マジックバッグ
随時、誤字脱字、物語の矛盾等修正していきます。
成長の糧にしますので是非酷評宜しくお願いします。
「それにしてもヤスオには驚かされたわね」
「そうだなあ、まさかこの周辺の土地を全部買いとってくるなんてなぁ」
作戦会議中に告げられた、この辺りは「俺のものだ」宣言。何処ぞのガキ大将が馬鹿なことを言ってると思ったが、契約書をみて驚いた。魔石のお陰で買い取れたらしいから、実質、魔力を注いだ俺とエマのものだな、うん。
「それに、クエストを成功させて、他にも奴隷として囚われている人達を連れてくるわけでしょ?この広さはちょうど良かったじゃない」
「バッグ俺も欲しいなあ。使いみち無いけど」
ヤスオにさらに驚かされたのが、ファンタジー御用達のマジックバッグだ。買い出した物(3割お酒だったが)が出てくる出てくる。そのお陰でギルトが管理していた簡易宿泊施設を5人(3人と2匹?)が住みやすい拠点へと資材を使い改築出来たのは有難かった。今街に出ているヤスオには新たに兄妹の服、足りない布団などを頼んでいる。そんな話をしている俺とエマは枯れたダンジョン内にいる。ヤスオとの約束を果たすために。
「……なぁエマ。これ、本当に酒になるのか? まだ蜂蜜にすらなって無いんだが」
俺は、ヤスオが街から調達してきた大きな木樽を前に、途方に暮れていた。樽の中には、俺が死ぬ気で集めてきた花の蜜が入っている。只々汚い花の蜜が。なんか臭いし。
「大丈夫よ、人類最古の酒なのよ? 適当に混ぜて置いとけば勝手に発酵して、極上の黄金色に変わる……はずよ!」
「その『はず』が怖いんだよ! お前、地獄のクイーンビーだろ? 蜂の王なら、体内から魔法の酵母とか、隠し味の聖水とか出せないのかよ!」
「失礼ね。私はクイーン、管理職なの! 現場の生産ラインのことは、工場の働き蜂が責任持ちなさいよ!だいたい、蜂蜜酒の言い出しっぺは貴方なのよ?」
「そもそも俺って、種族は地獄のキラービーだろ?蜜蜂ですら無いんだが」
「………」
蜂蜜酒を造るにあたって俺たちは蜂蜜すら造れないという壁にぶつかっていた。
「しょうが無いわね。また徳ポイントの前借りしとく?」
「返すのが俺だからって軽いノリで言いやがって」
「私は借りなくて良いわよ?ヤスオと約束したのコーセーだもの。ヤスオブチ切れるでしょうね。剣聖が切れたらどうなるのかしら?」
「…よし、何のスキルを取れば良いんだ?」
気持ちを切り替えた俺はエマに聞く。この前20万近く返したばかりなんだがなー。今なら分かるぜ多重債務者の気持ちが。エマがステータスをいじりだした。そして、
《スキル【眷属召喚】を解放しました》
《警告:徳ポイントが『マイナス50000』加算されます。返済期限にご注意下さい。》
---獣人兄妹視点--
俺は拠点の裏で、師匠から渡された重い木刀を必死に振り下ろしていた。
「……九百、九十八! 九百、九十九、千」
最後を振り下ろし、俺は後ろに倒れ込んだ。全身汗だくで、手のひらはマメが潰れて血が滲んでいる。だが奴隷商の檻の中でを思えば苦じゃない。
「おにいちゃん、お水……。あと、サンドイッチも食べて」
マミが心配そうに駆け寄り、冷たい水が入った竹筒と、ヤスオに教わり作ったサンドイッチも渡す。俺は水を一気に飲み干すと、マミの頭を優しく撫でた。
「ありがとな、マミ。……俺、もっと強くならなきゃいけないんだ。じゃないと、あのピンクの蜂……コーセーさんが首輪を外してくれても、また誰かに奪われちまう。今度は俺が、父ちゃんたちを……みんなを守るんだ」
マミは俺の震える手を見つめ、ギュッと握り返した。
「私も頑張るよ。おじちゃんに美味しい料理の作り方、いっぱい教わってるの。私が作ったスープを飲んだら、おにいちゃんの傷がパッと治っちゃうような……そんな『美味しい魔法』を使えるようになるんだ」
マミは俺の横で、一生懸命にジャガイモの皮を剥く練習を始めた。俺はそんな妹の姿を見て、再び木刀を握り直した。
---ヤスオ視点---
俺は冒険者ギルドイーサ支部、ユータの執務室にやって来た。
「ヤスオ、今日は何しに来た?残りの金は振り込んだぞ?」
ユータは紅茶を飲みながらたずねてきた。
「今日はお願いがあってな。この街の奴隷商を全部潰すのを手伝ってくれ」
この国で奴隷になるのは犯罪者だけだ。それも全て裁判後に鉱山に送られるから奴隷商は存在するはずが無いのだ。存在するならそれは違法だ。
「何の話だ?」
ユータの表情が険しくなる。奴隷商の横行は田舎から出てきた新人冒険者が拐われたりもありギルドとしても問題視しているが、街の有力者の中にも奴らと繋がっている者がおり、手が出せない状況だった。
「先日、奴隷の獣人兄妹を俺の森で保護した。ほらっ!」
俺はトールたちにはめられていた首輪を机に投げた。
「俺は今でこそ呑んだくれているが、俺が剣聖になるまでに努力した理由を知らないわけじゃないだろ?」
「ギルドに何を求める?」
「先ずは情報が必要だ。奴隷商潰しは俺と……俺の新しい仲間で片付ける。ギルドに頼みたいのは、その後の後片付けと、救出した連中の身分保証だ。」
「!?ヤスオお前、またパーティーを組んだのか!…いいだろう。だが、ギルドへの見返りは? 報酬もなしに協力しろと言わないだろ?」
俺はニヤリと、最高に不敵な笑みを浮かべた。
「報酬なら、とてつもねぇのが入るぜ。俺の仲間にスキル獲得クエストが発生した。この意味が分かるだろ?」
この世界でスキルを獲得するのは簡単では無い。ダンジョンから極稀にでるスキルスクロールを使うかスキル獲得クエストに参加するかだ。殆どの奴はスキルなんて持っていない。このギルドも俺含め5人くらいだ。
「……それは本当か?」
「嘘は言わねーよ。クエスト名は《闇の鎖を断つ者》この地域の奴隷商組織を壊滅させろだ。」
……ギルドにスキル持ちが増えれば、今後の利益は計り知れない。考え込むユータに俺は畳み掛ける。
「さっきは奴隷潰しは俺たちがするって言ったが、ユータの推薦なら5人までなら討伐に参加していいぜ?契約書は交わしてもらうがな。悪い話しじゃないだろ?」
スキル獲得クエストは声が聞こえた者が仲間と認めないとスキルは獲得出来ない。勝手に討伐しても何も無いのだ。そして、貢献度により獲得出来るスキルには差が出る。今回のクエストなら情報収集をしたものは、索敵、隠密等のスキルを得られるだろう。では討伐に参加した者は?悪くてB級、良ければS級冒険者になれる実力を得られるだろう。
「分かった、協力させてくれ。その条件ならこちらが報酬を払う案件だな」
「よし!じゃあまた来るから人選しといてくれ!」
「ああ、次は紅茶じゃなくて、うまい酒を用意して待っとくよ」
俺はギルドを出て拠点へと帰りを急いだ。




