何言ってんだ。
随時、誤字脱字、物語の矛盾等修正していきます。
成長の糧にしますので是非酷評宜しくお願いします。
「おーい、ピンクデビルちゃんやーい! 酒代稼ぎに来たぜー!」
森の中に響く、間延びした酔っ払いの声。
リンゴの残骸を片付けていた俺たち――主に俺が片付けていたんだが――は、その声にピタリと動きを止めた。
「ピンクデビル……? まさか俺のことなのか?」
「あれよ、コーセー! 新米っぽい冒険者を脅かしたから噂になって、討伐依頼がでたのよ!」
エマが空中でステータス画面を見ながら、能天気な声を上げた。
俺が警戒し身構えた瞬間、草むらからふらりと現れたのは、無精髭を生やし、大剣を背負った剣士の男だった。
「おっ、いたいた。噂通りのピンクだなオイ」
剣士の男は俺を見るなり、ニヤリと笑った。その笑みは友好的……ではなかった。
次の瞬間、背中の大剣を引き抜き、千鳥足からは想像もつかない速度で切りかかってきたのだ。
「いきなりかよ!?」
俺は必死に羽を震わせて上昇し、ギリギリで斬撃を回避した。地面に大剣が食い込み、土煙が上がる。
「あー、飛べるのか。ま、そりゃあそうか!」
そう俺は飛べるようになったのだ。練習を夜も寝ずに頑張ったとかではなく…そう、また、徳ポイントを前借りして飛翔のスキルを手に入れたのだ。1万ポイント。エマのも合わせて2万ポイント。マイナスが減る気がしない。そう何故かエマのスキル解放ポイントまで俺に加算された。てか、攻撃しつこいな。
「コーセー、頑張れー! ほら、右から来るわよー!」
「実況してんじゃねーよ、エマ! お前もなんかスキル使って助けろよ!」
「私はクイーンよ?守られる立場なのよ、あなたも飛翔スキルのいい練習になるじゃない!」
逃げ回りながら、俺は念話を飛ばす。今度は絶対に誤解されないように、穏やかな声色を意識して。
『待ってくれ! 俺は敵じゃない! 話せばわかる!』
俺の声は、冒険者の脳内に響いたみたいだ。ピタリと足が止まる。
……よし、聞こえたか?
「……なんだ? 普通の声で聞こえたな。威圧感ゼロじゃねーか」
冒険者は首を傾げた。その表情は混乱している。
「おい、お前ら。噂と違うぞ? ただの喋るピンクの虫じゃねーか」
『虫って言うな! あんた、なんで念話が正しく聞こえているの!?』
ちなみに、エマも念話スキルを獲得した。支払いはもちろん俺だ。そのエマが威圧を込めて念話を飛ばすが、冒険者は「なんかデカいハチの嬢ちゃんも喋り出したな」と、これも普通に受け流している。
「俺はヤスオ。B級冒険者だ。ピンクデビルを追ってここに来た。どうやらお前ら、脳内に直接語りかけて精神汚染だか呪いだかしてくるタイプらしいが、俺には効かねぇんだよ。残念だったな」
ヤスオは剣先を俺に向けたまま、ふらりと歩み寄ってきた。
『ちょっと待てヤスオ! 俺は悪魔じゃない! ここには徳を積みに来たんだ!』
「徳ぅ? 何言ってんだお前、魔物が徳なんて積んでどうすんだよ」
ですよねー。俺でもそう思う。何言ってんだ。って。ヤスオの目は完全に俺を「金づる」として見ている。
まずい、このままでは本当に討伐されてしまう。……いや、空飛んで逃げれば大丈夫か。そもそも最初の一撃以外に脅威を感じない。手抜いてるのか?ただ、人間との繋がりが欲しい俺は会話が成り立つであろうこの男、ヤスオの興味を引く言葉は必死に考える……!
「……はち、はち……そうだ!」
俺たちは蜂だ。そしてこのヤスオという冒険者は酒くさい。
『なぁ、ヤスオ! 俺たち、蜂蜜酒を
作れるかもしれないんだが、興味ないか?』
「……蜂蜜酒?」
ヤスオの目が変わった。さっきまではヘラヘラしていたが、今は視線でゴブリンくらいなら殺せそうな目をしている。剣を下ろし、俺に近づいてきたヤスオからは、強烈なアルコール臭がした。
「蜂蜜酒だと!? この世で一番美味い酒じゃねーか! お前、それホントか!?」
『本当だ! 女王蜂もいるし、蜜もいっぱい吸える! 作れる可能性は十分にある!』
ヤスオは剣を鞘に収めると、「よし、話はわかった。酒が先だ、酒が!」と、あっという間に協力的になった。現金なやつだ。
「チョロいわね、人間って!」
エマが安全な場所で笑っている。なんとか命拾いしたが、俺の異世界生活は、どうやら「ピンクの喋る悪魔」兼「蜂蜜酒製造業」として軌道修正されていくようだった。
あぁ異世界転生思ってたんと違う。




