第3部 後編 魔王軍滅亡!正義は成された!
魔王軍は、想像以上に強かった。
だが、俺たちはそれ以上だった。
聖なる加護を受けた剣は魔族の装甲を容易く貫き、
神聖魔法は瘴気を浄化し、
仲間たちは一切の躊躇なく前に進んだ。
魔王軍の兵士たちは、よく統制されていた。
逃げることなく、最後まで戦った。
――だからこそ、屍は積み上がった。
渓谷へ向かう一本道は、血で濡れ、
魔族の死体が幾重にも折り重なっていた。
屍山血河。
言葉にすれば簡単だが、
そこに至るまでに、俺たちは何千という命を踏み越えた。
それでも、誰も立ち止まらなかった。
これは必要な犠牲だ。
世界を守るための戦いだ。
そう、信じていたからだ。
⸻
魔王は、渓谷の最奥にいた。
玉座も、軍勢も、
威厳すらなかった。
ただ一人、
崖を背に立っていた。
俺は、初めて彼を見た。
――思っていたより、人の形をしていた。
巨大でもなく、異形でもなく、
ただ強い魔力をまとった存在。
彼は俺たちを見て、少しだけ目を細めた。
「……ここまで来たか」
その声音に、憎悪はなかった。
怒りも、焦りもない。
まるで、結果を受け入れているようだった。
⸻
戦いは、激しかった。
魔王は、確かに災厄だった。
一撃一撃が国を滅ぼした力そのもの。
だが、俺たちは数と、加護と、使命を持っていた。
聖騎士が前に出て、
神官が癒し、
魔術師が隙を作る。
そして俺が、剣を振るう。
剣に宿る神の光が、魔王の防御を切り裂いた。
魔王は、最後に俺を見た。
「……それで、救われたか?」
意味が分からなかった。
何が、救いだというのか。
俺は答えなかった。
答える必要はない。
俺は主人公で、
彼は魔王だ。
物語は、そういうものだ。
剣は、確かに彼の心臓を貫いた。
⸻
魔王は、滅んだ。
渓谷に、静寂が訪れた。
仲間たちは歓声を上げ、
涙を流し、
互いの無事を確かめ合った。
俺も、安堵した。
――終わったのだ。
世界を脅かす存在は、消えた。
⸻
だが、俺たちは止まらなかった。
聖国からの命令は明確だった。
危険な魔族は、根絶せよ。
魔王が存在したという事実そのものが、
魔族という種の危険性を示している。
ならば、再発防止は明白だ。
俺は、頷いた。
合理的だ。
正しい判断だ。
⸻
その後の戦いは、戦いとすら呼べなかった。
逃げ惑う者。
武器を持たない者。
子ども。
区別は、しなかった。
区別する理由がない。
「魔族」という括りの中に、
全てが含まれている。
かつて魔王が、
国民を区別しなかったように。
俺たちは、徹底した。
集落を潰し、
地下に逃げた者も追い出し、
最後の一人まで確認した。
世界から、魔族はいなくなった。
⸻
帰還した俺たちは、英雄として迎えられた。
神殿は鐘を鳴らし、
人々は祈り、
教国はこの戦果を「神話」として記録した。
魔王討伐。
魔族絶滅。
どちらも、神の御業だと。
俺は、その中心に立っていた。
⸻
夜、一人になった時、
ふと魔王の言葉を思い出した。
「それで、救われたか?」
救われたのは、誰だ?
滅ぼされた国の人々か。
魔族に生まれ、魔族として生きただけの者たちか。
それとも――
正義を貫いたと信じる、俺自身か。
考えるのは、やめた。
主人公は、迷わない。
迷い始めた瞬間、
物語は歪む。
だから俺は、祈った。
神が、正しかったと証明してくれることを。
⸻
こうして、世界は平和になった。
少なくとも、
そう記録されることになった。
上級神官の子の保有チート
高い素質
神聖適正
神の加護
勇者(個強化の極致)




