ゲボ
「なあ、俺も冒険者になろうと思うんだ。どう思う?……いや違うな。俺は冒険者になる。俺とパーティー組んでくれないか?」
俺は、目の前の人外共に訪ねた。
「勿論私もなるわ。コーセーと私は一蓮托生だもの」
エマも一緒になってくれるみたいだ。良かった。
「私はいいわよん。コーセーきゅんといたら退屈しなそうだもの〜」
「お前たちと冒険。……それもまた運命かもな」
「皆で愛を探す冒険ね」
「「お姉様を、貴様だけに任せられない」」
レンレン、クルス、マリン、キアラとノッテが答える。
「決まりだな」
ドラゴンの王、余命1年のホムンクルス、人魚の逃亡犯、猿(双子の精霊)、そして元神と転生者の蜂。まともな「人間」が一人もいない、世界で最も危険で、最もデタラメなパーティが、この夜、密かに結成された。
「……隠し事はもうなしだ。俺は、この世界を俺の目で見てみたい。お前たちは、目的があるのか?」
「私は暇つぶしよん。退屈は敵だわぁん。」
1万年以上の時を生きたレンレンが空を眺めながら言う。
「俺は、最後に生きた証が欲しい。この体が朽ちるその瞬間まで、お前の盾として、マスターが愛した『ニホン』の魂を持つお前を守ろう」
クルスが、鉄のような拳を胸に当てる。
「私は愛を探しに行くだけ。貴方を刺すか、誰かを刺すか……楽しみね」
マリンの瞳には相変わらず危うい光が宿っているが、その足取りに迷いはない。
「「私たちはお姉様を支える。」」
キアラとノッテが、エマの左右で胸を張る。
「……俺たちは英雄じゃない。ただの『はみ出し者』だ。だが、だからこそやれることがあるはずだ」
俺は焚き火の前に手を差し出した。
「互いの過去には干渉しない。だが、このパーティにいる間は、お前たちの力は俺のものだ。俺の力も、お前たちのものだ。……文句はないな?」
次々と手が重なる。
レンレンの熱を帯びた手、クルスの冷たく硬い手、マリンの柔らかな手、そして精霊たちの光り輝く手。最後にエマが、一番上に添えた。
「史上最悪にややこしいパーティの結成ね。せいぜい、私を頼ませてよ? コーセー」
「ああ、約束する」
焚き火の残火に照らされた7人の影が、一つの巨大な影となって地面に伸びた。
翌朝。広場には旅装を整えた俺たちが並んでいた。二日酔いで真っ青な顔のヤスオとユータが俺の前に立つ。
「ヤスオ。俺たちは、冒険者として旅に出ることにした」
俺の言葉に、ヤスオは「やっぱりか」と項垂れつつも、力強く俺の肩を叩いた。
「わかったよ。お前みたいなヤバい奴を、こんな狭い所に閉じ込めとくのは世界の損失だ。……たまには戻ってきて、また蜂蜜酒で乾杯しようぜ」
「ああ、約束だ。トールとマミもしっかりな」
「はい! 俺も、もっと強くなって、いつか皆さんに追いつきます!」
トールの真っ直ぐな瞳に、少しだけ胸が熱くなる。俺たちが歩き出そうとした、その時。
「待って! あーしを置いていくなんて、無いわ〜」
背負い袋をパンパンに膨らませたマミが、トールの制止を振り切ってこっちにきた。
「マミ!? お前、何言ってるんだよ!」
「お兄ちゃん、黙ってて。あーし、皆と一緒に行くって決めたの」
マミは俺の前に立ち、腰に手を当てて仁王立ちした。
この真っ黒で煮詰まったような人外パーティに加わろうというのか。
「コーセーっち、私を連れていかないと、蜂蜜酒の作り方、誰にも教えないんだからね! 」
「……それは困るな」
俺はエマと顔を見合わせ、苦笑した。
「いいんじゃない? 毒消しにはちょうどいいわ。……それに、この子がいれば、あなたも少しは『人間』として振る舞えるでしょ?」
エマの許可も出た。
「わかったよ、マミ。お前が俺たちの『胃袋』担当だ。ただし、俺たちの本当の姿を見ても泣くんじゃないぞ?」
「泣かないわよ! アーシ変わったの」
うん、キャラがいつの時代かのギャルになってる。人って一晩で変わるものなんだな。
「まあ、良いいか。じゃあ最初は俺とエマ、マミの冒険者登録からだな」
「私もギルドに戻りたいので、街までご一緒させて下さい、ヒック。登録も私がすれば、早いですし、ヴッ」
青い顔をした二日酔いのユータが言う。それに同意し、
「よし、行こう!」
「ゔぅおゔぁゔぉえー」
俺達の門出はユータのゲボからスタートするのだった。




