺境伯の推挙した冒険者か。金に汚い冒険者よ、余の為に尽くせよ」
玉座に座るヴォルデマール・ルクス・アグロニア23世は、こちらを一瞥するなり鼻で笑った。周りにいる貴族達も俺達を見て嘲笑する。
かなりイラッと来たが俺の視線は国王よりも、その背後に並ぶ集団に釘付けになった。
「……え、マジ? あいつら、コスプレ集団か何か?」
「男いらなくね?」
「Sランク冒険者のパーティーとか言ってたから期待してたのに。あのピンク頭のリーダー、なんか弱そうじゃね?」
「俺たちのほうがよっぽど強いだろ。勇者だし」
制服姿の男女、計30人。
日本から召喚されただろう、異世界勇者たちだ。彼らの目は、期待と不安、そして「自分たちは選ばれた特別な主人公だ」という慢心に満ちていた。
金髪のリーダー格らしい男子が、ドヤ顔で眩い聖剣を召喚してみせた。
召喚された30人の高校生たちは、俺たちを「時代遅れのNPC」程度にしか見ていない。その慢心は、俺の胃をキリキリさせた。
「あのー、王様? 俺たち勇者っすよね? 最強スキルとかもらったんで、さっさと魔王倒しに行っていいっすか? 経験値稼ぎたいんで。あ、そこのイケメン気取ってるリーダー? は、雑用係としてなら使ってやってもいいっすよ。女は夜の相手して貰おうかな。あーヒゲの化け物とふわふわしてる幽霊はチェンジで」
「えー委員長あんなゲバイ女や年増がいいの?なんかペチャパイの子もいるしー。私のほうが可愛いし〜」
あーあ言っちゃった。慢心って怖いね。
「……ねえ、コーセー。もういいかしら」
エマの額に青筋が浮かんでいる。今のエマを、皆をとめる?それは自殺と同義だ。俺は首を縦に振った。
「キアラ、ノッテ、マリン、レンレン、マミ……教育的指導の時間よ」
「「任せて、お姉様!!馬鹿どもに裁きを」」
まず動いたのは精霊の二人だ。キアラが魔力を爆発させ、最上階にある謁見の間の天井と壁を豪快にぶち壊す。
「なんちゃら王様、修繕費は辺境伯に請求をー」
「動かないでねぇ」
続いてノッテが闇魔法を展開。逃げようとする近衛兵や貴族たちを影の手で一瞬にして拘束した。
「なっ……何事だ! 衛兵! 衛兵!!」
なんちゃら王が叫ぶが、その喉元にはいつの間にかマリンが立っていた。
「陛下、あまり動くと……手元が狂いますよ?」
妖艶に微笑むマリンのナイフが、王の首筋を撫でる。少し血が滲むくらいの絶妙な斬撃。王は青ざめて失禁した。
「なんちゃら王様、労災入ってますかー」
「いやぁん、若い男の子がいっぱい!」
レンレンが猛烈な勢いで高校生男子たちに突撃する。
「ちょっと! やめろ! くるな!!」
「愛の接吻よぉぉん!!」
阿鼻叫喚の叫び声と共に、男子高生全員がレンレンの濃厚なキスの餌食となり、精神的な大ダメージを受けて崩れ落ちていく。
「よかったねー、癒してもらえたねー」
「ペチャパイ?へー。そう。あーしのことかな?へー。ウケる。へー。あーしがペチャパイかあ。うん。分かった分かった」
あ、ヤバい、マミが一番きれてるわ。マミが女子高生の集団に不思議なガスを放出した。それを吸った女子高生たちは一瞬でレンレンみたいになった。
「「「いやぁぁぁ! 私の顔がぁぁぁ!!」」」
「レンレン増産計画続いてたのかーい!!」
俺のツッコミは、悲鳴にかき消された。
「……勇者の聖剣召喚ね、ホイッ 」
酒を煽りながら歩み寄ったヤスオが、金髪リーダーの構える聖剣を手刀でバキィッ! と粉砕した。
「なっ……俺の聖剣が……!?」
「いいか、小僧ども。そして金づ…陛下」
ヤスオが千鳥足で彼らを見下ろし、説教臭く馬鹿にする。
「お前らの『チート』なんてなぁ、この連中の前じゃ『ままごと』なんだよ。陛下も陛下だ、こんなガキに世界が救えると思ってんのか? 酒の飲み過ぎで頭が腐ったか?」
風通しの良くなった謁見の間は、玉座にはエマがふんぞり返り俺達は側に並び立っている。その前には王、貴族、兵、異世界勇者の全員が正座をしてこちらをビクビクしながら見ている。
「……さあ。コーセー、話を進めて」
満足げなエマに促され、俺は話し始める。
「反省した?」
「なぜ、余が反省せねば…」
「エマ、女王やってみる?」
「いいわね〜私が女王なったらこいつらどうしようかなー?」
エマと寸劇をしていると、なんちゃら王が慌てて謝罪してきた。
「大変申し訳ございませんでした!」
「うんうん、それで、よろしい」
ピコーン!
《脅迫△5万pt、監禁△5万pt、器物損壊△5万pt、テロ行為△50万pt、未成年者への暴行△100万、その他罪△30万pt、合計△195万ptの徳ポイントペナルティが、加算されました。》
あっ、やり過ぎた。




