辺境伯殿?
あの後、大臣ママの強烈なゲンコツで魂の形が変わるほどの衝撃を受け、意識を失った俺だったが、肌を焼く物理的な熱さで目が覚めた。
「みんな……っ、せめて、せめて天国へ行ってくれ……! 火をつけろぉぉぉ!!」
号泣するトールが、俺たちの遺体(仮死状態)をキャンプファイヤーばりの火力で焼こうとしていたのだ。
「熱い熱い熱い! 焼くな! まだ生きてるし、なんならちょっと地獄に行ってただけだ!」
燃え盛る炎の中から俺たちが一斉に飛び起きた時、トールは「ヒィッ、ゾンビィ!?」と叫んで腰を抜かしていたが……あれから一ヶ月。
イーサの街の特設会場では、クルスとアカリの結婚式が執り行われていた。
「……えー。新婦のアカリ君は、地獄省の期待のホープであり……」
アカリの上司、閻魔大王(部長)が、鼻を啜りながら祝辞を述べている。アカリに100年の産休と育休をもぎ取られたショックで、時折「儂の貴重な労働力が……」と本音が漏れているが、招待客席の最前列で大臣ママが扇子をパチンと鳴らすたび、背筋を伸ばして「素晴らしい夫婦だ!」と叫び直している。
「……続いて、新婦友人代表。エマ様、お願いします」
司会の声でエマが立ち上がる。
「アカリ、おめでとう。社畜だったあなたが、まさかクルスとゴールインするなんてね。クルス、あなたの盾でアカリと産まれてくる子をしっかり守ってあげてね。私も結婚出来るように頑張るわ」
エマの視線が俺の心臓を射抜く。徳ポイントプラスまで、後……うん頑張ろ。
「えー、続きまして、新郎友人代表……コーセー様」
俺はマイクの前に立った。
「えー、クルス。お前が『愛は無限』と言い出した時は、正直どの口が言ってるんだと思いましたが……アカリとお幸せに。あと、その零戦のラジコン、二人乗りに改造したみたいだけど、高度を上げすぎるなよ。アカリは一応、妊婦なんだからな」
この後もキアラとノッテが編集した二人の思い出が映し出されたり、マミが作ったウェディングケーキにケーキ入刀したり何故かレンレンが新婦の姿で二人の誓いのキスの間に入ろうとしたり、色々あった。ああ、ロザリーたち偉人集団もどこからか聞きつけてやってきたな。
「……はぁ。賑やかね」
「そうだな。で、あいつらハネムーンはどこに行くんだ?」
「アカリたちは『天国旅行』らしいわよ。ママのコネで、特別入国許可が出たんですって」
俺達が2人で話していると、アカリがブーケを投げに外にでた。
「結婚式も終わりだな。明日からまた、徳ポイント稼ぎ頑張るか」
「ええ、頑張りましょう」
あっ、マリンがふっ飛ばされ、レンレンがブーケを手にした。誰と結婚するんだよ。
「じゃあクルス、アカリ、ハネムーン楽しんでこいよー」
「ああ、帰ってきたらまた一緒に冒険しよう。俺はアカリと生まれてくる子の為に稼がなければならない」
「クルスっち、アカリっち、お土産待ってるね〜」
「アカリ、クルス、いってらっしゃい」
「エマ様、みんな、行ってくるっす」
「よし、帰るか。明日からまた頑張るぞ」
「おーい、お前らちょっといいか?」
2人を見送り、俺たちも拠点の屋敷に帰ろうとした時、酒臭いヤスオがユータと一緒に近づいてきた。
「うん、どうしたんだ?」
「お前ら、俺と魔王倒しにいかね?」
この世界、魔王いるの?レンレンじゃなくて?まあ、いるならテンプレの魔王討伐して、徳ポイント荒稼ぎしますか。
「話を伺いましょう!辺境伯殿?」




