第2部 後編 そして魔王降臨!
復讐を決意した俺は、準備に時間をかけなかった。
迷いがなかったからだ。
魔族として生まれ持った力。
転生者として与えられたチート。
これまで意図的に封じ、隠し、使わなかったすべて。
――それを、全部使う。
そう決めただけだった。
覚悟というほど大仰なものではない。
使わなければ守れないと、もう知っている。
⸻
俺は空を飛んだ。
比喩ではない。
魔力で身体を包み、空気抵抗を無視し、国境線という概念を超えた。
警戒網も、防空結界も、反応する前に通り過ぎる。
人族の国は、平和だった。
それが、最初に感じたことだった。
市場は賑わい、子どもが走り回り、兵は気の抜けた顔で持ち場に立っている。
――かつての俺の国と、同じだ。
だから、躊躇はなかった。
⸻
例の貴族がいる王都に降り立った時、混乱は一瞬で広がった。
警備兵が集まり、魔法が飛び、叫び声が上がる。
だが、それらはすべて「遅い」。
俺は国を相手にしに来た。
個人戦のつもりは、最初からない。
大地の魔力脈を掌握し、都市全体を結界で封鎖する。
外への逃走、通信、転移――すべて遮断。
王都は、閉じた。
⸻
例の貴族は、すぐに分かった。
強い力は、同じ匂いを放つ。
彼は驚いていた。
そして、理解した。
「……お前は、魔族側の生き残りか?」
その声音に、後悔はなかった。
あるのは、計算と、警戒と、わずかな苛立ち。
――ああ、やはり同じだ。
彼は、自分が正しかったと思っている。
俺は何も言わなかった。
言葉は、必要ない。
⸻
戦いは、短かった。
彼は確かに強かった。
チートを持ち、努力もしてきたのだろう。
だが彼は、「国を背負って戦う」経験がなかった。
俺は違う。
守るものを失った者は、
守るという発想そのものを捨てられる。
攻撃は躊躇なく、手段は選ばず、
結果だけを最短距離で取りに行く。
彼は、自分の敗北を理解した瞬間、叫んだ。
「お前やりすぎだ! 国民まで殺す必要はないだろうに!」
――その言葉で、すべてが終わった。
俺は、淡々と答えた。
「お前が、そうした」
彼は理解できなかった。
最後まで。
⸻
例の貴族を殺した後、俺は止まらなかった。
目的は復讐だ。
だが、復讐は「個人」に対して完結するものではない。
彼が国を滅ぼしたように、
俺も、彼の属した世界を消す。
それが、対等だ。
王都は壊滅し、地方都市も順に消えた。
軍は意味をなさず、抵抗は断片的だった。
国民も、例外ではない。
俺は区別しなかった。
兵士も、民も、子どもも。
皆、「国」という構造の一部だった。
それは、彼が俺の妻と子を区別しなかったのと、同じだ。
⸻
数日後、人族の国は地図から消えた。
周辺国は、何もできなかった。
介入する理由も、勇気もなかった。
彼らは、俺をこう呼んだ。
――魔王。
魔族の王ではない。
魔族ですらない。
ただ、「災厄」として。
⸻
俺はその呼び名を否定しなかった。
正義だとも、復讐だとも、言わない。
ただ、事実として、
留守中に、
国ごと、
家族ごと、
人生を奪われた者が、
同じ論理を返しただけだ。
それだけの話だ。
⸻
こうして世界は、一つ学んだ。
力を持つ者が、
合理性を理由に、
全てを消しに来る可能性があるということを。
そして、俺は知った。
この世界では、
誰かが「正しい」と信じた瞬間、
別の誰かにとっての終わりが始まる。
俺は、その役を引き受けただけだ。
魔族の男の保有チート
高い素質
魔の適正
魔族のテーブル(全能力高水準)




