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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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15 魔境の刺客(7)

「ドルチェン、ドルチェン、私こそがあなたの妃に相応しい、穢らわしい獣にすぎない凡人の女など捨てて、早く私のところへ来て・・・」

 凄まじい腐敗臭が広がり、ドルーアの嗄れた声が聞こえた。

 一千年余前、ドルーアは若く器量の良い玄武だった。彼女は、ドルチェンに憧れ、彼を愛した。その頃のドルチェンは、若く快活で、今のダルディンのような青年だった。リュエと運命の出会いをする前の彼は、若い玄武の女子と、気軽に交際する楽天的な若い玄武の一人にすぎなかったのだ。けれど、大牙の国で銀牙を滅ぼし、愛する妻を死なせたことで、ドルチェンは変わってしまった。亡き妻を思い、彼女を甦らせることに執着し、彼女以外は誰も愛さない玄武へ変わってしまった。冷え切った心は今も変わらず、その心が熱くなるのは、明妃を愛する時だけだった。ドルーアが、死してなお、魔境に落ちてまでも執着し、愛を求めて近づこうとも、ドルチェンはその様をただ冷淡に眺めるばかり、心は冷え切ったままで、情が湧き上がることは、決してなかった。

 ドルーアは、溶けて崩れ落ちる体で這いずりながら、ドルチェンへ嘴型の口が触れそうになるまで接近した。死してなお、ドルーアの、ドルチェンへの執着は残っていた。それを見るや、リーユエンは、ダルディンを振り返った。ダルディンは間髪入れず、法力を全力でリーユエン目がけて撃ち放った。円陣形の魔力場を一瞬で形成し、それへ法力を流し込み、リーユエンはドルチェンとドルーアへ魔力場を展開した。眩い白光が広がり、ドルチェンと魔境に堕ちたドルーアの姿が消えた。

 ドルチェンは、闇の中、洞穴の前に立った。玄武岩の柱状節理に囲まれた洞窟の暗黒の淵は、底知れない深さだった。ドルチェンは己の気配を消し、姿を隠形し、洞窟の中に残る自分自身の気配を凝集させ、自分の人形を作り出した。洞穴の入り口あたりに移されたドルーアは、その人形をドルチェンだと思いこんだ。

「待って、ドルチェン、私をおいていかないで」

 ドルーアは、ズルズルと体をひきずり、愛しい相手だと思い込んだ人形を目指し、洞穴の中へ入り込んだ。それを確認したドルチェンは、真言を唱え法力を解放し、洞穴の入り口を土砂と巨大な岩で完全に塞いだ。そして、高熱を発生させ、その岩も土砂も溶岩のように溶かし、一分の隙間のないよう固めてしまった。


 一方、天蓋と畳地二点連結法と、力を大量に消費したリーユエンは、その場に手と膝をつきうずくまった。ダルディンは、彼女を助けようと近寄りかけたが、上空に凝集させていたはずの毒霧が支えを失ったかのように、一気に降下し始めた。

「何をしている、陣形を保たぬかっ」

 巽陰大公が絶叫した。巽、坤、坎、離、艮の大公が全力を出してやっと保てるはずの力場なのに、坎陽大公と離陰大公は、明妃を助けるために法力を使うのを馬鹿らしく思い、気を散らしてしまった。その結果、力場は崩れたのだ。法力の支えを失った毒霧は、下降気流となり一気に降下してきた。

 高祖がそれに気がつき、蒼海剣を抜き放ち「鏡剣!」と叫び、剣を毒霧へ目がけて飛ばした。剣は矢のように飛びながら、次々に増え、無数の剣が毒霧の周りを激しく旋回し、稲妻が発生した。鏡剣の作り出す強大な渦の中に毒霧は閉じ込められたが、封じ込めが間に合わず、その一部は地上へ降下し続けた。

「危ないっ」

 ダルディンは叫び、リーユエンの上へ被さろうと駆け寄った。

 けれど、リーユエンは、魔力を飛ばしダルディンを突き飛ばした。法力を撃ち出したばかりのダルディンは、不意うちに対応できず、後方へ吹き飛ばされた。そこへ、リーユエンを目がけ、赤黒い毒霧が新たな天蓋となって広がった。

「リーユエン、逃げろっ」

 ダルディンが絶叫した。

 けれど、力を使いすぎ、疲労の極にあるリーユエンは、もう一歩も動けなかった。ただ外套を腕で広げ、体を覆うことしかできなかった。赤黒い霧がリーユエンを覆い尽くした。

「・・・・・・」

 呆然と立ちすくむダルディンの横へ巽陰大公がやって来て、法力で毒霧を払いのけた。

「おや・・・これは・・・」

 黒い外套の四隅は腐食しボロボロになっていた。が、真ん中に白い毛皮の大きな獣が覆い被さり、その毛皮が半ば抜け落ち、青黒く腐食した皮膚がそこかしこに現れていた。

 週末にまた掲載します。読んでくださってありがとうございます。では、再見!

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