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親より先に死んだ俺、異世界で徳を積んで無双する  作者: 田舎浪漫


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商談成立

---ヤスオ視点---



「嬢ちゃん。討伐報告だ」


俺は懐から、虹色の光を放つ魔石を取り出し、冒険者ギルドの受付カウンターに置いた。街へ戻る道すがら、酒代のツケがまだ20枚近く残っていたことを思い出し、気分は少し重かったが、これで全部チャラになるはずだ。


「ええと、討伐対象は……『ピンク・デビル』ですね。報酬は銀貨3枚……」


受付嬢がギルドカードを受け取り、慣れた手つきで依頼書と照合しようとし、カウンターに置かれた魔石を2度見して、声にならない声を出した。


「なっ……!?」


一瞬の静寂の後、我に戻った受付嬢は奥にいた、鑑定士を連れてきた。


「に、虹色!? 地獄のキラー・ビー!? しかもこの魔力量……国宝級」


ギルド内が一気にざわめく。俺はニヤリと笑い、シラフだが酔っ払いのふりをして肩をすくめた。


「ああ、ピンクデビルな、キラービーの上位種、地獄のキラービーだった。しかも変異種だ。新人は逃げてきて正解だったな」


その時、ギルドの奥にある支部長室の扉が開き、一人の男が姿を現した。背が高く、ドワーフにあるまじきスラッとした体型。特徴的な髭はなく、整った顔立ちをしたイケメンだ。冒険者ギルドイーサ支部支部長のユータ。俺とは旧知の仲だ。


「ヤスオ、ちょっと来い」


ユータは俺を一瞥すると、それだけ言って支部長室へと戻っていった。俺は肩をすくめ、受付嬢に「ツケ、頼むな」とだけ告げて、後を追った。

支部長室に入ると、ユータは紅茶を淹れていた。ドワーフなのに紅茶かよ、と少しゲンナリする。


「まあ座れ、ヤスオ」


「おう」


ユータは俺に紅茶を差し出し、本題に入った。


「その魔石は買い取る。国宝級だ、金貨千枚の価値がある」


「千枚!? 太っ腹じゃねえか」


「ただし、だ」


ユータは冷たい目で俺を見た。


「お前の酒場のツケ、金貨20枚分は差し引かせてもらう。そして、S級冒険者への復帰手続きも同時に行う。文句はないな」


「ないない。金貨980枚か、上等だ」


俺が頷くと、ユータは続けてとんでもない提案をしてきた。


「それと、買い取り額はすぐに用意できない。国に掛け合う必要がある。すぐ用意できるのは金貨200枚くらいだ」


「200枚かぁ、まあそれはいいか。ところで俺からも提案があるんだが」


「なんだ?言ってみろ」


「俺は金は欲しいが、目立ちたくはない。剣聖の肩書にも未練は無いしな。で、だ。あの魔石は金にはなるが厄介事も増えるだろ?」


「そうだな、間違いなく、厄介事に巻き込まれるな」


「だろ、それは面倒だからの提案なんだが、俺が攻略した枯れたダンジョン含む周辺の森、湖まで金貨300枚で売って欲しいんだ。あの辺はギルド所有だろ?」


「いいのか?あそこは高く見積もっても金貨100枚にもならない土地だぞ?」


「ああ構わない。あそこでほとぼりが冷めるまでゆっくりしたいのもあるが、S級に復帰しても当分は活動する気がないから、その詫び料と思ってくれ」


「……良いだろう、商談成立だ」


その後、契約書にサインし、金貨300枚を受け取る。これで借金も返済され、S級に復帰、そしてコウセイたちとの拠点は確保された。


「さて、俺は買い出しに行って、隠居生活を始めるか。残りの金貨はギルドの口座に振り込んでくれ」


ユータに背を向け、ギルドを出た俺は、市場で食料や蜂蜜酒の材料を買い漁った。買い出しが終わり、拠点へと戻る途中、森の入り口付近で慌てて逃げ惑う二人の獣人を見つけた。


「ヒィッ! 兄ちゃん、街の方には行けないよ!」


「くそっ、どうすれば良いんだ!」


どうやら逃亡奴隷らしい。俺は彼らに近づき事情を聞くことに。


「ピンクの蜂から逃げてきたんだ」


「何やってんだあいつは?」


事態を把握した俺は彼らも拠点に連れて行くことになりそうだと、柄にもなく思うのだった。

(しかし、あの野郎、俺の斬撃をよくもまあ紙一重でかわしやがった)

ヤスオはニヤリと笑った。

(蜂蜜酒も目的だが、剣士として、もう一度あいつと手合わせしたい。次はシラフでな。コーセー、次は逃がさねぇ)

俺の心の中は、金貨千枚の報酬よりも、コーセーとの再戦への期待で満ち溢れていた。

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