トリプルS
ヤスオの案内で、俺たちは森の開けた場所に移動し、切り株を椅子の変わりに腰をおろした。
「まずは改めて自己紹介だ。俺はヤスオ。B級冒険者で30歳独身だ。もう分かってると思うが酒と聞いて魔物のお前らと目線を合わせて話せるぐらいには大の酒好きだ。大酒飲みのドワーフとの呑み勝負にも勝てるぜ。じゃあ、次はS級の実力がある俺の攻撃を簡単にかわせるキラービーお前の番だ」
『うん?ちょっと待ってくれ。S級の実力?何でB級何だ?』
「あー俺、降級したんだよ。ギルドの酒場に酒のツケため過ぎてな。実力はあるぜ?昔は剣聖って呼ばれてたしな!じゃなきゃ危険度Sのキラービーに単騎で斬りかからんわな」
『えっ、俺ってS級なの?』
「ああ、人間にとってキラービーは厄介でな、戦闘力は危険度Bくらいなんだが問題は毒だ。刺された奴が毒針で死んで終わりじゃない。そいつを媒体に毒は感染していき、街を余裕で滅ぼせるからな。だから普通のキラービーは危険度Aだな。その変異種は1段あがるわな」
『なるほど。じゃあ俺の番か。名前はコーセー。種族は地獄のキラービー。だが元人間だ。そしてヤスオ、あんたに俺たちが求めるのはこの世界の情報だ。』
「地獄の…だからか。元々、危険度Sの魔物の変異種、SSくらいあるか。俺の攻撃を簡単に避けるわけだ。って元人間って?」
『まあ、色々あってな。追々話すよ』
『もう待ちくたびれたわ、私はエマ。地獄のクイーンビーね。コウセイがSSなら私はトリプルSかしら。まあ、コーセーと同じで訳ありよ』
「はあー、ミードを呑みたい軽い気持ちで話をしたんだが、これはこれ以上話しを進める前に契約を交わしたほうが良さそうだ」
ため息をつきながら、ヤスオはごそごそと荷物袋から、羊皮紙でできた古びた巻物を取り出した。
ヤスオは慣れた手つきで巻物を広げ、持っていたペンでサラサラと文字を書き込んでいく。その文字は契約の魔術が込められているらしく、書くたびに淡い光を放っていた。
「お? 契約書!やっぱ魔法的なやつか?」
「魔力を感じるからそうだと思うわよ。契約破りは神罰くだるはずだから気をつけてね」
「神罰?」
「たぶん人間の最悪は死、良くて呪いね。身体の何処かを封印されるわ」
「人間は?俺達は…?」
「勿論、徳ポイントペナルティ100万くらいかな」
やっぱりかー!だと思ったよ!
エマと話していたらヤスオが契約書を書き終わったみたいだ。
「契約内容はシンプルにした。
一、互いの秘密保持
二、互いへの危害禁止
三、情報共有
四、蜂蜜酒の共有
こんなもんでいいか?」
『細かく書かないの?これじゃどの情報に対してどれくらいの蜂蜜酒を渡すとかわからないわよ?』
「細かいことはいいんだよ嬢ちゃん。あんまり細かく書くと契約書に縛られてお互い融通が効かなくなるぞ」
ヤスオはそう言うと、俺とエマに契約書を差し出した。俺は前足で、エマは前足と触角でサイン(というかミミズののたくった跡)を書き込む。光が弾けたので、契約は正式に成立したのだろう。これで俺たちは、ヤスオに襲われる心配もなく、この世界の情報が手に入る様になったわけだ。
「よし、契約完了だ。改めて宜しくな」
『『よろしく』』
「それで、これからのことなんだが、お前ら死んでくれないか?」
『『……は?』』




