皆知ってるか?
見慣れた拠点の屋敷。
時空旅行から帰還した俺たちは、アパッチみたいなタイムマシーンから戦艦大和に似た軍艦にリメイク?されたタイムマシーンでロザリー達、偉人エルフ組に本来の俺達の時間軸へと送ってもらった。
「じゃあな、コーセー。君達との共同研究、それなりに刺激的だったよ」
俺たちは、バカ二人組に置き去りにされた後、時空旅行に1年程付き合った(強制)。皆知ってるか?信長は本能寺で死んでないんだぜ?学校じゃ教えてくれないだろ?真実を。
「人間50年、いずこかでまた会おうぞ」
そうだよ。「こいつ面白いよね〜」って軽いノリで、ロザリーが本能寺まで行き信長を拉致ってきた。
「是非に及ばず」
俺は信長にテキトーに返事する。意味も知らんけどな。あっ、予想してるだろうがロザリー、チャールズ、マミの共同研究で信長はエルフ化(耳と寿命だけ)している。ちょんまげエルフは普通にキモい。信長以外にも偉人エルフ組は増えている。ガリレオ、ジャンヌ…まあ色々拉致ってる。
そうそうロズウェル事件知ってるか?
何か宇宙人っぽいやつ!あれは俺だった!まあ、この時空旅行は内容が濃すぎるから、また別の機会にじっくり話すさ。
「……やっと、帰ってきたのね」
エマが屋敷の壁に触れ、安堵の溜息をつく。
「おっつー! いやー、一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなるもんだねー!」
相変わらず、一番反省の色がないマミが中庭のソファにどっかりと座り、伸びをする。
俺はふと、隣で武装を解こうとしているアカリに声をかけた。
「……なあ、アカリ。ふと思い出したんだけどさ。俺たち、結局1年近く時空を飛び回って色々歴史を修正しただろ?
《隠しクエスト:時空旅行している馬鹿を止めろ!達成報酬:徳ポイント100万ポイント》
このミッションって成功になるのか?」
俺の問いに、アカリが面倒くさそうに端末をパチパチと叩く。
「あー、100万ポイントっすか。それなら、閻魔大王様からメッセージが届いてましたよ」
「閻魔大王? 律儀にお褒めの言葉でもくれたか? それともポイント振り込みの通知か?」
俺が期待を込めて画面を覗き込もうとすると、アカリが真顔で告げた。
「『お前ら全員、地獄に来い。』だそうっす」
「…………。」
一瞬、屋敷の中庭に静寂が訪れた。
1年も偉人エルフ組から歴史を守り抜き、ようやく我が家に帰ってきた英雄に対する第一声がこれか。
「俺たちに死ねってかぁぁぁぁッ!!?」
俺の絶叫が屋敷中に響き渡り、窓ガラスがガタガタと震える。
隣でマミが「えー、地獄でオフ会? 楽しそー!」と呑気に言っているが、俺の胃はすでに限界だった。
「どうやらロジとエラの報告書、捏造がバレたみたいっすね。………あ、お迎えの門、そこに来るっす」
「うん?呼んだか?」
呼んでねーよ!久々に喋ったと思ったら親父ギャグぶっ込んでくるなよ。クルスをスルーし、アカリが指差した先を見る。中庭のど真ん中に、禍々しい角が生えた「地獄直行の門」があった。
「行かなきゃだめか?」
正直地獄はまだ行きたくない。俺たちある意味地獄の旅行から帰って来たばかりだぞ。
「来月になったら行きましょ?」
俺の呟きに、青い顔をしたエマが返答すると、皆がいっせいに頷く。全員行きたく無いらしい。俺は、それを見てまた叫んだ。
「よし、明日から春休みだ〜!」
伝えるのを忘れていたが、この世界も普通に四季があり、今は冬を終え、春を迎えようとしていた。俺の春休み宣言に、皆、狂喜乱舞し、今日はお疲れ様会だーと準備を始めだした。
そんな中、アカリだけは苦笑いしていた。
(大丈夫っすかね〜?皆気づいてないみたいっすけど、ロザリー、ひと月ずれて私たちをこの時間軸に送ってるっすよ。閻魔大王様のメッセージ、一ヶ月前に来てるっすよ……)
「ま、いっすね。あー、わたしも蜂蜜酒くださいッス」




