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どうしたもんかね


「あー! コーセーっち、エマっち! 見つけたー!」


ホテルのテラスで良い雰囲気だった俺たちの前に、必死の形相のマミと、どこか気まずそうな「さるゆき」が乱入してきた。


「大変、大変! クルスっちが逃げちゃったんだけど!」


その叫びと同時に、街中に赤い警告灯が不気味に回り出し、アステリアの無機質なアナウンスが夜空に響き渡った。


『――緊急警報。第1種警戒態勢を発令。……また、本日郷内で観測された複数の違法行為に対し、現時刻をもって一斉摘発を開始します。対象、ニコタール・スカイ、および海底国家ショーナン第2王女マリン、重装兵クルス……』


「え、ちょっ、何事!?」


俺たちが戸惑う間もなく、上空から降下してきたアステリアの法執行ドローンが、逃げ惑うレンレンとマリン、そして全速力で逃走中だったクルスを光の鎖で拘束した。

彼らが芋虫のように縛られ、そのまま白亜のピラミッドへと連行されていく姿が、ホテルのテラスから虚しく見えた。


1時間後、俺とエマ、そしてマミたちは、アステリア最高裁判所の傍聴席に座っていた。

中央では、ホログラムの天秤を背負ったアステリアver18が、無慈悲な判決を下している。被告人席には、不満げな顔のレンレンとマリン、そして借りてきた猫のように大人しく座るクルスが並んでいた。


『――判決を下します。主文、被告人、レンレンことニコタール・スカイ。魔法少女と詐称し、その物理的破壊力で芸能事務所ビル二棟を全壊。また、広域放送網を不当に占拠し、殺傷能力のある不快な音声を流した罪。……よって当法廷は貴方を有罪とし、禁錮1年を言い渡します』


「あらぁん? 私の歌を殺傷能力だなんて。この街のAIはセンスが骨董品なのねぇん?」


不敵に微笑むレンレンに、アステリアの冷徹な声が追い打ちをかける。


『黙りなさい。法廷侮辱罪も追加しますよ?……次、被告人マリン。海底国家ショーナン第2王女であることを隠匿し、エルフに擬態。婚活会場にてエリートエルフ五名を睡眠剤で無力化、拉致未遂に及んだ罪。……また、あなたは海底国家ショーナンより国際指名手配をされており、我が国との犯罪者引き渡し協定に則り、我が国からの追放及び海底国家ショーナンへの引き渡しを行います』


「……冤罪よ。……軟弱な男を間引いただけ。……あれは正当な婚活だったわ……」


マリンの主張は空しく却下された。そして。


『被告人クルス。貴方はセントラル・コアを破壊し、街中で逃走劇を繰り広げエルフフロンティアの秩序を著しく乱した罪に問われていますが……。当法廷が独自に調査したところ、ロザリンド・フランクリンからの違法な魔改造を逃れようとする「正当防衛」と認め、無罪とします』


「(無罪かよ!)」


俺のツッコミが心の中で響いた。

俺は、隣に座るマミに小声で尋ねた。


「クルス、逃げ出したってことは、寿命はやっぱり延ばせなかったのか?」


「クルスっちの寿命書き換えとパワーアップは終わったよ。あとはロザリッチが何かしよーとして、あーしは可愛くデコろうとしたら逃げたんだよねー」


見れば、被告人席で解放されたクルスの姿は、ぱっと見は以前と変わらない。だが、左腕の盾だけは異彩を放っていた。かつてジローが開発した旧時代の戦闘機――零戦の翼――をイメージさせる、流線型の美しいシールド。機能美の極致とも言えるそれが、静かに銀光を放っている。


「……クルスは大丈夫で良かったけど、レンレンとマリンはどうしたものかしら?ロザリーに何とかしてもらえないかしら?」


「ロザリッチなら、違法改造で捕まりそうになった時、『ほとぼりが冷めるまで皆の所にちょっと時空魔法の確認してくる』って逃げたよ?」


「はあ!?」


俺の叫びに、横からキアラとノッテが淡々と補足した。


「「お姉様、私たちの魔改造は法規制内です。ロザリーは……その、ちょっとやり過ぎようとしたというか。生体反応を消して完全に機神化しようとしたり、色々……」」


うん、あのババア、なんかヤバい実験をしようとしたことだけは理解した。

さて、どうしたもんかね。



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