第4部 後編 国際秩序こそが正義なのだ!
国際会議は、成功した。
少なくとも、表向きには。
聖国は堂々とした態度で臨み、
魔王討伐と魔族絶滅の正当性を語り、
世界に平和をもたらしたと主張した。
その演説は、よく練られていた。
感情に訴え、
恐怖を想起させ、
「我々が正しかった」という前提を揺るがせない。
だが――
会議は、彼らのためだけの舞台ではなかった。
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余は、順番が回ってきた時、静かに話し始めた。
教義そのものを否定はしない。
功績も認める。
だが、数字と事実を並べた。
•上納金による各国経済への影響
•強制改宗地域での反乱件数
•亜人迫害による生産力低下
•「異端」認定の恣意性
どれも、聖国が否定しづらい現実だった。
そして最後に、こう言った。
「聖国が正しいかどうかは問題ではない」
「聖国が止められない存在になりつつあることが問題だ」
空気が変わった。
多くの国は、
聖国の正しさではなく、
聖国の次の行動を恐れていた。
余は、それを言語化しただけだ。
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決議は、満場一致ではなかった。
だが、過半は超えた。
対聖国包囲同盟、成立。
その瞬間から、
これは信仰の問題ではなく、
安全保障の問題になった。
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戦争は、長かった。
聖国は強かった。
魔王討伐の勇者を擁する国家としての戦力は伊達ではない。
だが、彼らは
「自分たちが世界から孤立する」
可能性を想定していなかった。
連合軍は各国の強みを組み合わせ、
聖国の聖域を一つずつ切り離し、
補給線を断ち、
信仰という名の統制を崩していった。
余は、旗振り役に徹した。
剣を振るうことはなかった。
魔法も、最小限。
必要だったのは、
「次にどこが崩れるか」を知ることだけだった。
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聖都が陥落した日、
かつて世界を導いた大聖堂は、静かだった。
鐘は鳴らず、
祈りも響かない。
教皇及び指導部は捕らえられ、
一部は抵抗し、
一部は最後まで「神の御意志」を叫んでいた。
余は、それを聞いても何も感じなかった。
信じること自体は、罪ではない。
だが、それを他者に強要した瞬間、
信仰は武器になる。
武器は、奪われる。
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戦後処理は、迅速に行った。
聖国が信じる教えは、邪教と認定された。
理由は単純だ。
•他国への強制介入
•種族差別の正当化
•異端殲滅の教義化
これらは、
新たに定めた国際秩序に反する。
そして余は、最後の決裁を出した。
教義を信奉し続ける者は、邪教徒と見なし、殲滅を許可する。
躊躇は、なかった。
かつて聖国がやったことを、
同じ論理で返しただけだ。
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世界は、静かになった。
少なくとも、表面上は。
信仰は地下に潜り、
名を変え、
いつかまた別の形で芽吹くだろう。
それでも今は、秩序がある。
武力による絶対正義も、
信仰による絶対正義も、
一度は排除された。
余は、新たな皇帝として、
そして連合の代表として、
この結果を受け入れた。
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夜、執務室で一人になった時、
ふと思う。
余は、何かを守ったのか。
それとも、
ただ別の「正しさ」で世界を塗り替えただけなのか。
答えは、出ない。
だが、一つだけ分かっている。
この世界は、
正義を名乗った者から順に、滅びを正当化する。
余も、その列に並んだ。
それだけのことだ。
皇帝の子の保有チート
高い素質
政治適正
統率(組織をまとめる力)
好悪判定(好む好まざる、望む望まざるなどが分かる)




