告白
「……よし、野郎ども! 今日は最高の勝利だ。乾杯!!」
人化した俺が、乾杯の音頭を取ると、いくつもの木製ジョッキが激しくぶつかり合った。
「うおおおおお! 待ってましたぁぁぁ! この匂い、この輝き! 蜂蜜酒解禁だぁぁぁ!!」
ヤスオが獣のような咆哮を上げ、琥珀色の液体を喉に流し込む。その横で、いつもは冷静なユータも顔を真っ赤にして「これは……美味すぎる……」と漏らしている。
宴は一気に加熱した。酔ったユータが笑上戸で裸で踊り(ドワーフの本能がでたと思われ)、負けじとヤスオも脱ぎだして、それを止める弟子のトール。キャンプファイヤーを囲い、笑い声と怒号が夜空に吸い込まれていった。
深夜。狂乱の宴が嘘のように、広場は静まり返っていた。周囲には蜂蜜酒の甘い香りと、泥酔して使い物にならなくなったヤスオやユータたちの高いいびきが重なり合っている。
俺は、一人火の粉を見つめていた。その隣に、音もなくエマが腰を下ろす。
「……人化したら、あなた髪の毛ピンクなのね、似合ってるわよ」
「エマも、さらに美人になった」
よし、惚れたな、これは。俺は鈍感系主人公じゃない。ここから俺たちのムフフな異世界生活が始まるんだ。
「コーセー、一人盛り上がっているとこ悪いんだけどあなた、念話しながら妄想してるわよ?鈍感じゃなくて勘違い系主人公ね?」
冷めた目でエマが俺を見ている。
「……遠くに逃げたい。」
「……あら、二人きりで愛の逃避行の相談かしら? ウフッ、情熱的ねぇ」
俺のつぶやきに反応して、暗闇から現れたのは、レンレンだった。
「……起きてたのか、レンレン」
「あら、私たちに何か用事かしら?初代国王様?」
エマの、誰何に、レンレンの動きが止まった。
彼女――いや、15763歳のエンシェントドラゴンは、髭を撫でるような仕草をしながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
「……参ったわねぇ、お嬢さん。やっぱりバレてたのねぇん?それとも 私の『空中散歩チャンネル』の視聴者かしらん
?」
「登録者82人のチャンネルなんて見ないわよ」
レンレンが姿を現したのを合図に、他の三人も次々と影から踏み出してきた。
「……俺のことも、バレてるか?」
巨大な体を揺らして現れたのはクルスだ。
「クルス。お前の寿命……あと1年だったな」
俺の言葉に、クルスは重々しく頷いた。
「そうだ。俺を作っマスターはもういない。だからどうする事も出来ない。生命活動が停止するまで残り295日だ。」
「あら、あなた死期が近いのね。貴方と結婚して未亡人になるのもありかしら?」
マリンが、舌舐めずりをしクルスを見る。その瞳には、「メンヘラアサシン」特有の病んだ光を宿して。
「マリン、一次的にとはいえ、パーティーを組んだ仲間のことをからかうな。海底国家に引き渡すぞ?」
「…私はエルフよ?ってヤッパリばれてるわよね」
俺がマリンを嗜めていると、「ドサリ」、急にさるゆきが倒れた。
「「じゃあ私たちのこともバレているのね英雄さん?」」
さるゆきの身体から出てきた2人が俺に問いかけてくる。
「ああ、知ってるよ。光と闇の大精霊のお二人さん?なんてお呼びすれば?」
俺も問いかけると、二人は困った顔をして答える。
「「私たち精霊に名前の概念はない。好きに呼んで」」
「じゃあ、光の精霊さんはキアラ、闇の精霊さんはノッテね」
「「え?……」」
エマが速攻で2人に名前をつけると、2人の精霊…キアラとノッテの身体が一瞬眩く光り、2人は口を揃えエマに尋ねる。
「「エマ…様は神なのですか?」」
「エヘ、バレちゃった。元神族よ。今は地獄のクイーンビーね」
「エマ。何が起きたんだ?」
「名前を持たない精霊に、神族が名前をつけるとね、眷属になっちゃうの。元神族の私でも同じみたいね」
「「エマ様、いえお姉様とお呼びしても?」」
「ええ、良いわよ!」
やったーとはしゃぐキアラとノッテを他所に俺たちの反応はそれぞれだ。
「やっぱりねぇん」
「神だったのか」
「恋愛の神様かしら?」
レンレン以外は気付いていなかったみたいだ。俺のことも気付いて無いかも知れない。
「なあ、皆実は俺も……」
俺が意を決して告白しようとすると、
「転生者よねぇん」
「マスターと同じニホンからだな。」
「バレバレよ?」
「「お姉様の眷属は私たちだけで良い」」
「何で分かるんだよー!?ってキアラとノッテは殺気を、向けてくるなー」
5人に無慈悲に伝えられ、真夜中に俺の叫びが木霊する。
「うるせー!!」
イビキをかきながらヤスオに酒瓶を投げられた。ぐぬぬ。




